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カインサーガ  作者: サトウロン
炎の王の章
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炎の王編09

黒騎士の問いにアズは思考する。

属性の相性は、三種類。

強くする。

弱くする。

打ち消し合う。

ん、ちょっと待って?

「ねえ?闇属性はどうなるの?」

「闇か。闇は全てを飲み込む。お前も経験があるだろう?」

「う~ん。飲み込む?飲み込むね~いまいち具体的なことがわからないなぁ」

「ルイラムに行くとき結界船上で何があった?」

渦巻く記憶が、一つの形をとる。

緑の戦士、おそらくは風の王か、その眷族。

それと激しい戦いを繰り広げ、アズが四体同時召喚で生み出した闇空間で倒した。

「そうか、闇は全てを飲み込む、そういうことか」

「まあ、今は関係ないがな」

前提条件は揃った。

火属性にとって。

強くするのは風。

弱くするのは地。

打ち消し合うのは水、だ。

炎の王の攻撃を、打ち消している様子はない。

つまり。

「手のひらに地属性の盾を張っている?」

「そうだ。正確に言うと手のひらに魂の魔剣を小型で展開し、その上に地属性の殻をかぶせている。どちらも属性が異なるだけで今まで奴がやってきたことの合わせ技に過ぎない」

ただのロングソードに炎をまとわせて、炎の魔剣を作るのと同じだ。

「でも、そしたらカインの炎の魔力も弱まるんじゃ?」

アズは懸念を述べる。

黒騎士は問題ないかのように答えた。

「奴はもう一つ魔法を使っている。属性シフトの魔法だ。これによって、赤の魔力炉から吸い上げた魔力を地属性に変換して盾にすることが可能になる。それも半永久的にな」

だが、恐ろしく効率は悪いがな、と黒騎士は笑う。

「効率悪いって、どのくらい?」

「マステマに庭の草取りを頼むくらいだ」

「的確すぎて解りづらい」

要するに果てしなくもったいない、ということだろう。

無限魔力があるから成立しているだけだ。

そういうのも含めて、黒騎士は笑っているのだろう。


「強くなっている」

カリバーンの呟きに、アルフレッドは笑う。

「そりゃあな、命をかけて実戦を生き抜いているからな、奴は」

「それは誰でもそうだろう。貴公も私も」

カリバーンの言葉に、アルフレッドはニヤリと笑う。

「俺の情報だと、アーサー・カリバーンはグラールホールド壊滅のあと行方不明になっているはずだ。今まで何をしていたのかな?」

「見た目や言動以上に、貴公が切れる人物だということは承知している。下手な芝居はやめることだ」

「カインには通じていたぜ?」

「あれはーーあれで切れる男だが、目的が絡むと視野が偏る」

「いい得て妙だな」

「まあ、今さら隠し事をする気もない。私はグラールホールド壊滅のあと、炎の王、黒騎士とともに活動していた。その内容はーーまあ、知っても意味がないから言わないが」

「情報以上の答えはない、か」

「それよりも奴等、ずいぶんと楽しそうだな」

カリバーンの指摘どおり、カインの顔には笑みが浮かび、炎の王も割れた兜の中の顔が笑っている。

「自分では否定しているようだが、あいつもバトルマニアだ。もっと自分に素直になればいいのにな」

「誰もが、本当の自分を認めることができるとは限らない。特にあの年頃だとな」

「そう、だな」

それきり、二人は会話を止め、カインと炎の王の戦いを見ていた。


「私は悔しいです、お兄様」

「奇遇だな、私もだ」

ホルスとルーナ、テリエンラッドの兄妹はカインと炎の王の戦いを見ながらそんな会話をしている。

「私は、いつの間にか追い付けないほど開いた力の差が悔しい」

「国王だなんだ、と肩肘はってここまで来たが、結局奴に助けられた。それが私は悔しいのだよ」

「私は、あの人の隣に立ちたい」

「それは、伴侶としてか?」

「わかりません。女としての私はそうありたい、と思っているかもしれません。けれど、冒険者としての私は戦友として隣に立ちたい、と思っています」

「ずいぶんと、難儀な話だ」

ホルスはため息をつく。

ルーナが王家のために、他国に嫁ぐことはなくなった。

それは、ホルスから見ればラーナイルの仮想同盟国が一つ減ったことを意味する。

だが、それでもたった一人の血縁であるルーナが幸せになれるのであればーーそれでいい、と思ってしまった。

ラーナイルは、私の代で終わるかもしれん。

まだ、先の話ながらホルスはそこまで考えていた。


各人の話、思考は興味深いものもある。

だが、今のカインと炎の王にとってそれは雑音に過ぎなかった。

世界には二人しかいない。

余人の、黒騎士ですら預かり知らぬところではあったが、炎の王ーーラグナにはある劣等感があった。

自分が一番弱いのではないか、という不安だ。

炎の王となってからは、それは思考の隅に追いやられてはいたが。

それでも、忘れたことはなかった。

しかし、見るといい。

目の前の青年は、カインはその傷を乗り越え強くなって現れた。

私が、そう導いた。

すでに、私と同じ場所に立ち、私に手傷をおわせてすらいた。

いずれ、私を越えていくのだろう。

彼にならば、託せる。

自分たちが残した災厄と希望を。


決意を固めて、炎の王は吼えた。

今こそその真の力を出す、と決めたから。


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