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「聖女様の逃避行」代行します  作者: 猫の靴下
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3.異世界で移動開始

気が付いたらゲーム上の世界に戻っていた。

さっき着替えた服も着ている。靴もある。

かわいらしい布製のカバンと小さなネックレス。


作業着と就活スーツしか持ってない優里は、長いスカートを履いてる自分がちょっとだけお洒落してるとうれしく思う。

こんなことでもないかぎり可愛い格好とは無縁の生活だったのだ。


林を抜けたところにある少し広い街道。

最初にいたのは聖女養成所の敷地だったのだろうか。

ゲームの道なんていちいち覚えてるわけないか。


地図もないしゲームなんておぼえてない。

どこかの街にいって情報を集めないと隣の国までいけないわね。

T字路で左右に道がある。さてどっちにいこうか。




右の道からガタゴトと荷馬車がやってきたようだ。


「うわー!馬だ」


優里は初めて馬をみた。白毛が合わさったぶち模様のかわいらしい馬だ。

ゆっくり馬は止まり、乗っていた老齢なおじいさんはたずねた。


「お嬢さん、こんなところでどうかしたのかね?」

「えーと。道に迷ってしまって。街はどちらでしょうか」

「それならここからまっすぐ・・・どうせ行くところだから乗っていくかい?」


優里は親切そうなおじいさんに街まで乗せてもらうことにした。




「本当に助かります。私優里といいます」

「わしは皆がホセと呼ぶな。ユーリさんか。良い名前じゃ」


発音難しいのかな。ユーリでもいいか。


話によるとやはりここはゲームと同じセルベス国。

向かっているのはスモール村。

そこを経由してラージ街に行くらしい。


スモール村とラージ街って安直すぎる名前よね。

そういえば国の名前も芋よね。

運営手抜きすぎだろ。



ポクポクとのんびり馬は歩いて、夕日が木々を照らすころスモール村に到着。

ホセさんにお礼を言って、今夜泊まる宿屋も紹介してもらった。

姪御さんが結婚して始めた宿屋なんだとか。


「こんばんは。一人部屋あいてますか?」

「いらっしゃいませ。えーと女性で一人旅ですか?」宿屋の女将さんらしき人は驚いていった。

「はい。親せきの家にいくところです」

「そうだったのかい。あたしはここの女将。部屋は空いているからどうぞ」


女将さんはほっとしたような顔をして二階の部屋の案内をする。


「最近物騒でね。女性が一人っていうのはどうも心配でつい余計なことを。ごめんなさいね。

 食事はさっきの受付の横に食堂があるので時間になったら適当にいらしてくださいな」


夕食までに時間があったので、村の資料館に地図があると聞いて向かった。


人があまりいない時間帯だったようで受付ですんなり資料室を見せてもらえた。

ゲームと同じここはスモール村。ラージ街にいくには乗合馬車がでてるそうだ。

街で王都行に乗り換えていく。


王都のそばは安全なので魔物とかは出ないし、乗合馬車に護衛がついてるそうだ。

ただ、そのあとの国境を超えるとなると護衛を雇うのは必須なんだとか。

王都についたら考えますかね。



夕食の時に隣の夫婦の話し声が聞こえる。

学院の学生が一人行方不明になり衛兵さんがこのあたりを聞き込みをしてるのだとか。


ゲームだと宿屋で見つかってしまうとゲームオーバーだったが、本人じゃないから見つかりっこない。

それにしても情報が早いわね。

これはエリスさん逃げるのが大変だわ。



皮がパリパリに焼かれた皮付き肉に爽やかな香りのハーブが添えられている。

肉は鶏の胸肉みたいにサッパリしていて食欲をそそる。

わぁ~異世界飯だわ。いただいきます。


就活でろくなもの食べてなかったから、しみわたるわ~。

食事を食べていたら、二人組の剣を持ってる冒険者っぽい人たちが入ってきた。


「ふぅ~腹減った~女将さんなんかない?」

「なんだい今頃。簡単なシチューくらいしかないよ」

「いつものまずいやつか。しょうがないなそれでいいや」


すごい失礼な奴だ。冒険者ってこのくらいが普通なんだろうか?


「お?かわいいお嬢さんがいるじゃん。どうだい、俺たちと一緒に飲まないかい?」


まさか私のこと?びっくりしてそのまま食べ続けた。

動揺しながらもぐもぐもぐもぐ。


「なあ、おい食べてないでさ」


もぐもぐもぐもぐ。


「お・お嬢さん?」


もぐもぐもぐもぐ。


「ちょっと!うちの客に手を出すならとっとと帰っておくれ」女将さんが追い払ってくれた。


なんだこいつら?

