津島天王祭!その一
「これが花火とやらか?」
「鉄砲と同じです。火薬で花火玉を空に打ち出す筒ですね」
旧暦六月十四日になると、いよいよ津島神社の津島天王祭が行われる日となった。
心配だった天気もよく、風向きなどを考慮して少し離れた場所を打ち上げ場所にしている。
責任者は津島を任せているアンドロイドのリンリンで、擬装ロボットと津島にて人足を雇い花火の打ち出げ準備をさせていた。
信長が花火の打ち上げ現場を見たいと言い出したので、オレ達は一足先に津島に来て現場を見ているが、流石に現場から花火を想像するのは無理であろう。
「津島神社の宮司殿も花火とやらを楽しみにしておる。それに屋台とやらも出るようで、今年は賑やかになりますな」
今日は家の一家と信長の小姓ばかりか平手政秀も花火を見たいと同行していて、今回の花火や祭りの屋台も平手政秀が根回ししてくれたおかげで、短期間ながら万全の協力体制になってる。
花火は予定通り信秀による奉納花火としていて、史実になぞらえて厄除けの意味がある物だとしていた。
「平手様のおかげですよ」
「なあに。津島ばかりか熱田の商人も乗り気でしてな。ただ来年の尚武祭には、熱田神宮にも何かしてやらねば少し不味いのですがな」
「そうですね。何か考えねばなりませんね」
実質動いてるのがリンリンなのは津島や熱田ではすでに知られていて、花火とは何だと少し話題になってるみたい。
ただ熱田にも熱田神宮があるので、そちらの祭りにも次は何かしなきゃいけなくなったけど。
織田家としては両者に気を使う必要があるんだろうね。
「なるほど。要は物を売るのだな」
「ええ。まあ。いろんな物を食べて祭りを見物するのですよ」
あと津島神社の近隣とか津島の町には、津島や熱田の商人に頼んだ屋台が出てた。
海が近いからだろう焼き魚に、肉を焼いてる屋台もある。
握り飯や濁酒なんかのお酒に雑炊まであるよ。
「あれはお前のところだな。見てすぐ分かったわ」
ああ家の屋台は周りに人だかりが出来ていて、すぐに見付けた。
メニューは那古屋のラーメン屋の店主に頼んだ、お碗サイズのラーメンと一個ずつ売る餃子に、蜂蜜酒と蚊取り線香と線香花火も売ってる。
人手が足りないからラーメン屋の店主と、津島の商人から料理人や下働きの人を借りて屋台をしてるんだ。
リンリンは花火で忙しく、船を任せてるセレスはちょうど信行と北に向かったし、新しいアンドロイドを連れてくると騒ぎになるからさ。
「ずいぶん安いな」
「儲けどころか、売れば売るほど損しますから」
「大丈夫なのか?」
「津島のみなさんへの感謝の証ですよ」
値段はモロ赤字で普通の商人ならしない程だけど、新参者だし津島のみなさんへの感謝と、ちょっとした商品の売り込みも兼ねると別に悪くない。
どのみち宇宙で作ってるから、コストなんてあってないようなものだけど。
「もしかして一度買わせると、次から客が増えるのではないのか?」
「……よく気付きましたね。他の人は商人ですら、気付いてない人いっぱい居るのに」
あれ? 信長に半分宣伝目的なことあっさり見抜かれた。
商売の概念が違うこの時代の人間に、まさかこうもあっさり気付かれるなんて……。
平手政秀やエル達も驚きを隠せないみたい。
「少し考えれば分かることだ」
「それが普通は分からないのですよ。若様商人になった方が向いてるかも」
「たわけ。商人ではお前には勝てん」
織田信長という人を甘く見てはいけない。
この人はすでにオレ達のやることを見て、論理的に考え答えを見付けることを覚えてる。
正直怖くなるほどだ。
明智光秀が何故信長に反旗を翻したのか、少し分かった気がした。
信長はこの時代の人の先を行き過ぎてるよ。
「……戦乱の世でないならば、商人としてお前と競うても面白いだろうがな」
「そうかもしれませんね」
完全に過大評価されてるね。
未来知識と宇宙要塞とアンドロイドのチートが無ければ、オレはとても信長とは競えませんよ。
本当の偉人は何をやらせても、偉人になっちゃうのかもしれない。
ただ商人となった信長を、少しだけ見てみたいと思ってしまうのは、オレのワガママなんだろうね。




