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カインサーガ  作者: サトウロン
炎の王の章
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炎の王編11

残りの魔力を全部消費し、炎属性の回復魔法をかける。

炎の精霊王にやられた傷が、治療され、痛みがひき、再生する。

回復魔法はもともと得意ではないが、無限魔力をもってすればなんとか全快レベルの呪文は放てる。

そのかわり、カインの魔力はすっからかんだ。

これ以上、魔力炉から魔力を吸い出せば暴走するか、気絶する。

魂の魔剣を構え、カインは魔法の師であるマーリンの講義を思い起こしていた。


曰く。

魔法を構成する要素は六点あるという。

属性。

分類。

威力。

範囲。

時間。

消費。

属性は、地火風水闇の属性のこと。

分類は、杖符剣杯の効果のあらわれかたのこと。

そして、威力、範囲、時間の組み合わせが魔力消費量に関係している。

範囲や、効果時間をあげれば威力が落ちる。

まあ、それを駆使して攻撃力0の緊急回避時にぶっ飛ばすだけの呪文を放ったりしているが。

どうやら、魂の魔剣は精神力の類いを糧にしているようだ。

魔力ではなく、精神力に依存しているだけであとは魔法とほぼ同じ法則で効果を発揮している。

故に、その講義の内容も応用できるはず。

この時、カインが閃いたのは範囲拡大ではなく、効果時間の延長だった。


魂から何かが急激に抜かれ、足元がふらつく。

そのぶん、魔剣は嬉しそうにギラギラ輝いている。

「これで終わりにしてやる」

カインは呟く。

今までの炎の王に対する全ての感情を解き放つかのように。

魔剣を肩に背負い、一気に降り下ろすッ!!


放たれた剣閃は、三メルトほどの長さの三日月の形だ。

一直線に、炎の精霊王へ向かうーーが、炎の精霊王は軽やかに左へ跳躍、剣閃を回避。

「だが、それは読んでいた」

カインの額に、一筋の汗。

放たれた剣閃を制御し、その動きを変える。

「我が魂の剣よ、その刃より放たれし力よ、その主の意志に従い、廻れッ!!」

放たれる前に調整され効果時間が延長している剣閃は、避けた炎の精霊王を目掛け、回転し、直径三メルトの衝撃弾となって突き進む。

点ではなく、線でもなく、面の攻撃が炎の精霊王に直撃!!

もちろん、炎の精霊王もただ受けたわけではなく、全力の防御行動をとっている。

「それも、読んでいた」

カインの意志は、剣の衝撃弾に乗り移っていた。

今までの剣閃が攻撃力100だとしたら、衝撃弾は50程度しかない。

しかし、持続時間は五倍。

瞬間的な火力を削り、持続ダメージを上げる。

それが、カインの意志だ。

ムンダマーラを一撃で破った威力の半分。

それを五倍。

直撃した今、炎の精霊王は2.5倍のダメージを受けている。

蓄積したダメージは、その防御を削り、やがて突破する。

炎の精霊王は、まだ立っている。

けれど、それは立っているだけだ。

全身の炎は全て消え去り、かつてその象徴だった深紅の鎧は影も形もない。

それは、ラグナ・ディアスの姿だった。

炎の王に変じる前の、その姿の影。

ラグナは笑った。

声なき声で、カインに向かって。

千年の戒めから解き放たれてーー。

そして、燃え尽きた炎の王は灰となって消えた。

その、欠片すら残さず。


全身を襲う倦怠感に抗い、カインは立っている。

復讐は終わった。

目的は果たしたのだ。


「まだ、終わっていない」


声を発したのは黒騎士だ。

つかつかとカインに近付き、その体を支える。

「終わっていない、だと?」

かすれた声でカインは聞く。

「ああ。よく聞けよ」

黒騎士はここにいる者全てを見渡す。

「カイン、アルフレッド、アズ、ホルス、ルーナ、カリバーンーー今、この時より一年後。魔王レイドックが復活する」

「魔王がーー?」

アズの呟き、黒騎士が本気なのはわかるが信じられない。

それは皆、同じようだ。

「これは予言やなんかのあやふやなものではない、事実だ。最後の封印であった炎の王が倒れたが故のな」

「それは、俺のせい、か?」

カインが、炎の王を倒したことで魔王が復活する。

「いや、ラグナの、炎の王の封印は衰えていた。いずれ、封印は解けていただろう。既に予兆はあったはずだ」

蛇の目の男、ムンダマーラのことをカインは思い出す。

そういえば、奴は魔王の復活について何か喋っていた。

「その復活の前日、十人集めて魔王の拠点に乗り込み、復活を阻止する。その参加者には最低でもムンダマーラを一対一で倒す実力を求める」

「えらく、無茶言うな」

思わず声を出したのはアルフレッドだ。

「魔王が復活すれば、おそらく一年以内に大陸は壊滅する」

「そこまで、なのか?」

「そこまでなのだ、ホルス王よ。端的に言えば、フェルアリードが作ったそなたの父上が素体となった魔物が千体単位で襲ってくるという具合だ」

その場にいなかったアズ以外が、絶望的な顔をする。

一体でも苦戦した相手が、千体とか。

その状況に比べれば、ムンダマーラを倒せるくらいのが十人のほうがハードルは低いだろう。

「では、一年後にまた会おう」

その言葉を最後に、黒騎士は消えた。


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