魔素だまり攻略法を思いつく(読み飛ばしても〇)
「誤算だった」
「さすがにこれは想定外でしたね」
うっすらとした、黒い靄のような前で、立ち往生をしていた。
巨大なオーロラのような、しかし黒く不気味な空気のカーテン。
巨大な魔素だまりとも言える。その向こうが竜のテリトリーと分かっていても、踏み込むことは不可能だ。
「アグネさん達はどうやって、この向こう側を訪れたんでしょうか?」
感覚でいうと、水の中に顔を突っ込むのと変わらない。
一時的には我慢できても、ずっとはとても無理。そして、その巨大さ。
散らしてもきりがない。
「仮に、これをすべて散らせたとして……」
竜が住む広大な土地一つ分の魔素。
散った魔素は何処まで行くのか。
エルフや獣人族・人族の暮らしを変えてしまわないか。
魔素を失った竜はどうなるのか。飢えないか。飢えた竜はどうするのか。
「いやいや、無理」
ちらりと、隣で点滅している精霊を見る。
魔素をエネルギーとして利用……。超巨大なエネルギー……。
「いやいやいや、無理」
不吉な結果しか予測できません。
立ち往生である。
岩陰に野営の準備を始めた。
火をおこして、食べ残しの肉を焼き直す。
「ミケさん、飲食不要の生活って、どう思います?」
うまそうに肉にかじりついているミケさんに聞いてみた。
「便利だ、とは思うが。俺は今のままが良い。生きるのに多少不自由でも、食うのは楽しみでもあるからな」
「ですよね」
その楽しみをコピペだって知っている。
「過保護な神様の手を離れても、この世界はけっこうたくましく廻っていますよね」
「苦労しても、楽しみがあったほうがいいからな」
「もう、神様はいなくなったのでしょうか」
「システムとしては必要かもな」
システム、この世界を廻す。虫とか細菌とかの代わり。
「でも」
ミケさんは少し寂しそうに言った。
「どこかで、俺たちのことを見守ってくれていると、思うほうが気分的には良いな」
「そうですね」
それも分かる。
-・・・-・・・-・・・-
明け方近く、ゴソゴソという音で目が覚めた。
知らぬ間に眠っていたらしい。
すわ、魔物かと、思いきや、地面の穴から上半身を出しているアナグマと目が合った。
隣で寝ていたミケさんが目を覚まして、状況を把握し、アナグマを狩ろうとナイフに手をのばした。
それを素早くコピペは制止した。
「待って、見て」
アナグマは穴から這い出して、大きな下半身を振りながら、別の穴に向かって走った。
何故狩らないというように、ミケさんがこちらを見た。コピペがアナグマを指さした。
「魔物化していない」
魔素だまりのほうに繋がっている穴から出てきて、魔物化していない。そして、出てきた穴はアナグマが掘った穴ではない。
もっと古い。
アナグマはそれを利用していただけだ。
「地面の下には魔素だまりがない」




