第75話 婚約破棄したそうです
盗賊団の頭を説得するための準備が整うまで私は他の事業についての報告を受けて改良点などをシラーたちに指示する。
事務員として新しく雇ったドナルドやターニャやアダムも最近は仕事を覚えて作業のスピードが上がっている。
そんな時スミスがいつも通りブランとゼランの手紙を持って現れる。
「アリサ様。ブラント王太子殿下とゼラント王子殿下の手紙を持って参りました」
「ありがとう、スミス。返事を書くからちょっと待っていてね」
「はい。承知いたしました。」
スミスも相変わらず大変ねえ。
この数か月王都とワイン伯爵領を行き来するのが仕事なんて。
私はお茶を飲みながらブランの手紙を開封する。
『アリサから私に婚約者がいないかと聞かれるのは驚いたよ』
まあね、ハーレム持ってるか気になるし。
だが次に続く文面に私は驚愕する。
『婚約者はいたが既に婚約破棄をした。他に囲ってる女性もいない。私にはもう君以外この瞳に映る女性はいない』
はあ!? 婚約破棄!?
王太子の婚約破棄なんてそんな簡単にできちゃうものなの?
それにその人のことを好きだったのではないだろうか。
それにそんなことをすれば私が王宮に行ったら元婚約者に目の仇にされそうじゃない!
王太子と婚約していた人物だったら高位貴族だろうしさ。
私の脳裏に日本にいた頃読んでいた小説の話が浮かぶ。
大抵の場合、王太子と結婚するのは公爵家の令嬢とかが多い。
それを私のために婚約破棄なんてありえる!?
私は今度はゼランの手紙を開封する。
『アリサは婚約者のことを気にしていたようだが、私はアリサに出会って王宮に戻ってから婚約破棄したから気にしないでいいよ』
「ぶっ!」
私はお茶を吹き出す。
ゼランまで婚約破棄したですって!?
これじゃあ、私は悪役令嬢決定じゃない!
気にしないでいいってそんなわけないじゃない。
二人の王子に婚約破棄をさせた人物が王宮に行って歓迎されるわけはない。
そもそも自分は絶世の美女でもないし、単なるヒラ公務員だっただけなのに。
国王様や宰相様は何も言わないのかしら。
そこで以前のブランとゼランの言葉が蘇る。
『国王と宰相を黙らせる方法はいくらでもある』
そうだった。ブランとゼランの性格からして婚約破棄なんてたいしたことないに違いない。
でも私の立場も考えてよね。
私はまだこの世界の社交界にデビューしているわけではない。
つまり私のことを知っている貴族は少ないってことになる。
絶対に王都の貴族の間では私の噂をしていることだろう。
二人の王子を手玉に取った人間として。
ただでさえ王都に行くのは気が重かったのにさらに気が重くなったわよ。
ゼランの手紙には他に王都で祭りが行われていると書かれていた。
お祭りかあ。ワイン伯爵領ってお祭りをしているの見たことないけど祭りってやらないのかな。
領民も働いてばかりじゃ息が詰まるわよね。
それに祭りをすれば経済も動くし。
今度クリスに聞いてみようっと。
そもそもこの世界の祭りに興味あるしさ。




