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虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~  作者: すなる
1章 第一部 新世界~リーザス編

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13話 食糧泥棒と魔王誕生

加護の力で3日かけてセバスたちの家を1つずつ作っていこうとしたが、セバスからこういう案が出た。

「我々の住居はひとまず1つにまとめていただいてもよろしいでしょうか?」


なぜこんな申し出が出たのかと思ったら、セバスも含めユキたちはまだ人の姿での生活になれていないので、セバスがみんなを見ながら生活指導も兼ねたいのだという。


セバス!

なんて有能なんだ君は……!

ハルトが感動していると、ルナが薄いネグリジェのような寝間着姿のまま居間に現れた。

ハルトがすぐに着替えてくるようにいうとルナはめんどくさそうな顔で部屋に着替えに戻っていった。


セバスについでにルナもそこで指導してほしいと思ったが、ルナが絶対駄々をこねそうで、セバスの負担や心労も考えやめておいた。



ひとまずセバスの要望通り、新たに加わった猫獣人たちの為に一つの大きな屋敷を作ることになった。

大きな屋敷には住んだこともないので、アニメや映画で見た屋敷をイメージして作ったらそれなりの建物がその場に創造された。

部屋数は20以上もあるかなり大きな屋敷になってしまった……。

まぁみんなで協力すれば掃除も何とかなるだろう。


流石にここまで大きなのは……。とセバスは困っていたが、ホールは10人全員で集まっても余りあるほど広く、食堂もあるので皆で使える集会場も兼ねようという話でまとまった。



こうして全員の生活の基盤も出来たところでセバスたちにも畑仕事を教えた。

ルナの時と同じく、皆まだ手を使った作業になれていないので道具を使うことに苦戦していたが、そう日もかからずに全員が農作業をこなせるようになっていった。




元猫たちの農作業は午前だけにして、午後はセバスに指導を任せ、人としての常識等を教えてもらった。

ハルトやロンドが一度説明するとセバスはすんなり理解し教えてくれるのでとても助かっている。

元々猫として人の街で長く暮らしていたので、ある程度人の生活を見知ってというのも大きかったようだ。

セバスは冷静で頭もよく面倒見もいいので、教師などをさせるとかなり向いていそうだ。




そして全員が新たな生活に慣れたころ事件が起きた。

ある日、倉庫に蓄えていた作物が減っていることに気が付いたのだ。


はじめはだれかがつまみ食いしたのか?と思いあまり気に留めていなかったが、食料泥棒が数日続いたので流石に看過できないと思い皆を集めて話をすることにした。


セバスが自分の管理不届きだといい謝罪しようとしていたが、まだ誰が犯人なのか分からない状況なのでハルトはセバスの謝罪を止めさせた。


全員に話を聞いて状況を整理すると、この数日作物が減っているのを確認したのは夜に食事の支度をするときだ。

午前から昼過ぎにかけては畑で採れた作物を倉庫に保管するのに人の出入りも多い。

つまり、犯人は収穫後~夕方に盗みに入っているということになる。

セバスはユキたちの指導に当たっているし、ハルトとエルドとルナは一緒に畑で作業をしているので皆アリバイがある。


話し合った結果、この状況で食料が不自然に減っていくのはおかしいという結論に至った。

この街に何者かが入り込んでいるのかも?という話になり、時間を分けて皆で交代に保存庫の見張りをすることとなった。


すると翌日。

ルナが見張りについているときに早くも犯人の姿を捕らえることに成功した。


「ご主人様!!犯人が見つかりました!」

畑に居たハルトとエルドの元にルナが駆けてきた。


二人は慌てて保存庫へと向かう。

そして保管庫の中を見てハルトは驚いた。


そこには以前見たことがある柔らかな球体上の物体が居た。

「これって……スライム?」


「食料を漁るとき以外はどこかに隠れていたみたいです」


「でもどこからスライムが――」


そう言いかけたところで、以前ロンドから異世界の扉を置きっぱなしだと何者かが入る混むかもしれないからと、注意されたのを思い出した。

あー……。

ドアを出したままにしてたから入り込んでいたのか……。


「どうする?とりあえず討伐するか?」


「でも、妙だな。俺らや嬢ちゃん達もここに出入りしてるってのに、一度たりとも姿を見せることがなかった。ってことは人が出入りする時間を正確に把握して隠れていたってことになるんだが。スライムにそれほどの知能があるとは思えねぇ。特殊個体かもしれねぇな」


「特殊個体?」


「ああ。魔力を持った生物―――魔物や魔獣には時折通常とは違った能力を持つ特殊個体が生まれることがあるんだ。気配に敏感な嬢ちゃんたちにすら気付かれずに何日もここに隠れ潜んでいたくらいだ。しかしたら知性を獲得したスライムかもしれねぇな」


