アナグマ発見。元の世界に似ていると安心するのはなんでだ?
前方から物音が聞こえてきて、緊張するが、よくよく見ると、地面から上半身を出してこちらを警戒しているアナグマがいる。細長い顔を上下に振って、あっちへ行けと、威嚇している。
かわいい
つい、ほっこりした気分になってしまう。
しばらく見ているとあきらめたのか地面から這い出して、ずんぐりとした下半身を振りながら、少し走り、また別の穴に入っていった。
この場所を覚えておこう
アナグマは食べると美味しい動物だ。あの、可愛らしい生き物を殺すのは嫌だが、いつだって、最悪の手段を考えておかないといけないだろう。
初めて人工的な何かを見つけた。石で円を描くように囲われている何か。
物自体はかなり古そうだが修繕したような跡がある。周りの草もむしられていて、小さな花が咲いている。
墓か、と思ったが、池か泉の跡のようだ。水が僅かだが残っている。本当に賭けだなと、自覚しながらも、水筒ですくって、一口、口に含んでみる。おかしな味はしない。しばらく腹が痛くならないか様子をみる。
日が傾き、戻るかここに留まるか。
不自然なくらい疲労感がない。お腹もすかないし、のどの渇きもない。それに緊張しているのか、眠気もこない。明らかに人の手が入ったこの場所で、誰かがここに来るのを待つという方法が一番に最善だという気がした。もちろん、何日も来ないという可能性だってある。
なぜかな、ここは安全な場所だという気がする。
私はそれを知っている、ような気がする。
それにここで何か私の仕事があったような気がする。
それは、本当に大切な仕事だったような気がする。
「落ち着け、私」
考えてみればアグネさんに迷惑をかけた挙句、何もかもをぽいっとした私である。そんな大層な仕事をしていたはずもない。しかしながら、今の私はちょっと違う。
「この泉を復活させてみようじゃないの」
こんな山の中までわざわざ足を運んで掃除や修理をするのだから、それなりに大切な物だろう。後から考えたらこれは「遺跡保存」の、可能性もあったのだが、この時は、それが正しいことだと思いこんでしまったのだ。