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初の魔物が弱かったので馬鹿にしたらひどい目にあった


 途中から、ある確信を持って、けもの道を歩いていた。


 おそらくだが、こちらに、例の泉がある。間違いない。神官にはそういうレーダーのようなものが備わっているのかもしれない。でないと、こんな道なき道を、巡礼なんてできないだろう。

 そうであるに違いない。


 出来れば、人里につきたい。しかし、テグウ村の二の舞は御免だ。

休憩するたびに、思い返していた。何が悪かったのか? 場所が変われば人の考え方だって変わる。それに対して警戒心が足りていなかった。

 それでもだ。考えすぎたら何もできない。


 自分の対人恐怖体質について、思い至った。

 高スペックな信力。しかし、対人恐怖症。テグウ村のようなことがかつてあったのではないか、そのせいで、今、こんなことになっているのではないか。


 アグネさんの手紙には書かれていない。


 歩いても歩いても、木と岩と草しかない。途中、竹を見つけたのは良かった。ナイフで切り取り、杖、兼ヤリを作る。


 その後、初の魔物との遭遇。毛の無いサルのような何か。ぎゃあぎゃあ言っている。弱そうでよかった。

「神罰が下るぞー。怖いぞー。怖いぞー」

と脅して、竹やりを振り回すと、悔しそうに睨みつけ去っていった。ふふん。


 ぎゃあぎゃあ、サルもどきリベンジ。今度は三匹である。

 歯をむき出して飛び掛かってくるので、バットを思い切り振る要領で、フルスイング。一匹、吹っ飛んでいった。もう、一匹は足元にいたので蹴り上げ、最後の一匹を睨みつけると、再び、悔しそうに去っていった。ふふん。


 ぎゃあーぎゃあー、多くの声がこだまをつくっている。

 いや、ちょっと待って。この声はヤバい。何匹来るの。今度は何匹連れてきたの。見回し、ちょうど人の背丈の太い木を見つける。途中で折れ、それでも枝を伸ばしている。これに身代わりになって、もらおう。


 これは私、これは私。

 そして、私はただの岩。


 魔物にもこの技が通用するといいのだが。

 ギリギリ、間に合ったらしい。木の陰から次々と現れたサルもどき、現れると同時に飛び掛かってくる。哀れな木に向かって。


 ぶら下がり、噛みつき、引っ掻く。引っ張って、逆に木がしなってしたたかに当たり、攻撃されたと、怒って歯をむき出す。混戦模様、数が多すぎて、相打ちが多い。木もボロボロ、サルもどきもボロボロ。 しかし、気が済んだのか、ギャギャギャと鳴いて、去っていった。


 助かった。これから、あのサルもどきを見かけたら最初からカメレオン策戦を実行することにしよう。本当にヤバかった。


「すごいな」


 すぐ近くで声がした。

 ぎょっとした。


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