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日本の進攻とたたかう方針、方法および前途 (一九三七年七月二十三日)

 一九三七年七月七日、日本帝国主義は、全中国を武力で併呑へいどんしようとくわだてて、蘆溝橋事変をひきおこした。全国の人民は、日本と戦うことを一致して要求した。蒋介石は事変発生後十日もしてやっと廬山で談話を発表し、対日抗戦を宣言した。これは全国人民の圧力によると同時に、日本侵略者の行動が中国におけるイギリス、アメリカ帝国主義の利益と、蒋介石の直接代表する大地主・大ブルジョア階級の利益に重大な打撃をあたえたことにもよるのである。だが、この時でも、蒋介石政府は、依然として日本侵略者と交渉をつづけ、日本侵略者と地方当局とのあいだでとりきめたいわゆる平和的解決の方案さえうけいれた。そして、八月十三日、日本侵略者が大挙上海に進攻し、中国東南部における蒋介石の支配的地位がどうにも維持できなくなったとき、はじめて、やむなく抗戦を実行した。だが、その後、一九四四年にいたるまで、蒋介石は日本侵略者との秘密裏の和平交渉を、終始やめたことがなかった。抗日戦争の全期間、蒋介石は「ひとたび戦端がひらかれれば、土地に南北の別なく、人に老若の別なく、なにびともみな国土をまもるために抗戦する責務がある」というかれの廬山談話のなかの言明を完全に裏切って、人民総動員の全面的な人民戦争に反対し、抗日には消極的、反共、反人民には積極的、という反動政策をとった。毛沢東同志がこの論文でのべている二つの方針、二つの方法、二つの前途こそ、抗日戦争における共産党の路線と、もう一つの蒋介石の路線との闘争をあきらかにしたものである。




 一 二つの方針


 中国共産党中央委員会は、蘆溝橋ルーコウチァオ事変〔1〕の翌日、七月八日、全国に抗戦をよびかける宣言を発表した。宣言ではつぎのようにのべている。


 「全国の同胞諸君。北平ペイピン天津ティエンチンがあぶない。華北があぶない。中華民族があぷない。われわれの活路は全民族による抗戦の実行以外にはない。われわれは、進攻してきた日本軍にただちに断固抵抗するとともに、あらたな大事変にただちに対処する準備をするよう要求する。全国のすべてのものが、上下の別なく、日本侵略者と和睦わぼくして一時の安泰をもとめるいかなる考えをもただちに捨てさるべきである。全中国の同胞諸君。われわれは、馮治安フォンチーアン部隊の勇敢な抗戦を称賛し支持すべきである。われわれは、国土と存亡をともにするという華北当局の宣言を称賛し支持すべきである。われわれは、宋哲元ソンチョーユァン将軍に、ただちに第二十九軍〔2〕の全部隊を動員し、前線におもむいて応戦するよう要求する。われわれは南京の中央政府につぎのことを要求する。第二十九軍を確実に援助すること、また、ただちに全国民衆の愛国運動の禁止を解除し、民衆の抗戦意欲をたかめること、応戦準備のため、ただちに全国の陸海空軍を動員すること、後方をかためるため、ただちに中国国内にびそんでいる民族裏切り者、売国奴および日本侵略者のすべてのスパイを一掃することである。われわれは、全国人民に、全力をあげて神聖な抗日自衛戦争を援助するよう要求する。われわれのスローガンはつぎのとおりである。北平、天津と華北を武力で防衛しよう。国土防衛のため最後の血の一滴までささげよう。全中国の人民、政府、軍隊は団結して、民族統一戦線の強固な長城をきずき、日本侵略者の侵略に抵抗しよう。国共両党は親密に協力し、日本侵略者のあらたな進攻に抵抗しよう。日本侵略者を中国から駆逐しよう。」


 これが方針の問題である。

 七月十七日、蒋介石チァンチェシー氏は廬山ルーシャンで談話を発表した。この談話は、抗戦するという方針を確定したもので、国民党が多年らい対外問題でおこなってきたもののうち最初の正しい宣言であり、したがって、われわれと全国同胞から歓迎されている。この談話は蘆溝橋事件を解決する四つの条件をあげている。


 「(一)中国の王権および領土の保全を侵害するどのような解決策もゆるさない。(二)河北ホーペイ省、察哈爾チャーハール省の行政機構には、どのような不法な変更をくわえることもゆるさない。(三)中央が派遣した地方官吏は他から要求されるままに免職させてはならない。(四)第二十九軍の現駐屯地区についてはどのような制限もくわえてはならない。」


