表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/50

第四章⑪

理科準備室からウタコは、異形の黒い衣装を利用して闇に紛れながら、時折、香水を探している女子に追いかけられながらも逃げて、途中、御崎に見つかって黒いタンバリンを投げられながらも逃げて、なんとか久納にメールを送った。

 そして走ってズレた猫耳の位置をトイレで正して、一階の美術室側の渡り廊下に向かったのだ。

 そしたら。

 なぜか。

 久納と鏑屋。

 二人がキスしていて。

 長いキスをしていて。

 それはウタコ的に、ありえないことだったから。

 二人は友達だと思っていたから。

 脳みそでは、激しいロックンロールが鳴っていた。

 だから。

 ウタコは持っていた黒いタンバリンで久納の頭を叩いたのだ。

 いい音がした。

 目覚まし時計みたいな音が静かな美術室前の廊下に響く。

「二人は友達!」

 ウタコは思わずがなってしまっていた。

 潤んだ目をした久納がウタコを見る。「……ふえ?」

 もう一度、言う。「二人は友達、……でしょ?」

「会長、ありがとう、」久納は弱々しく微笑んだ。「うん、私とリホちゃんは、キスしたけど、友達」

「ちょ、ちょっと、待って、久納ちん、とりあえず、あの、なんていうか、」鏑屋は取り乱している。額には汗。「とっても久納ちんの唇、柔らかくて、その、気持ちよかった」

「二人は友達!」ウタコは鏑屋に向かって言う。「リホちゃん、何も考えちゃ駄目!」

「うん、それは分かってる、別にいやらしいことは考えてないよ、ただ気持ちよかったから、いつも抱きしめるみたいに、久納ちんにキスしてもいいかなっていうことを、確認させて頂きたくて」

「ちょっと考えさせて、」久納はいたずらに言って舌を出した。「ちょっと考えさせてください」

「ええ、そんなぁ、」鏑屋は不満を声にする。「いいもん、久納ちんが寝てるときに勝手にするもんっ」

「どうぞ、ご自由に、でも、私より遅くまで起きてられるのかなぁ?」

「うう、それは難しい問題だぁ」

 ウタコは二人に分からないように溜息を吐く。二人が変わらず友達で安心する。どうして安心するのか、というのは二秒くらい分析しないと分からない。が、分析するに、女子と女子の人間関係にはふさわしい距離というものが存在する。久納と鏑屋の場合、友達という距離が、とてもふさわしく愉快である、という距離なのだ。友達以上恋人未満なんて曖昧な距離じゃない。友達という距離が二人の正解。二人の絶妙。二人というものを表す正確な表記であるのだ。二人はそれをよく分かっている。

 私が黒いタンバリンを鳴らさなくても。

 女子が知らないわけがない。

 そういうことなのだ。

 距離の絶妙。

 それを求めて。

 女子は邁進する。

 ウタコはそう思っている。

 二人に何があったのか、ウタコは知る由もない。

 聞く気もない。

 二人はいろいろあって、友達である。

 いろいろあっても、友達。

 絶妙な人間関係。

 素晴らしい。

 ウタコとエイコの場合を考えて?

 まだ、分からない。

 まだ、奇妙。

 知らないわけがないことを知るために。

 せいぜい。

 走ってみたり。

 がなってみたり。

 猫耳をつけてみたり。

「なんで猫耳なんですか?」久納と鏑屋は仲良く声を合わせて聞く。

「エイコちゃんが猫好きって教えてくれたの、諜報部員のチミたちでしょうが」

「ああ、そうでした」と二人は幸せそうな顔をする。

「さあ、行くわよ、一年生」

「どこに?」

「カラーゲを食べに」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