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第二章⑧

御崎が中央生徒会に入った理由。本当にいろいろある。いろいろあるのだ。そこには複雑な女子の心理が絡んでいるのだ。うーん、絡んでいないかもしれない。人口比率二割の女子の主張が男子にないがしろにされていると感じて自分が主張しなければいけないと思ったというのも理由の一つだし、カーディガンも理由の一つだし、中学のときも生徒会に入っていたというのも理由の一つだ。

 御崎が中学二年のときの生徒会長、それはウタコだった。ウタコとは中学が一緒だった。小学校も一緒だった。御崎がなんとなく周りからそそのかされて生徒会に入ったことが、それまで近くなかった距離が一気に縮まった理由である。そして御崎はウタコに告白されて、キスされて、アブノーマルになった。全てウタコのおかげなのだ。ウタコのおかげで気付くことが出来たのだ。

 私はアブなんだって。

 ウタコとはそういう親しい関係だった。だったはずなのだが、しかしウタコが卒業し、高校生になると、なんとなく疎遠になってしまった。理由は分からない。なんとなくだ。御崎はウタコと関係が終わるのが嫌だったけれど、ウタコは電話に出てくれなかった。三回くらい無視されて、それから、もうどうでもよくなって、御崎は違う女の子と付き合った。ウタコも別の女の子と付き合っているのだろうな。御崎はそう推測した。御崎はウタコのことを考えないようにした。

 しかし、中央生徒会に入って、なんの因果か、こうやって錦景女子に訪れる機会が何度かあった。御崎は先輩に久しぶりに再会するフィーリングでウタコとの再会を喜んだ。しかし、まるでウタコは御崎のことなんて知らない風に振る舞うのだった。存在していない風に振る舞うのだった。いわゆるシカトってやつだ。

 悲しくはなかった。

 そりゃあ、初めての人なんだから、複雑な気持ちにならなかったなんていうのは嘘だけれど。

 それ以上に。

 御崎はムカついたのだ。

 そろそろ強引にでも理由を聞かないといけない時期なのではないかと御崎は考えていた。強引に聞かないと、二人の未来に絶対によくないと思っていた。話さないといけないと思っていた。

 それなのに。

 逃げやがった。

 マジ切れそうになった。

 表情に出ないように、必死に感情を押し殺す。

「ごめんなさいね、」ヨシノはどことなく優雅に笑って、御崎と丈旗を生徒会室に招き入れようとした。「私たち、ウタコを探してくるから、二人は紅茶でも飲んで待っててくれるかしら、ほら、アイナ、探しに行くよ」

「う、うん、でも、さっきまでいたんだよ、」斗浪は掃除用具入れを開けて言う。「まさか、神隠し?」

「バカなこと言わないの」

「じゃあ、クロちゃんはどこに消えたの?」

「あのね、アイナ、実はこの生徒会室には生徒会長しか知らない脱出ルートが何ヶ所かあってね」

「忍者屋敷かよ!」斗浪は跳ねて素敵な大きさのおっぱいを揺らして突っ込んだ。「っていうか、そういうことは最初に言っておいてよ、もぉ」

「だから絶対に一秒たりとも目を離すなって言ったじゃないのよぉ、」ヨシノはどことなく優雅に自分の目を指さし言う。「とにかく、ウタコを探しに行くわよ、まだ遠くには行っていないだろうから」

「うん」

 斗浪が頷き、ヨシノと一緒に生徒会室を出る。

「待ってください、」御崎は二人の背中に向かって言った。「私たちも一緒に探します」

「そんな、いいって、なんていうか、悪いよ、申し訳ないよ、違う学校の人だし」

「探させてください、」御崎は前に進み出て無理に微笑んで言う。「なんていうか、鬼ごっこみたいで、楽しそうですから」

「鬼ごっこねぇ、そうね、鬼ごっこだ、これは、まあ、いいか、」ヨシノはどことなく優雅に指を口に当てて言う。「じゃあ、君たちは北校舎を、」錦女の校舎は北と南に分かれている。北は音楽室や理科室などの特別教室、南は普通教室がそれぞれ集合している。「私たちは南校舎を探すから」

 というわけで、御崎と丈旗は北校舎の捜索をすることになった。

「面白いことになったな」丈旗は御崎に体を寄せて言う。

「……笑えないかもしんない」

 ウタコに会ったら、笑えないかも。

 それくらいムカついているんだ。

「え、なんで?」

「説明不要」

 男子に分かるはずがない。当然沸騰する、訳の分からない女子だけの何か、なんて。



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