「知性……か。今も後ずさりして何だか怯えているような雰囲気だし、襲ってくる気配もないな。話しかけてみるか?」


「話って旦那……。いくら知性を得た可能性があるといっても相手はスライムだぞ……?」


ロンドは呆れた顔をしていた。


まぁ物は試しだとハルトはスライムに語り掛けてみることにした。

「お前はあのドアを通ってきたのか?言葉は分かるか?」


スライムはただ部屋の隅に寄って震えているだけだった。

やっぱ無理か。


「ほら、言ったじゃねぇか。スライムと会話なんて――」


「害を与えるつもりはないから助けてって言ってる」

ロンドの言葉をさえぎってルナがそう呟いた。


「え?ルナ。スライムと話せるのか?」


「すべてが分かるわけじゃないけど、何故だかなんとなく何を言いたいのかがわかるみたい」


もしかして言語理解のスキルのおかげなのか……?それなら。

ハルトはスライムの方向に向かって手をかざし目を閉じた。


『対象に言語理解スキル付与。成功しました』


「よし」


「旦那?スライムにいったい何をしたんだ?」


「言語理解のスキルを与えてみたんだ。これで何を思ってるか俺やロンドも理解できるはず」


「たすけて。敵意 ありません」

3人の頭の中にスライムの声が聞こえてきた。


「こりゃたまげた……頭の中に声が……」


「これがスライムの声か?お前俺達に敵意は無いといったな?他のスライムとは違うのか?人を襲わないと約束できるか?」


「勿論。私は人襲わない。ずっと静かに暮らしてた」


「なるほど。なんであの扉を抜けてこの世界に?」


「森で人に追われてあの扉を見つけた。私が扉をくぐったら扉が消えた」


扉はやはり出したままにしておくと時間で消えるのか?それとも一定数が通過したら?いや、それはないなそれだと猫達を連れて俺らが通れたのはおかしいか。


「わかった。お前を信用する。俺たちもお前には手を出さないと約束しよう」


「ありがとうございます。話せるようになって嬉しい」


「君は名前はあるのかい?」


「私はただのスライムです」


ここで一緒に暮らすなら名前が無いと不便だよな……。

うーん、スライム……か。


「因みに性別とかあるの?」


「スライムに性別ありません。分裂で増やしていくので」


なるほど。性別はないのか。んじゃ見た目のイメージから名前を付けるとするか。

この真っ青なボディ、瑠璃色?いや光が当たるとシアンってところか……。



「よし、お前の名前はルシアだ。俺はハルト、こっちはロンドとルナだ。これからよろしくな」

「はい。よろしくおねがいします」


ルシアは柔らかい体から手の様に細長く体の一部を伸ばすと、ハルトと握手を交わした。


ルナがルシアを抱きかかえ4人は保存庫を出た。


スライムの体は柔らかく抱きかかえているルナは気持ちよさそうだ。

「ひんやりしてて気持ちよさそうだな、あとで俺にも抱かせてくれ」


「冷たくてとても気持ちがいいです♪寝るときにルシアを抱いて寝ると、とっても気持ちよく寝られそう♪」

ルナはスライムの感触がとても気に入ったらしい。


「へー、いいな。今度寝るとき俺もルシアを抱いて寝るとするか」


「私でよければいつでも」


ロンドはルナが抱えたルシアをつつきながら初めて触れるスライムの感触を確認していた。

「へぇ~スライムの生きた体はこんなに弾力があるのか、ルナ嬢がいうとおりほんとにひんやりしてて触り心地は最高だな」


「なぁ、ルシア?お前みたいな魔物ってどうやって生まれてくるんだ?」


「詳しくはわかりません。私は分裂で産れた個体でなく、魔力がたまっている場所から生まれました。他の魔物は魔力の泉と呼んでた」


「魔力の泉?」


「強い魔力が溜まってる場所」


「ロンドしってるか?」


「いや?俺は魔力の泉なんて聞いたことねぇなぁ」


ルッツ達なら何かしってるかな?

