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「あたしは、あの人に認められたくて
ものすごく頑張った。でも、地位とか、財産って
やっぱり魅力あるんだよね。
・・・・・・仕事が出来れば認めてもらえる・・・
そう思ってたけど、認められたのは
仕事の出来ない家柄のある子だった・・・・」
涙が止まらない。
こんなに泣いたのは久々。
タオルを目にあてたまま
離すことが出来ないくらいあふれてくる。
「そっか・・・・。」
雄輔さんはそれ以上何も言わずに
ただ、胸を貸してくれている。
「仕事の力ばかり磨いてないで
エステにでも通うべきだったのかな・・・・」
キラキラの奈々美さんの化粧やネイルを思い出す。
「今のままで、十分カッコいいし、可愛いよ。」
髪を優しくなでながら
予想外の甘い言葉と優しい声に
思わず涙が引っ込んだ。
「え?」
タオルで半分顔を隠したまま
ちらっと雄輔さんの顔を見る。
「上辺だけ飾るような女に引っかかるヤツは
ろくなヤツじゃねーよ。
ま、いいオンナになって俺の元に来るために
あのくそ上司に仕込んでもらったわけだしな。
ちょっとは感謝してもいいかもな。うんうん。」
遠くを見るような眼をしながら
雄輔さんは一人で何か納得してる。
前半はいいとして、後半の理解が出来ないんですけど。
「何それ…意味分かんないんですけど。」
つぶやいた途端、雄輔さんと目があった。
切なくなるくらい優しい目だった。




