大好きな君へ
唯ちゃんは俺よりも早く死ぬ。
俺を残して、いってしまう。
なんとなくわかっていたけれど、先生に伝えられ、ようやくそれが実感として湧いた。
人間は妖より早く死ぬ。
妖にとっては当たり前の事だけど、俺にとっては当たり前じゃない。
だからやっぱり、そういう差異にいつも戸惑う。
唯ちゃんがいなくなっちゃうなんていやだ。
想像しただけで胸がぎゅうっと苦しくなる。
でも、唯ちゃんは俺が消えるのを何度も体験したはず。
想像だけで、こんなに苦しいのに、唯ちゃんはどれだけ苦しかっただろう。
――こんな苦しい思いはもうさせない。
俺は落石に当たって死んで、この世界に生まれた。
よくわからない世界によくわからない体。
式神になって、与えられた役は悪役で……。
どこにもいけない気持ちを持て余して、命を使おうとしてた。
そんな俺を。
自分でも諦めてた俺を唯ちゃんがずっと見ててくれた。
いっぱい苦しんで、悲しい思いをしながら、俺もみんなも助けてくれた。
唯ちゃんは主人公。
そんな唯ちゃんの攻略対象者は六人。
陰陽師が三人と妖が三人。
俺が知っているのは鋼ちゃんと友孝様、先生、勇ちゃん、理事長だけ。
……もしかして、俺って最初から攻略対象者だったのかな。
六人目は隠しキャラで、説明書にも載っていなかったから。
まあ、今も六人目が実はどこかにいるっていう可能性もあるけど。
でも、ここがゲームの世界かどうかなんてどうでもよくて。
だって俺は生きていくから。
この世界で妖の体で生きていくから。
ずっと遠回りして、唯ちゃんにいっぱい迷惑をかけて、みんなに助けてもらって。
根性なしの俺を諦めないでくれた人がいるから。
「じーちゃんに……言わなきゃ。」
ボソリと呟けば、隣にいた唯ちゃんが、ん? と俺を見る。
そのきれいな緑色に微笑んで、あーって空を仰いだ。
「じーちゃんさ、二百年ぐらいしたら復活できるって。……俺、ちゃんと待ってるって言えなかった。だから、後で報告してくるよー。」
「……なんて言うの?」
じーちゃんに言えなかった返事。
「二百年でも三百年でも待ってるよって。ちゃんと生きて待っとくからって。」
そう告げた後、チラリと唯ちゃんの方を見る。
そこにあるのはふんわりと花が咲いたような笑顔で……。
大好きな君。
もし、君がいなくなっても。
――俺は俺を生きていくよ。
活動報告にチャコの小話upしました。
これにて本編は終わりです。
お付き合いいただきありがとうございました。
この後は番外編として攻略対象者視点でのその後の話をゆっくり更新します。
また機会がありましたらよろしくお願いします。
そして、完結記念にweb拍手設置しました。
好きなキャラやカップリングを教えて頂けると、次作の参考にします。




