神官だからお祈りしてみた。すごい効果にびっくりだった
家に囲まれるように小さな石積みの円がある。前に見たのと同じだ。上に大きな木の板が、かぶせてある。中の水を守っているかのようだ。やはり、そこだけは草をきれいに除き、板の上にはきれいな色の石や花が供えてある。
ネさんとナさんが二人がかりで板を除くと、泉の水が見えた。青く輝く神秘的な水。しかし、少ない。確かにこれでは蓋をしておかないと蒸発して無くなるかもと思う。
普段は川の水を利用しているらしい。
もともと、この村の人たちはあの廃村に住んでいた。泉は十分な力を持ち、泉の周りに集落は、七つもあったそうだ。しかし、水は枯渇した。他の集落の人々は遠くの町へ引っ越していき、この村の人はあきらめきれず、一番近くの枯渇寸前の泉にしがみつくように住みついた。
ネさんとナさんが何を期待してるか、理解した。私が本当に神官なら、これは頑張るところじゃないか? 少しでも効果が出ればいいのだが。まずは心の中で祈ってみよう。目を閉じ、手を合わせ、お祈りの姿勢。
神様、お願いします。
泉の水が豊かになみなみとありますように。
水がなみなみと、なみなみと、溢れ出すくらいになみなみと。
「神官様!」
ネさんの声で、閉じていた目を開けた。
青く輝く水がブーツの底を濡らした。水は溢れ出していた。水だけれど水じゃない。水はそれ自体が輝いていた。天然ライトアップ水。
うわあー、綺麗―、なんか幻想的―。みず出たわ。できるんだ、こんなこと。
そりゃあ、「様」づけで呼ばれるわ。納得。そういえばアグネさんの手紙にも書いてあったわ。「あなたはこの世界にとって必要な方」
だろうなあ。神官の仕事の重要性よく分かったわ。
呆けたように、その光景を見ていた。
日が傾き、夕焼けがあたりを染める。それにも、負けないくらいの青い輝き。
ネさんとナさん、同じように呆けているかと思ったら違った。子供たちを呼び、すぐに大人たちを集めてくるよう指示。村で唯一の石積みの集会場らしき建物を、手分けして解体。「石以外のつなぎの部分だけ自然に還れ」で、簡単に石が外れてくれるから、何というエコ。
子供たちに呼ばれ次々集まってくる大人たちの反応は皆同じ。まずは口を開け呆ける。しばらく、固まった後、我に返って動き、石ブロックを、泉の周りに一回り大きく積み上げてゆく。
早い、余計な会話も動きもない。異世界人のスペックの高さを垣間見た。せっかく、溢れ出している水をこれ以上無駄に漏らすまいと、みんな真剣だ。
手伝おうとすると、「とんっでもございません」と、きっぱり丁寧にお断りされた。
水筒に水を補充して、邪魔にならないよう猟師の家にひきあげることにした。
人が怖いくせに、相手にされないと少し寂しい。




