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7-1 生贄交代?

 ①


 息苦しいモヤの中、私は誰かに手を引かれてようやくモヤから脱出できた。盛大にせき込みながら顔を上げると、私を助けてくれたのはなんと、トウドウさんだった。てっきり魔王さまかと思ったが、あちらはモヤを払うのに忙しそうだった。

「あ、ありがごほごほっとうござます・・」

「?はあ・・・」

「どうしたんですか?トウドウさん」

「・・・・・・・・なんで嬢ちゃんが出てきとんねん」

「え?」

そういえばトウドウさんと会話が出来ている。先ほどまでは前王さまが前に出ていたはずなのに、おかしい。

「前王はどないしたんや?奥に引っ込んでもうとるんか?」

一応心の中で前王さまを呼んでみた。が、何も返事はない。

「いやそれが・・・何も感じないというか、いない・・みたいな?」

トウドウさんが青筋を立てた気がした。でも本当にわからないのだから仕方ない。いくら呼びかけても返事も何もない。

「はあ・・おーい、陛下。ちょお面倒なことになったわ」

「ええ?ちょ、ちょっと待って!」

魔王さまは慌てながら手から青白い光を出し、私たちの周辺に見えない壁のようなものを作った。モヤも入れないようだ。

「どうしたの?」

「そ・・・それが・・・」

簡潔に前王さまがいなくなったことを伝えた。すると魔王さまは顔を青ざめカタカタと震えだした。

「どどうしよう・・・もしもファーレ様がお帰りになっていたりしたら・・・」


『ちょっと!なんで誰もあたしを助けないのよっ。いい加減こっちを見なさい!!』


「「「?」」」

聞き覚えのあるソプラノ声が聞こえた。しかし、いつもはそんな話し方をするはずもないため多分人違いだ。不信感満載で声の聞こえた方を三人で一斉に見てみると、そこには

『ようやくこっちを見たわね!普通は何があってもあたしを優先するはずでしょう!?まったく・・』

「「「・・・・・・」」」

ブツブツと高飛車な話し方をするペンギン、ペン子が地団駄を踏みながらこちらを見ていたのだ。私の耳がおかしくなったのか、小首を傾げて頬を引っ張った。トウドウさんも同じなのか自分ではなく何故か私の頬を遠慮なくつねった。

「いだっ!?うう、何するんですか!」

「夢やないな・・」

「えーと、ファーレ・・・・様?」

『何よスィエロ』

魔王さまが遠慮がちに尋ねると、ペン子はさも当然のように返事を返していた。

「えええええええええっ!!?」

『うるさいわね!!何よ?ってかあんた誰よ!』

ピンク色のペンギンが高飛車な話し方で手(羽)を組んでこちらを睨んでいる。いつものペン子とのギャップがあり過ぎる。そして、あの中に先ほどまで高飛車な態度で偉そうにしていた前王さまがいると思うと、もう―――――

「「ぶっぶはっ!あっはっはっはっは!!!」」

こらえきれずにとうとう私とトウドウさんは思いっきり笑い出してしまった。トウドウさんなんか指をさして笑っている。

「ちょ、ちょっとふ、二人とも・・・笑っちゃぶふっ」

唯一笑いをこらえていた魔王さまも結局吹き出してしまった。笑われている本人はというと、何が起きたのかわからずに目を白黒させていた。しかし、自分が笑われていることだけは分かったらしく、顔を赤くしながら怒っていた。


「ひーひー、はあはあし・・・失礼しました。コホン、ファーレ様これを」

『何よっ』

ようやく笑いが収まったらしい魔王さまは、指を鳴らして小さめの鏡を出した。そしてそれをペン子=前王さまへと渡した。

『・・・・・・は?』

鏡を覗き込んだ前王さまは、その場で固まってしまった。うん、そうだよね。それよりも私の隣でまだひいひい言っている人がいるんだけど、どうしたらいいんだろうか。

『な、なによ・・これ・・ちょっとスィエロ!どういうことよこれ!さっきの生贄よりもひどくなったじゃない!!』

「あーはは、自分にも何がなんだか。多分あのモヤが関係しているんでしょうけど・・・・でもよかったです、お帰りになっていなくて」

ホッと一息ついている魔王さまだが、前王さまのオーラはヤバい。これだったらお帰りになった方がよかったのかもしれない。

私は体が軽くなって万々歳だが、なんだか少し可哀想になってきた。

「魔王さまの魔法でパッと戻したりとかできないの?」

『ん?あんた誰よ』

助け舟をと思い声をかけたが、そういえば自己紹介をしていなかった。

「えーと草間のばなです。一応さっきまで前王さまが入っていた、生贄・・・・なんですけど」

自分で言っておきながら辛くなった。生贄とか普通自分じゃ言わないから。

私にしては引き気味に自己紹介をしたのだが、前王さまは何かが気に入らなかったらしく、キーキー怒り出してしまった。

「どうしたのあの人」

「あー、多分自分を追い出したとか思ってるんじゃないかな。原因はモヤだってわかってるんだけど、あの人少しヒステリーだからさ・・・」

魔王さまが苦笑している。トウドウさんがお近づきになりたくないと言っていた意味がよくわかった。




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