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19ボトムズとハルク


 洒落にならねぇなぁ。

 ゴブリンが4匹。

 一方ワシは右目とあばらに傷を負っている。


 ろくな戦闘経験のないワシかどうこうできる状況じゃない。

 そう頭ではわかっている。

 わかっているのに逃げの一歩がどうしても踏み出せない。


 奴隷の子供の姿がちらつくのだ。

 足の裏に根がはえたように後退をゆるさない。


 身体がいうことを聞いてくれないなら闘うしかあるまい。

 どうすれば勝てる?

 正面からやりあえば手数で負ける。


 1匹ずつ相手できるように立ち回るしかない。


 できるか? ワシにそんな芸当が。

 やるしかない。できなければ死ぬだけだ。


 老いたワシの目にゴブリンたちを焼きつくさんばかりに命の炎が宿る。



「お互い大変じゃのう」

「ギィギィ!!」








 ――――もう3時間は闘っただろうか。



 いや逃げていただけか。


 陽は沈み、降りはじめた雨が横たわる3匹のゴブリンの血を洗い流している。


 左腕を残して手足を失ったワシは死を目前にしていた。

 再びゴブリンの手に戻った斧がワシの喉を狙っている。


 血を流しすぎた。

 身をよじる体力すらも残っていない。



「ついに死ぬのか」



 変わらず雨は降り続けている。

 ワシがいなくなっても世界はなに一つ変わらない。

 知っていた。

 ワシに存在価値などないことくらい。

 ありもしないものを探すふりをしていただけ。


 結局、奴隷の子供とおなじ。

 適当な理由をつけて『死ねない』と無理やり言い聞かせていた。


 そういえば奴隷の子供は下山したかのう。

 あれだけ教えたんだ明日からもちゃんとやっていけるだろう。



 ワシはあきらめて目を閉じる。

 思い出されるのは、この4ヶ月間のことばかり。

 名も知らない奴隷の子供との時間。



 斧が振り下ろされず、鈍い音がワシの目を再びひらく。



「いいつけを破ったな。お前さんは弟子失格だ」



 目をあけると鬼ではなく奴隷の子供がたっている。

 最後のコブリンは頭から血をながし倒れこんでいる。



「僕を騙したね」

「ああ、今回は見破れなかったろ」

「絶対に助けるから」



 薄く笑うワシを無視して、服の裾を破り止血がおこなわれる。



「やめてくれワシはもうダメだ。血を流しすぎだ」



 わかっていたんだろう、ワシに制止されると渋々諦めよった。


 寒いな。

 もう夏も終わりか。


 もう少し師匠をしていたかった。

 まだ冬の越し方も、気配の消し方も、鉱石の採り方も教えとらん。




 そうか。


 そうだったか。


 これがワシの生きた意味か。



 生まれ、捨てられ、殺し、見捨て、そんなワシの存在価値。



「やっとわかった。かっかっか、悪くない。……悪くない」


「師匠?」


「のう。名前を教えてくれんか」



 ワシの人生に意味をくれた子供の名前を知りたい。

 ワシを師匠と呼ぶ弟子の名前を知りたい。



「ハルクだよ」



 ワシがこの4ヶ月でなんどももらった言葉。

 生まれて初めて使う言葉。


 悲しさと嬉しさと悔しさが入り交じった声で、大切なものを扱うような気持ちでそっととりだす。



「ありがとよ。ハルク」


面白くなりそう!

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