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第13話 ダンジョン攻略パーティーの面々

 ヴァルカとミーシャさんは、オリエンス帝国に到着して初日は移動の疲れを取るために宿で一泊し、翌日エステルの案内で昼を過ぎた頃の約束の時間に、帝都エノクにある討伐者ギルドの支部に向かった。

 そこでトレーユ先生と再会の喜びを分かち合ったのち、いよいよ攻略パーティーに作戦が教えられる。


「じゃあ、私は先に宿へ帰ってる」


 攻略に加わらないミーシャさんは、一足早く宿へと戻っていった。

 彼女を支部の玄関口で見送ると、さっそくトレーユ先生が、


「ブリーフィングルームへ案内しよう」


 とエステルとともに、執務室の向かいにあった部屋に案内する。中は執務室よりも大勢入れる広さを持ち、まるで学校の教室のように一人用の机と椅子が、六掛ける八で並べられていて、前方には黒板が設置されていた。セイラム学園の教室もこんな内装だったのを覚えている。当然規模は学園のほうが上だったが。


「おっ、来たか!」


 黒板前にすでに三名の先行者が談笑していた。

 アルフォンス、アンナ、バロックだ。


「お前達は……」


 彼らの説明をエステルが代わりに引き受けた。


「ダンジョン攻略パーティーに、ご参加いただける方々です! 前回の〈コマンダー〉攻略を成功させた人達に声をかけたんです。ヴァルカさんと連携を取ったことがあり、直近の戦い方もその目で見て知っていて、かつ今も生き残っている方々って結構少なくて……」


「それで俺達三人は乗ったってわけ」


 アルフォンスはそう笑顔で言う。


「さすがにダンジョンの中に入るって聞いたら、ほとんどの人は怖気づくでしょうね」


 と、ぶっきらぼうにアンナ。


「……よくやる気になったな。リーリスに縁があるのか?」


 するとアルフォンスは頬をぽりぽり掻きながら、


「ん? 別にねーよ。でもそういうの、放っておけねえじゃん? 黒のあ――〈銀腕〉のヴァルカさんがパーティーリーダーなら、負ける気もしねぇしな!」


 そう言って、やる気を見せる。


「はぁ……これが命懸けってわかってなさそうね」


 いつも通り彼の発言に呆れるのはアンナだ。まるでため息をつくのが癖になっているかのようである。


「何言ってんだよ、命懸けなら前と変わらねぇだろ?」


「その度合が、今回は比べ物にならないって言ってるの」


「んなこと、わかってるって」


「本当にわかってるのかしら……。まあ、足引っ張らないでね」


「お前こそな!」


「へえ、言うじゃない。前回が初陣だったくせに」


「まあまあ、これからまたパーティー組むってんだ。喧嘩はやめとこーぜ?」


 そう仲裁するのはバロックだ。


「つか、一番参加理由が不思議なのは、バロックのおっさんだぜ。絶対断るかと思ってたのに」


 そのアルフォンスの言葉には、アンナも同意のようで頷いていた。


「最初は断るつもりだったさ。でも妻と子に背中を押されてな。〝世界を救ってこい、自分達のことは気にするな〟って」


「バロックのおっさん……」


「私の本心をわかってたんだろうな……本当はまだ英雄ってのを諦め切れてないことに。本音のところで、国を救えなかったのを強く後悔していたことに」


 〝あんたのせいだぜ〟と言わんばかりに、苦笑いをヴァルカに向けた。


「ちなみに当日は私もダンジョンに同行します!」


 はいはーいと挙手しながら、エステルが会話に入ってきた。


「貴方、戦えるの?」


 疑わしそうな視線を向けるアンナに、トレーユ先生が説明する。


「彼女は記録要員だ。ダンジョンの内部、特に最奥の情報を記録し、持ち帰ってもらう」


「ということは、足手まといね」


 とアンナ。


「うっわ、貴方もナチュラルに刺してくる勢ですか……」


「何その勢力……」


「彼女の攻撃能力自体は、お前達と比べるとないにも等しいが、基本的な体術訓練は受けている。戦闘時は敵からの攻撃に反応して回避したり、皆の邪魔にならぬよう後方へ下がるなどの自己判断はできるはずだ。その点においては、C級程度と見ていい」


 と、トレーユ先生が付け加えた。彼女の言葉があるならと、アンナ達も納得する。


「ま、何かあったら、守ってやんよ! なんたって俺はB級討伐者だからな!」


 そうアルフォンスは得意気になった。

 そんな彼にアンナは半眼を向ける。


「調子に乗らないの。逆にいえば、つい最近までC級だったのよ?」


「ちぇ……ちょっとくらい喜んでもいいだろ?」


「貴方の場合、喜ぶで止まらず、調子に乗って油断に繋がりそうだから言ってるのよ」


「ガミガミガミガミと……お前は俺のカーチャンかよ」


「なんですって……!」


 ――と、額を合わせて睨み合うアルフォンスとアンナと尻目に、ヴァルカはバロックに近づいて問うた。


「……あんたもA級に上がったのか?」


「いや、私はB級据え置きだな。さすがにB級ともなれば、他人のおかげで勝てたような戦場にちょっと参加してた程度じゃ、上にはいけんさ」


「そういうものか」


「あのふたりには少し悪いが、恐らくB級までは昇級のラインが今は緩くなっているのだろう。戦争が長引いたせいで上位の人材が、少なくなっているからな。万全に経験を積ませてからってのが、もはや〝贅沢〟なのさ」


 それにはトレーユ先生が自嘲気味に笑みを浮かべた。


「よく状況を読んでるな。今はどの国の討伐者ギルドも、そういう動きをしている。まるで末期戦だ」


 ――なんて会話をしていると、


「おかげで、現役引退したロートルまで、引っ張り出される始末じゃ」


 突如聞こえたのは、トレーユ先生でなければエステルでもミーシャさんでも、アルフォンス達でもない女性の声。

 振り返ってブリーフィングルームの入り口に全員が視線を向けると、子どものような背丈の少女――ではなく、


(ドリス博士……?)


 まさかのドリス・アシュクロフトが立っていた。



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