7-3 生贄交代?
③
否定するのにも疲れたため死神の言葉に耳を傾けるだけにした。
その話を簡単に説明すると、喧嘩をしていた恋人のプレジルさんに突然別れを告げられてしまい、行方もわからなくなってしまったためやけになり前王さまに八つ当たりならぬ、魂狩りを実行してしまったらしい。
「最悪だよ、人に八つ当たりして殺すなんて・・・」
「・・・そうだな。もっともだ。・・・・あの時、王に誘惑などされなければあんなことには・・」
誘惑したんだ、前王さま。そしてのっちゃったんだこの人。大人のただれた関係なんて知りたくもなかったよ。
呆れかえった目で見ていると、ふと疑問が浮かんできた。どうでもいいことだと思うのだが、気になってしまい聞いてみた。
「あの。どうして目を開けないんですか?」
「ああ、開けようと思っても開かなくてな。ずいぶんと閉じたままだったからだろう。今のところは不自由をしていないから問題ないんだが」
「いや大問題なんですけど!開けてくれていたらこんなことにはなってなかったんですけど」
「確かにお前の顔は早く見たいな」
「見て!マジで見て!!」
「ははっそんなに見てほしいのか。可愛いやつだな」
「ぎゃーーっ合ってるけど違う!!顔近づけんな!!!」
またしても頬を染めて顔を近づけてきたため顔面パンチをお見舞いした。かなりの力でパンチしたのだが、まったく効いていないらしく懲りずに顔を近づけてくる。確かに美形は好きだが、何か違う。いつもなら頬が赤くなるのだが、逆に青くなっている気がする。
「ひいいいいっやめ!!!」
「何二人してちちくりあっとんねん」
天の助け、もとい悪魔が降臨された。
「トウドウさん!!」
もうこの際、この状況から脱却できるのならば助けはトウドウさんでもいい。
そのトウドウさんはというと、向かいの木のてっぺんにしゃがみ込み面倒くさそうにこちらを見ていた。
「早く助けてくださいよ!」
「楽しそうやったやないか。続けてかまへんで?」
「最低だよこの人!!」
そうだ、この人はこういう人だった。どうして魔王さまが助けに来てくれなかったのだろうか。
私の思考を読み取ったのかトウドウさんが話出した。
「陛下やったら前王に捕まっとるで」
「さいですか・・」
魔王さまはヒステリックペンギンの相手で忙しいらしい。ご愁傷様。
私たちのやりとりを無言で聞いていた死神だが、突然私の腰に回している腕を強めた。
「あんたそないに色気のないガキが好みやったんか?」
「・・・・・」
「無視か」
私とのやりとりではあんなに饒舌だったはずだが、トウドウさんの質問には無言で返していた。トウドウさんはそれに苛立つこともなくこちらも無言で死神を見据えているだけだった。
「「・・・・・・・」」
重い。空気がとてつもなく重たい。二人とも話すのが大好きだろうに、人見知りでも発揮しているのだろうか。仕方ない、ここは私から話しかけて話題を作ってあげよう。
「あのー、いい加減に何か話しません?この空気きついんですけど」
「俺は話す気満々やで?せやけどそいつが話さへんから」
「プレジルが話せというなら話すが・・・」
「プレジル?」
トウドウさんはプレジルと聞いて首を傾げた。無言で説明を求められたため簡単に勘違いをされていることを伝えた。するとトウドウさんは少し考えた後鼻で笑ってそれに答えた。
「はっ。確かに声は似とるけどな、外見はまったく別人やないか。何百年も会わへんかったら容姿も忘れてまうんか?ああ、目閉じたまんまやったな」
何故かトウドウさんはプレジルさんを知っている風に話している。
「え?何、もしかしてトウドウさんの知り合いなの?」
それなら話が早い。否定するなり、その本人を連れてきてもらうなりして早く解放してほしい。
「知り合いっちゅーか、俺のオフクロの名前や」
「はい?」
周りの空気が凍った気がした。