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第10章  暗示って効果あるの?

 翌日。まだ宿舎の部屋にいるとき、シエルは昨日カトリーヌとミューズが話した内容を聞かされた。

 説明を聞いたシエルは半信半疑だ。

「確かに…そうしてもらえた方が嬉しいけどさぁ」

「シエルさんはとても素直な性格でいらっしゃるため、催眠術等の効果は大きそうなのですが……」

「余計なお世話だよ」

 ミューズにシエルは不機嫌そうに言い返した。



「この暗示のリスクとしては、暗示が解けた際のショックも考えなければなりません。

 それも考慮に入れてのこととなります」

「……ミューズ。あまりお兄ちゃんを怖がらせないで」

 カトリーヌとしても、それは昨日に散々聞かされてことだ。

「はい、すみません。でもこれは私たちとしてもリスクとなります。

 シエルさんの危機は私たち自身の存続にも関わることですから」

 シエルは気がついた。そう。自分は3人分の命も背負っているということ。

 自分の失態は、このミューズやアンジェ、ロウの危険にも直結する。

「…大丈夫。やろう。僕も頑張るよ」

 カトリーヌは兄の変化に驚いた。

 成長はこんなところにも出ていたとは――。それはすごく嬉しくて――すごく寂しいことではあるけれど。



「では」

 シエルの気持ちが固まったところで、ミューズは自分の額をシエルの額にくっつけた。

「…っ!!」

 いきなりの出来事に、シエルは目を見開き、心臓の鼓動が爆発的に跳ね上がる。

「シエルさん、大丈夫…うまくいきます…落ち着いて……」

 優しい輝きを宿す2つの青い瞳が、シエルの琥珀の瞳を見つめる。

 すると不思議と心臓の鼓動が序々に落ち着きを取り戻し、シエル自身の緊張も、和らいでいくのがわかった。

「そうです、シエルさん。大丈夫です」

 ミューズはにっこりと微笑んだ。

 代わりにシエルの頬が赤く染まったのだが。



 カトリーヌは面白くない。否。ちょっと――心配している。

「大丈夫ですよ、カトリーヌさん」

 アンジェに明るくそう言われると、カトリーヌもイライラしている自分が馬鹿らしくなってくる。

「でも…暗示ってどうかけるの?」

「……さぁ?」

 笑顔のまま、アンジェは首を傾げた。

 カトリーヌはアンジェに聞いたことを少し後悔した。

 この子なにも考えていないのだろうな――と。



◆◆◆



 研究室に着き、いつもの訓練を始める前。

 シエルは大きく深呼吸をした。「大丈夫」と自分に言い聞かせる。何故なら――。

 


 外に待機していたアンジェがシエルの視野が送られてきたことで、翼を出現させ、『リュケイオン』の上空へと舞い上がる。



「……あれ?」

 シエルが目を見開いている。

「…あら?」

 見守るジーウも驚いた。



 シエルが全然怖がっていない。シエルも全然怖くないのだ。



「じゃ、もっと建物の傍をスレスレに飛んでみますね」

 高度を下げ、アンジェは3000年前の街並みが残る「旧ライザ市街」の建物の間を自由に飛び回った。



 ビルと言われた高層の建物の間。石畳が並ぶ中世と言われた時代の面影が残る民家の上。

 緑に覆われた丘陵の上空。

 シエルは初めてそれらの光景を恐怖を無しに見ることが出来た。



 3000年前もこんなに美しい世界があったのか――。

 溢れる感動に感激し、涙が溢れそうになった。

 高所恐怖症であることを心配しなくていい――という喜びより、今はその感動で胸が一杯になる。



「本当…様にならない奴だよねぇ……」

 大泣きするシエルの姿に呆れ気味のジーウの横で、カトリーヌが嬉し泣きの涙を我慢していたことは――ミューズ以外気がついてはいなかった。


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