10-1 私のターニングポイント
①
「ちょっと待ってくださいファーレ様。のばなちゃんにはただこの儀式の生贄を頼んだだけなんですよ」
魔王さまが必死に説得しようとしているが、まったく聞く耳を持たないようで一人興奮したまま早口にまくしたてる前王さま。私はというと、今は前王さまが前に出張っているため何もできず、ただただ全力で魔王さまを応援することしかできなかった。
『そうよね!そうすればよかったのよ。だいたい何百年かに一度の封印ってだけで呼び出されるのにもいい加減疲れてきたところなのよね~。それに、向こうの方がいい男もたくさんいたわけだし。この儀式に出ないですむなら男狩りに専念できるし、まあめんどうくさくなったのも事実よね』
(結局めんどくさくなっただけじゃん!!・・・はっ)
ジッと待機しているなんてできるはずもなく早々にツッコミを入れてしまった。
だって誰もツッコまないから。唯一ツッコミできそうなトウドウさんは傍観者を決め込んでいるのか無表情で突っ立っているだけだし、言った当人の死神さんも傍観者だし。親子そろって傍観者か。
どこにそんな力があったのか、前に出ている前王さまを無理やり奥に押し込めて魔王さまに話しかけた。
「ちょっと待とうよ!私人間ですよ!?簡単に魔界の住人になれるわけないよね?ね?」
「あれ?のばなちゃん?・・・いや~なろうと思えばなるのは簡単なんだよね~。あはは~へぶっ」
期待を込めて魔王さまに問いかけたのに予想とは裏腹に案外簡単になれそうな口ぶりだった。へらっとした笑い方に苛立ち、ついボディーブローをかましてしまった。
「嘘だーーーー!そんなわけないよね!?だって魔界だよ?そんなに簡単になれるんだったら今頃人間なんて皆魔物になってるよ!」
「うっぷのばなちゃん落ち着い・・」
「陛下が死にそうやで嬢ちゃん」
「あ、ごめん」
無意識のうちにがくがくと前後に魔王さまを揺らしていたようだ。元々白い顔ではあったが余計に青白なっており、手を離すとすぐに崩れ落ちた。
「しゃーないから話せへん陛下に代わって教えたるわ。まず、魔界の住人になりたいんやったら吸血鬼に噛まれて同族になるか、魔力の強い魔物の血を1ℓ飲むかのどっちかやな。・・・・・・どっちがええ?」
「いやならないから!!?」
私がなりたがっているみたいに説明してるけど違うから。ならないように回避するために聞いただけだから。
『(もうどっちでもいいからさっさとやってきなさいよ』
「やりませんって!もう!魔王さまなんとかしてよ!!」
「あーはは・・。こうなったファーレ様を止めるのはすごく大変なんだよね~」
お手上げ状態なのか困った表情を浮かべトウドウさんを見る魔王さま。いやむしろ困っているのは私なんですけど、簡単に白旗上げないで!
『やる気がないのならあたしが強引にしてあげましょうか?体の自由を奪えば血を飲むのだって、か~んたんにできるんだし』
(!!?)
いつの間に交代させられたのか、前王さまは薄い笑みを浮かべて恐ろしいことを口にした。
「ファーレ様・・・・それはさすがにやり過ぎです」
『あ~らどうして?元々人風情に従う気なんてサラサラないわけだし、ちゃっちゃとやった方が手間も省けるでしょう?そ・れ・に、貴方は魔王なのよ?小娘相手にいつまで手間取っているのかしら。刃向うのであれば力でねじ伏せるのが魔界。そうでしょう?』
「せやな。王はあんたや。やりたいんやったら従うで?」
(!?)
前王さまに続いてトウドウさんまで魔王さまを催促し始めた。多分このやり取りに飽きてしまったのかもしれない。飽き性っぽいし。
非常にマズイ。このままだと本当に悪魔の仲間入りにされてしまう。わたしはただご馳走を食べに来ただけであって人間やめに来たわけではないのに。




