第四章⑭
「うん、うん、代理が言いたいこと、よく分かるよ、すっごくよく分かる」
「でしょ?」
「うん、うん、ホント、困ったもんだよね、クロちゃんにも、困ったもんだ」
占い師の斗浪は生徒会室でヨシノの話を聞きながら、適当に頷き、時折ため息をついていた。「……はあ、カラーゲ食べたいなぁ」
斗浪のお腹は腹ぺこを知らせている。斗浪はマチソワのカラーゲパーティに参加して胃袋をカラーゲで満たす気でいたから、朝から何も食べてないのだ。今日の占いの稼ぎで膨れたお財布を持ち、ああ、何か新しい魔具でも買いに行こうかしらなんて、ルンルンでマチソワに向かっていたら、物陰から突然現れたヨシノにおっぱいを触られ、揉まれ、生徒会室に連行されたのだ。
本当だったら今ごろ、カラーゲを食べて幸せな気分のはずなのに。「とほほぉ」
「ねぇ、ちょっと、真面目に聞いてよ、」ヨシノは斗浪のおっぱいを触る。「カラーゲのことばっかり考えてんじゃないわよ、私のことを考えてよ、もっと、アイナは占い師でしょ、占い師だったら占い師らしくアドバイスを頂戴よ、金色の豚を玄関に置いた方がいいとか、そういう占い師みたいなこと言いなさいよ!」
「……ああ、面倒くさいなぁ」
ヨシノは生徒会長代理になる前のヒステリックな彼女に戻っていた。斗浪とヨシノは高一からの付き合いだ。昔の彼女はどことなく一匹狼というか、そういう雰囲気の持ち主で、好き嫌いのはっきりした、いわゆる順応性のない女子だった。占い師の斗浪はそんな面倒くさい彼女とよくつるんでいた。斗浪の灰汁の強さを毎日受け入れてくれる女子ってあんまりいなかったから。しかし、どんな心境の変化があったのか分からない。ヨシノは生徒会に入ったのだ。そして生徒会長にふさわしい振る舞いをするようになった。どことなく優雅に。しかし、それは初めから彼女に備わっていたものだと斗浪は思っている。今、彼女がどことなく優雅でないのは、きっと無理しすぎたのだと思う。褒められたとか、褒められないとか、そういうのは関係ないのではないかと思う。
「褒められないと、やる気でないよ、もぉ」
そんなことを言っているが、そんなヨシノに斗浪は「じゃあ、どうしてココにいるの?」って聞きたい。聞けばまた面倒臭いことを言うだろうから言わないけれど。その代わり、斗浪がウタコに変わって、褒めてあげよう。「よしよし、代理はよくやってるよ」
斗浪はヨシノを抱き寄せ、頭を撫でる。
「なんでアイナが褒めるのよ」
「よしよし、」赤ちゃんみたいに彼女を撫でるのも悪くないと思った。「あはは、よしよし」
「もぉ、」と言いながらヨシノは随分リラックスした表情になっている。こういうのも商売にしたら面白いかもって斗浪は思ったりする。「しょうがないなぁ、今日はアイナで我慢しといてあげる」
「はいはい、それでよいよい」
斗浪は微笑む。
一応、占い師として、事態の収束を計ることが出来ただろう。
明日、ウタコに報告して、ウタコの寵愛を受けねばならぬと思う。
でも、やっぱり。
カラーゲ食べたいなぁ。
と。
そんなときだ。
生徒会室の扉を誰かがノック。
「失礼します」と男子の声が聞こえて。
「あら、イケメン」が顔を覗かせる。
「ああ、よかった、ヨシノさん、戻っていたんですね」
「あ、丈旗君、」ヨシノがどことなく優雅に振り向き尋ねる。「どうしたの?」
「えっと、」丈旗は生徒会室に入ってきた。片手でカラーゲが盛られたお皿を持っている。いい匂い。「カラーゲ、食べます?」
斗浪は一気にテンション上がる。その場でジャンプしてしまった。「カラーゲ食いたかったぜ!」
その叫びにおしゃべりオウムが例によって反応した。




