②
あたしは、本屋『さくら堂』で
アルバイト店員をしている。
この本屋には、店長と、あたし以外に店員が2名。
「あんたの仕事は、届いた荷物を店に出して
お客が触って崩した本を美しく整えること。
そのくらい出来んだろ?」
初めてバイトに来た日、
雄輔さんがそう言って仕事を教えてくれた。
「分かりました。」
あたしは、その日から
毎日それだけをひたすら繰り返した。
逆に言えば、それだけしかしなかった。
この店の店長は、少し長めの髪をひっつめて
乱れることのない髪型のおばあちゃん。
あたしはひそかに
『ポリー叔母さん』
とあだ名をつけている。
昔読んだ、ポリアンナ物語に出てくる
厳格なおばさんみたいだったから。
大抵は事務所にいて、何かパソコンで仕事をやっている。
レジに立つのは
職業選択を間違えたんじゃない?
って言うくらい派手な片桐さん。
クルクルのカールをなびかせて
付けまつげパチパチさせてきれいなネイルで
器用にレジを叩く。
そして、オトコ限定で甘い媚びるような声で話しかける。
そんな片桐さん目当てに
レジに並ぶお客さんも実は多い。
店の中を忙しく歩きながら仕事をするのは
雄輔さん。
いつも誰にでも笑顔で親切。
しゃべりながらも器用に店内整理。
本についての質問には
さらりとよどみなく受け答えする。
彼を目当てに、本を探しに来るお客も多い。
そして・・・・
あたしは、ただのアルバイト。
言われたことだけしかしないと決めた
愛想のないアルバイト。