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異界と竜の逆ハーもの  作者: 夢山 暮葉
エピローグ
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エピローグ・空を仰ぐ日


 その夜は、天気が良く空気も冴えていて、素晴らしい星空を見上げる事が出来た。

 地上の灯りの殆ど無い山奥だから、夜空に瞬く星々を余す所無く捉えられる。一人、寝間着のままジャケットを羽織って庭に出て来た唯華は、冷たい空気に晒され一気に冷えゆく手先と顔を擦り合わせながら空を仰いだ。

 地球で広く知られていた星座は何処にも無い。いくら“テルニア”といえども、母星から遠く離れた星々を操る事までは、流石に不可能だったようだ。けれども、星座そのものやそれに結びついた文化──例えば、星座占いとか──等は有るらしいから、今度はその辺りについても調べてみたいな、と彼女は思う。


「……今日は本当に、綺麗な星だな」


 そう呟けば、一緒に白い息も吐き出された。月も大分欠けてるから、一層星の明るさが際立つ。もしかしたら、あの中に地球を照らしていた太陽も有るのかもしれない、なんて取り留めの無い考えが脳裏を巡る。

 もうどう足掻いたって、この手は故郷には届かない。素粒子宇宙の物は多重レイヤー構造宇宙では存在する事すら叶わず、その逆もまた然りである故に。

 懐かしい、と思う。帰りたい、と思わない訳が無い。けれども、それらの想いが彼女の心を過度に乱す事は、もう無かった。何故ならば、ここという第二の故郷と、何よりも大切な人たちを得る事が出来たから。


「うん……大丈夫」


 地雷として埋まり続けていたそれを踏み抜いても、もう爆発が起きない事を確認し、唯華は安心した様にひとりごちた。同時にびゅうっと鋭い風が庭に吹き込み、それに体温を奪い取られぶるりと震え上がる。

 あまりここに長居しては、風邪を引いてしまうやもしれない。いや、彼女は一応“テルニア”なのだから、そういった病気の類いとは無縁になっているのかもしれないが……今度、その辺の詳しい仕様も聞いておいた方が良いだろう。

 館内に戻る前に、もう一度だけ空を見上げ、その星模様を目に焼き付けておく。そうして小さく足音を立てながら建物の中に戻って、外とは打って変わって暖かな空気に、ほう、と安堵の溜め息を吐いた。

 そのまま足早に自室に戻り、ジャケットを脱いで寝台に腰掛ける。そのままぱたりとシーツの上に倒れ込みながら、彼女は明日の事を考え出した。

 きっと、明日も良い日になる。明後日も明々後日も、そのまた次の日も、悪い日にはならないだろう。そんな確信が持てる。

 テナが居て、白矢も居て、ムゥが居る。皆唯華を好きでいてくれて、唯華も皆の事が好きだ。異世界での日常も、そんな親愛なる人外たちと共に歩んでいけるのだから、前以上に良いものに出来るだろう。


(……明日が、楽しみだな)


 そう念じながら、唯華は布団を被って目を閉じた。そして、素早く眠りに包まれていく意識の中、彼女は更に遠い未来に視線を向ける。


(生きていこう。……わたしが、死ぬ日まで)


 あくまで人として、『錦野唯華』として生きる道と、その道程の終わりを、閉じた目蓋の中で静かに見据えた。その道は穏やかな希望の光に照らされている。

くぅ〜疲れました! これにて本編完結です!


ここまでお読みいただいて下さった皆様、本当にありがとうございました。

皆様の応援のお陰で、無事完走する事が出来ました。

完結させて、まだ色々と書きたい事は有りますが、それはまた別の場で綴ろうと思います。

それではまた、この究霊亜夢讃の次回作にて。

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