背は低いけど雰囲気がカッコいい人に会った
木の根元に張り付くように体を小さくかがめた子供がいた。似たような技を使って木に擬態していたのだ。全身、頭まですっぽりと、茶色の皮で覆っている。
目の部分だけ、見えている。じっとこちらを見て
「神官様だね?」
と、聞いてきた。直感的に分かった。背は低いが子供ではない。目は大きく澄んでいる。
「泉の回復に来たのかね?」
直球で、きた。
こちらは慎重に答える。
「どこまで、力が及ぶかわかりませんが、できる限りの、努力をするつもりです」
「先に立って歩きたまえ。道を指示しよう」
相手も慎重だ。後ろには立たせてくれない。前を歩かせ、目を離さない。緊張してきた。一言、ことわってから、水を飲む。
ゴクリ。
途中で、珍しくも道の真ん中に水たまりがあり、それを飛び越そうとして、後ろからコートの襟首をつかまれ、ぐえっとなった。
何なんですか、もう
「見れば分かるだろう」
分かりません
「スライムだ」
え、本当に? あの有名なアレ?
偽子供はごそごそ何か取り出した。見ると、ネズミ。ひええ
少しだけ離れた場所に放り出す。水たまりはフルフルと震えた後、ネズミのもとへ素早く移動。
「行くぞ」
流石です。師匠とよんでいいですか?
必要最小限の会話しかなかったが、道の端に隠れるようにひっそりと立つ、立て札のところまで来て、ほっと一息ついた。
「ここからは、めったなことでは魔物は出ない。話しても大丈夫だ」
あ、そういうことだったのか
「エーでは早速、質問が」
「なんだ」
「最初に出た気味の悪いサルみたいな」
「ゴブリンだ。巡礼者のくせに、なんで、ゴブリンを知らない」
「ゴブリン! あれが有名なゴブリン!」
「なんで嬉しそうなんだ。お前、少し頭、変なのか?」
「いえ、実は記憶を無くしていてですね」
「嘘くさいな。ヤバい奴はそんなことを言ったりする」
ですよね……
「手紙を見ていただけると分かりやすいのですけど」
「やめろ、懐に手を入れるな。必要なら、こちらが出す。手を大きく上げて後ろを向け」
本当に慎重。
言われたとおりにする。偽子供は、コートを外側から探り、手紙・水筒。ナイフを探しあてた。
「後で返す」
と、一時、没収。
しっかり十歩離れた場所で待機させられ、彼が封筒から手紙を取り出すのを、見ていた。
「字、読めますか」
「馬鹿にするな」
失礼しました……




