9-3 一時休戦
③
『んふ。この体もあたしの好みではないけれど、先ほどの動物よりはマシよね』
(言いたい放題だな!もう、さっさと封印して帰ってくださいよ!)
合体が無事完了したと同時にこの言いぐさ。本当どうしようもないよ、この人。
『うるっさいわね。今この体の主導権を握っているのはあたしなの。忘れたわけじゃないでしょう?』
と言いつつ、前王さまに乗っ取られた私の体はそんなに長くもない爪で自分の頬をひっかき始めていた。ピリピリとした鈍い痛みを感じてハラハラしていると、突然背後から腕を掴まれた。
『誰!?』
「おやめくださいファーレ様!!のばなちゃんの可愛い顔に傷がついてしまいます!」
動きを止めてくれたのはやはり我らが良心魔王さまだった。
『可愛い・・・・・・・・・・・・・・スィエロ、貴方女の好みが変わったのかしら?それとも俗にいうブス専ってことかしら?』
(めっちゃ失礼!!!!!!)
ブス専って、自分でも平凡顔だなあとか自覚はあるけども、真正面からこんなに真顔でブサイクなんて言われたことないよ。これは傷ついた。のばなは100のダメージを受けた。
「失礼ですよ前王」
(!トウドウさん)
なんと間に入ってきたのは前王さま大嫌いなトウドウさんだった。私をかばうなんていうかなり珍しいこともしているため余計に驚きを隠せない。
「確かにその嬢ちゃんはブサイクや。せやけど陛下の好みは至って普通、嬢ちゃんをかばっとるんはただのペット感覚っちゅうやつですわ」
(一番ひどいよこの人!!だよね!思った!トウドウさんが私をかばってくれるなんて一ミリも期待してなかったし!むしろ落とされるのも覚悟してたよ!)
『さっきからうるさいわねこのブス。わかったわよ、スィエロはペットが欲しかったのね勘違いしてごめんなさいね』
(何もわかってない!)
『さ、早く儀式を始めましょう。少し疲れたし、早く眠りたいわ』
私の心にブリザードが吹き荒れる中も話はどんどん進んでいき、死神さんは再び鎖につながれ、他の従者たちは魔法陣を展開させていた。そして要の前王さまは死神さんの目の前に立ち片手をかざした。
『んふふ、今度は何百年後に会えるのかしらね』
「一つ頼みがあるのだが、良いか魔王」
『あら珍しい、何かしら?』
さっきまで冷たくあしらわれていたからか、急に死神さんに話しかけられて前王さまは少しテンションが上がったようだ。
「この先の封印魔法を全てプレジルに譲ってくれぬか」
はい?この場にいる全員が口にした言葉を私は心の中でもう一度口にした。はい?
ぽかんと口を開けたままの前王さまも私の声が聞こえたのかキッと死神さんを睨みつけた。
『ふざけるのも大概にしなさい。封印魔法は封印したこのあたしにしかできないことなのよ!それを譲れですって?しかもこーんなちんちくりんの生贄に?ふざけないで!!』
「ふざけているつもりは毛頭ない。ただ、眠りにつく前にはこの娘に見届けてほしいだけなのだ」
「えらい我がままな親父やな」
「もちろん我が息子にもその役を担ってもらいたい」
飛び火した。もちろんトウドウさんは全力拒否の体制をとっている。
『それをふざけてるっていうのよ!!この生贄が確かにあんたの女の魂を持っているのだとしても、これは人間なのよ!?何百年もの儀式なんてできるわけないでしょ!』
「いや、魔界の住人にすればいい」
(!!?)
「「『!!?』」」
今とても危険な単語が飛び出してきたような気がしたけど、まさかね。聞き間違いだよね。他の人も固まっちゃってるけど、バカ過ぎて固まってるんだよね?そうなんだよね?
「えと・・・のばなちゃんは地上の人間です。むやみに地上に干渉するようなことはできません」
よし、魔王さま偉いぞ。その調子でさっさと封印しちゃってくださいよ前王さま。が、前王さまは先ほどの怒りなど忘れたかのように瞳を輝かせて死神さんを見ていた。
「・・・・あれ?ファーレさま?どうされました?」
『ああん、あたしったらどうかしていたわ!そうよ、その手があったわ!!うふふ、いいわ貴方のその提案に乗ってあげる!』
(えええええええええええええええええええええええええええええ)
「えええええええええええええええええええええええええええええ」
魔王さまと私の心の声がシンクロした。