二人は食べそこなったなどど、ぶつぶついいながらも引き上げていった。

睨みつけながら全部平らげたが味がしなかった。

せっかくの異世界料理を味わいそこなったじゃないか。


さすが異世界。日本と同じでバカはどこにでも湧いて出てくるんだ。

ゲーム世界のルンルン気分が吹き飛んでしまった。

次に会ったら文句の一つもいってやろう。


お風呂はないようなのでそのまま部屋に戻って着替える。

あー基礎化粧品持ってくるの忘れたわ。ないものはしょうがないか。

布団にもぐりこんだ。


このまま現実にいけないかなと期待したが残念ながら普通に朝がきてしまった。



翌朝、2日目。


目覚ましが欲しい。切実に思う。

昼食の弁当の包みを受け取り、ラージ街経由王都の乗り合い馬車で向かうつもりだ。

宿のおかみさんに聞いてみる。


「あの、異国に行きたいのですが何か必要なものありますか?」

「そうねぇ。とりあえず身分証明書は必要ね。ギルドにいけば発行してもらえるんだけど今からだと馬車に間に合わないかもしれないわね」


そうだったのか。街にいったら作ってもらおう。


宿の入り口でうろうろしている男2人発見。昨日のバカだ。

蹴り飛ばしてやろうとおもったが、今日もあのかわいらしいスカートだ。

やめておこう。

女将さんは慣れた手つきで裏口から外に出してくれた。

日常茶飯事なんだろうな。


見つからないように多少挙動不審になりながら乗り合い馬車乗り場まで向かう。

村から王都まで行く人は割と多い。治療院に行く人や仕事にいく人など様々だ。



ガタゴト、ガタゴト、ギシギシ。



ホセさんの荷馬車より数段速いが、そのぶん余計に揺れる。

馬の足音より車輪の軋む音のほうがすごいのね。

設計図があったら絶対手を加えて直してやりたい。

相変わらず尻が痛い。部屋に戻ったらクッションを絶対持ってこようと誓う。


途中ラージ街で休憩してお昼ご飯。お弁当はピカタみたいなパンだ。冷めてるけどおいしい。

やっぱり食べ物は美味しくいただきたい。

馬は水を飲む。

木つちがあったので、馬車のゆがみをたたいて修正してみる。

大抵は車軸あたりが歪んでいるはずだ。大量に乗せすぎるとそうなる。

これで多少はましなはずだ。

馬車内の人に王都の話を聞いてみた。お風呂もついてる宿屋があるらしい。楽しみ。



ガタゴト、ぽくぽく。ガタゴト、ぽくぽく。



夕刻やっと王都につく。

お風呂付宿屋は遅すぎて満杯だった。シャワー付きはあるそうなのでそちらにする。

国境を超えるには冒険者カードが必要らしいので早めに登録したほうがいいよね。


村で登録しとけばよかった。すぐに後悔する。

数倍広いのでギルドまで結構歩くんだこれが。閉まってしまう前に急がねば。


やっと到着したら冒険者がたくさんいてごったがえしていた。

受付も並んでいた。

やっぱり村で登録しとけばよかった。


やっと順番が来て受付嬢がにっこりと挨拶をする。


「えっと国境を超えるにはギルドカードが必要だと聞きましてこちらにきました」

「はい。むやみやたらと犯罪者に通られても困りますのでそのようになってます。

 なくても通過できますが、その際はいろいろな書類作成が必要となります。

 カードなら身分証にもなりますので作ったほうが簡単に通過できると思いますよ」

「なるほど。じゃあおねがいします」



名前はユーリにした。魔力測定をうけて「魔力なし」判定をうける。

それはそうよね。ちょっとは期待したんですが、やっぱりないか。

最低のFランク。街中で仕事を受けられるレベルだそうだ。



「ギルドカードにはランクが記入してあり、そのランクに合わせて受けることができる仕事が変動します。

 ランクがあがるごとにギルドカードを更新しますので、その際には受付までお立ち寄りください」



一週間でどうこうできるわけないが一応説明を受ける。

カードを持ってると冒険者に護衛依頼もできるんだそうだ。助かる。

カードを受け取って出ていこうとするとまた変なおっさんが現れる。


「新人かい?俺が冒険者の心得ってやつをちょっくら教えてやろう」

「いえ、結構です」


ギルド内で「ふられてやんの」と爆笑が起きる。

その隙にさっさと逃げる。

異世界って絡む人多すぎじゃないかと頭をかかえながら宿屋に逃げ込む。


護衛を頼むにしてもこれはちょっと困ったな。

明日受付で相談してみようか。



優里さんとなかなか接続ができないわ。エリスは焦っていた。

困ったわ。

あ、聖地がある王都に来たのかしら?これならなんとかなるわ。


マンション5階。

優里はやっと彼女の部屋に現れた。



「あれ?戻ってる」

「連絡遅くなって不安になってしまったでしょう。すみません。

どうも私の魔力では届かないらしく神殿のあるような魔力の強いとこでしか優里さんを呼べないみたいなので」


「神殿ですか」

「小さい村とかだとどうしても無理が出てしまうみたいなんです」

「いえいえ、なんとか王都まで着きましたよ」


「優里さんに頼めて本当によかったです。神のお導きでしょう」聖女エリスさんはとてもうれしそうだ。

「それで隣国といってもどこの国にいけばいいのかな?」


「アピオスが希望です。以前そちらの国からも聖女見習いの人たちが学院見学にいらして、お国の違いを聞きました。

 あちらでは聖女といっても国に無理やりというのはないそうで、ものすごく自由なのです」


「なるほど。あと冒険者を雇わなくてはならないのですがちょっと変な人が多いですね」

「すみません。私の国の人間は利己的で、他人を陥れ罪を擦り付ける連中ばかりなんです。

 大変だと思いますがよろしくお願いします」


泣きそうなエリスさんだったので、思わずホセさんや宿屋の女将さんという親切な人にもあったことを伝える。


「全員がおかしいわけじゃないのですね。少しでもいい思い出ができること願ってます」





現実世界に私がいるとエリスさんの魔力を使ってしまうそうなので

ささっとお風呂に入り、化粧品と空気で膨らますクッションを持って異世界にもどる。


エリスさんからはペンダントの使い方を教えてもらった。

聖女の力が宿った石だそうで魔法が使えなくても祈ると危険な時に身を守れるようにしてあるそうだ。

助かる。

またおかしな人に会ってもこれで大丈夫・・・。


あれ?聖女って攻撃魔法はないよね。

大丈夫なのか私。


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