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初めての村について、お仕事を頼まれた


 体感にしておよそ三キロで村についた。


 さっきまでいた廃村と造りはあまり変わらないが、こちらは壊れていない木の柵で、村が囲われている。

 イノシシ除けだろうか。こんな柵くらい穴を掘って下から侵入されそうだが。


 こぢんまりとした畑を耕していた女性がこちらを見、手にした鍬を置いてこちらに歩いてきた。女性も男性もこうして見ると着ている物などほとんど差がなく、質素なものだ。

 一緒にいた男が、泉が復活したことを話すと、驚きながらも嬉しそうな様子で、小走りに去っていった。他の人に伝えるのだろう。


 よそからの人が珍しいのだろうか。家の影から、子供が四人かたまって、こちらを観察している。


 家は十五軒くらいか。村とは聞いていたが本当に小さい。家を切り盛りしていた経験が、警告する。長居すればここの人たちの負担になりそうだと。


 女性はさらに二人の女性を連れて戻ってきた。子供の人数も入れると十人の人に注目されていると考えたとたん、また体中が寒くなる感覚に襲われた。


 駄目だ。


 水筒の水を一口飲む。こんなことではアッという間に水が無くなりそうだ。



 気分がすぐれないことを伝えると、猟りに出て家主が留守の家へ連れて行ってくれた。これくらい小さい村だと皆、親戚みたいなものなのだろうか。

 床はほとんどが土間。分厚い何かの繊維を束にして編んだ絨毯じゅうたんらしきもの。いや、ほぼムシロといったほうがよいか。ベットがまともだったのは幸いだった。


 年配の女性が交代で付き添ってくれた。

 親切というより、興味のようだ。どこから来たとか、聞いてくるが答えようもない。会話の中で、さらに情報を得ることはできた。


 この村はテグウ村。


 彼女たちの名前は、テグウ・ネとテグウ・ナ。日常では「ねっちゃん」とか「ねのばあさん」とかいう感じらしい。そういうニュアンスは、なじみの感じに近い。


 仮に私がここに住みつくとなると、「テグウの神官様」と呼ばれる。例えどこの誰でも神官になればそれまでの名前を捨てるらしい。

 では、お遍路途中の神官さんはどうなのと聞くと、誰でも「巡礼中の神官様」なのだそうだ。


 ムムム……少し、自分探しの旅が遠のいた気がする。


 ナさんが平たいパンと竹のコップに入れた水を持ってきてくれた。申し訳ないし食べなくても平気だからと断ると、すごく尊敬した目で見られた。

 え、実はパンが惜しかったのと思ったが、そうではなく、飲食しなくても、周囲の魔素を取り込み巡らせて活動できるのは、信力の強い神官か、ランクの高い冒険者だけなのだそうだ。


 いるんだ、冒険者。


 少し心が躍る。


 髪を短く切り冒険者として大活躍、いや、無理だな。私にはアナグマさえ殺すに苦労するだろう。まずは、自分のできることを頑張ろう。それが、ベスト。


 結局はその食パンに似た味の平たいパンをいただき、水を飲んだ。すぐにあの泉の水と同じものだと分かった。この村にも回復の泉があるのかとたずねると、もちろんある、是非とも泉の様子を見てほしいと言う。


……まあ、行って見るくらいなら。


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