第百三話 チャンスを逃した?奴の名は守!?
三話目。
「…無いだろうが!って言い切る前に吸い込むな!!」
喋っている途中で吸い込まれたので、こんな残念な事になってしまった。無念。
「…ん?あれ?」
周りを見渡すと、そこに広がっていたのは……
「変わってない?俺は確かに吸い込まれて…え?」
世界の歪みに吸い込まれる前と全く同じ光景だった。
後ろを確認するが、そこにはちゃんと歪みがある…あ、閉じた。
「って、ああああああああああああああああああああああああああ!!!???」
しまった!せっかく帰れるチャンスだったのに!!…いや、待てよ。実は吸い込まれて無かった可能性も……
…まあ、これ以上散歩を続けてもしょうがないし、さっさと帰
「あれ?リセス?なんでここに?」
「へ?」
ろうと思っていたら、向こうからリセスが出てきて声を掛けられた。あれ?でも、リセスってこんな口調だったっけ?
「何言ってんだ?リセスはお前だろ?そしてフラルみたいに口調を変えんで良い。」
「え?何言ってるのリセス?」
「噛み合わないな…」
「噛み合わないね…」
会話が全く噛み合わない。一体、どうなってんだ?
「俺はリセスじゃない。俺は守だ。」
噛み合わない会話に終止符を打つべく、俺は名乗った。
ん?何かアイツ、驚いたような顔してるような…
「…え?…私も守だけど…」
……ハァ?…ああ、ただ単に名前が同じなだけか。
向こうの守も同じように納得したような表情を浮かべている。どうやら俺と同じ結論に達したらしい。
「しかし、変わったこともあるもんだな~まさか同じ名前で、同じ人を知っているとは…」
「え?リセスを知ってるの?」
「ああ、お前みたいな顔した奴だろ?」
「え?…失礼な!確かに似てたけど、リセスは男だよ!!」
「何い!?マジでか!?あいつ女だと思ってた…」
ここに来て、衝撃の事実が明らかになったな…アイツ男だったのか…あれ?アイツ、自分で王女って言ってなかったっけ?
「…失礼なのはどっちだ?アイツ、自分で王女って言ってたぞ?」
「え?リセスは自分で王子って言ってたよ?」
「……噛み合わないな…」
「……噛み合わないね…」
一体、どうなってるんだ?…まさか…
「まさか、日本人で、名字は高壁じゃないよな?」
「え!?なんでわかったの!?」
「……俺も同じ名字だからだ。」
「………え?………ええ!?まさかの同姓同名!!??」
…………まさか…な…
「俊太、太郎、火太郎、光、移図離、ギーナ、フォルフ、フラル、キャビ、リセス、ギファード、ガーニャ、ルーマ…この名前に聞き覚えはあるか…?」
「……………なんで…知ってるの?」
守(もちろん俺じゃない方の)は驚いた表情で、呟くように言った。
「…ってことは…俺はやっぱり世界の歪みに吸い込まれたんだな…」
「!?」
そう、ここは俺がいた世界じゃない。俺はまた別の世界に来てしまったんだ…