今度あの町に行くことがあれば聞いてみよう。


「ルシア、ここに住むことは許可するけど、これからは一緒に生活する仲間として色々仕事は手伝ってもらうぞ?」


「私にできることなら」


そういうルシアを眺めながらハルトは悩んでいた。

手伝ってもらうとはいったものの、この姿じゃ移動も遅いし、あまりやれることはなさそうだな。


「何か特技とかはないのか?」


「溶解液をだしたり、取り込んだ力を吸収できる」

うーん。スライムって感じの特技だ。


「ねぇご主人様?」


「ん?どうしたルナ?」


「この子も進化したら私達みたいになれるんじゃないかな?」


確かに進化って手もあるにがあるが、スライムが進化しても巨大化したりメタル化したりする気しかしないんだよなぁ。

下手すると毒化したりも……。


まぁ試してみるか。運よく進化でメタル化したりすると素早くなるかもしれないしな。


ハルトはルナに抱かれたルシアに手をかざし、進化を促した。

加護の力はイメージが大事だと最近分かってきたので、変に巨大化や毒化をせず、一応人の姿になれるようにイメージをしてみた。


『対象の進化 成功しました』

『対象の超越進化による魔王化 成功しました』


え?魔王……!?

ハルトが加護の声の中に嫌な単語が聞こえたと思った瞬間、ルシアの体が光に包まれ、とてつもない力が凝縮し始めた。

これにはさすがにルナも驚いてルシアをその場に下すとハルトの側に駆け寄った。


空間がゆがむほどの可視化された力がルシアの体に凝縮されていくのが分かる。

なんかヤバソウ……。

すごいことが怒っていそうだが、実際何が起こるか分からないので3人は静かに息をのみつつルシアの進化を見守った。


凄まじい光と力がルシアの体に収まってきたので、徐々にルシアの姿が見えてきた。

するとそこには青い長い髪、青い瞳に青い高貴なコートを身にまとった少女のような姿があった。

とても先ほどまでただのスライムだったものが進化した姿だとは思えなかった。


ハルトは恐る恐る声をかけてみた。

「お前、ルシア?……なのか?」


「はい。ハルト様のおかげでエンペラースライムに進化することができたようです」

ルシアは自分の胸に手をあてながら進化を喜び微かに微笑んだ。


どう見ても性別が無いように思えないほどの可愛さがそこにはあった。


エンペラー?

皇帝?

しかも魔王?

さっきまでふわふわの愛くるしい姿だったスライムが魔王になっちゃったの?


「あのさ、加護の声で魔王化って聞こえたんだけど……」


ロンドが驚いた。

「なっ!魔王!??魔王って言ったらあの世界の6つの魔族領を治めている、たった六人しかいない最強格の魔族のことだぞ!?」


「ええ。たぶんルシアはその魔王に進化できたみたいです」

ここにハルトのせいで予期せず7人目の魔王が誕生した。


ハルトとロンドは言葉を失ってルシアを呆然と見つめた。


ルナはルシアを見て、その進化を喜ぶ愛くるしい見た目にたまらず飛びついた。

「わーい♪ルシアちゃんかわい~♪あっ!進化してもちょっとひんやりしてて気持ちいい~♪」


「ちょっと……ルナ様っ!くすぐった……い、です……!」

ルシアはすり寄るルナに戸惑っていた。


「まぁこの姿なら人としての暮らしも出来るしいっか」


「だんなぁ……。そんな軽い話じゃねぇぞ?魔王だぞ?」


「魔王って言ってもルシアはもう家族みたいなもんだし大丈夫だろう」


まぁ、それに魔王って言われても俺は全然ぴんと来ないしなぁ。

ゲームの世界なら絶対悪だったけども、世界に元々6人も居たって言うならそれほど危険でもないのだろう。

魔族領を治める王で魔王ってことだよな?


「まぁ……。口外しなけりゃ大丈夫?なのか?」


ロンドは困惑していたが、本人も進化出来たことを喜んでいるし問題ないだろう。

抱き着いて離れないルナに困惑しているルシアをハルトは微笑ましく眺めていた。


「ちょ!ハルト様!ロンド様!助けて!」



他の皆にも食料泥棒事件のこととルシアの紹介をするために皆がいる屋敷に向かった。

道中で何故進化した直後に服まであったのか確認すると。

服は体の一部を変化して作ったものらしい。

自然と元からそうあるかのように進化するときに変化できたそうだ。

スライムほんとに何でもありで素晴らしい。

性別は無いといってもこの容姿で裸だと困るところだった。

ルナのように元のスライムの姿にも戻ることができるそうだ。

他にも進化によって様々なスキルや魔法を獲得したそうだが、たぶん聞いてもよくわからないのでそのうち聞くことにした。


皆にルシアを紹介すると始めは驚いていたが、元子猫組はルシアが年の近い少女のような姿なのですぐに打ち解けていた。

ここでも皆にすり寄られてルシアは涙目でハルト達に助けを求めていた。

猫達はひんやりとしたスライムボディを気に入ったらしい。


こうして街に新たにスライム(魔王)が仲間に加わった。

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