この談話は、その結語でつぎのようにのべている。


 「政府は、蘆溝橋事件について、すでに一貫した方針と立場を確定した。全国が応戦してからの情勢はあきらかである。けっして万一をたのみにてきるはずはなく、最後まで犠牲をはらうのみである。ひとたび戦端がひらかれれば、土地に南北の別なく、人に老若の別なく、なにびともみな国土をまもるために抗戦する責務がある。」


 これが方針の問題である。

 以上は、国共両党の蘆溝橋事変にたいする歴史的意義をもつ二つの政治宣言である。この二つの宣言の共通点は、妥協、譲歩に反対し、断固抗戦を主張していることである。

 これは、日本の進攻に対処する第一の方針であり、正しい方針である。

 ところが、第二の方針がとられる可能性もある。最近数ヵ月らい、北平、天津一帯の民族裏切り者および親日派分子は、日本の要求にこたえて、断固抗戦の方針をぐらつかせ、妥協と譲歩を主張して、北平、天津当局に圧力をくわえようとさかんに策動している。これは非常に危険な現象である。

 このような妥協、譲歩の方針は、断固抗戦の方針と根本的に矛盾する。このような妥協、譲歩の方針が早急にあらためられないなら、北平、天津および華北はことごとく敵の手中におちいり、全民族は絶大な脅威をうけるであろう。これは、すべての人びとが十分に注意しなければならないことである。

 第二十九重の愛国的な全将兵は団結して、妥協、譲歩に反対し、断固抗戦を実行せよ。

 北平、天津および華北の愛国的な全同胞は団結して、妥協、譲歩に反対し、断固抗戦を支持せよ。

 全国の愛国的な同胞は団結して、妥協、譲歩に反対し、断固抗戦を支持せよ。

 蒋介石氏およびすべての愛国的な国民党員諸君。諸君が自己の方針を堅持し、自己の公約を実行し、妥協、譲歩に反対し、断固抗戦を実行し、事実をもって敵の侮辱にこたえるよう希望する。

 赤軍をふくめた全国の軍隊は、蒋介石氏の宣言を支持し、妥協、譲歩に反対し、断固抗戦を実行せよ。

 共産党員は、心を一つにして、自己の宣言を忠実に実行すると同時に、蒋介石氏の宣言を断固として支持するものであり、国民党員および全国の同胞とともに、国土防衛のために最後の血の一滴までもささげ、あらゆるためらい、動揺、妥協、譲歩に反対し、断固抗戦を実行するものである。



二 二つの方法


 断固抗戦という方針のもとに、その目的をたっするには、ぜひとも一連の方法が必要である。どのような方法か。主要なものとしては、つぎのとおりである。

 (一)全国の軍隊の総動員。陸海空軍をふくみ、中央軍、地方軍、赤軍をふくむわれわれの二百数十万の常備軍を動員し、一部を治安維持のため後方にのこして、主力をただちに国防の前線に出動させる。民族の利益に忠実な将領を各方面の指揮員に委嘱する。戦略方針を決定し、戦闘の意志を統一するため、国防会議を招集する。将兵の一致、軍民の一致をはかるため、軍隊の政治工作を改革する。遊撃戦争が戦略的任務の一方面をうけもつことを確認して、遊撃戦争を正規の戦争に呼応させる。軍隊内の民族裏切り分子を粛清する。一定数の予備軍を動員して、訓練をほどこし、前線におくる準備をする。軍隊の装備と給養を合理的に補給する。断固抗戦という総方針にもとづいて、以上各項の軍事計画をたてなければならない。中国の軍隊はすくなくないが、上述の計画を実行しなければ、敵にうち勝つことはできない。政治的条件を物質的条件とむすびつけるなら、われわれの軍事力は東亜において無敵となるであろう。

 (二)全国人民の総動員。愛国運動の禁止をとき、政治犯を釈放し、「民国破壊活動緊急処罰法」〔3〕および「新聞検閲条例」〔4〕を廃止し、現存する愛国団体の合法的地位をみとめ、愛国団体の組織を労働者、農民、商工業者、知識層などの各界にひろげ、民衆を武装化して、自衛させるとともに、軍隊の作戦に呼応させる。一言でいえば、人民に愛国の自由をあたえることである。人民の力が軍事力とむすびつけば、日本帝国主義に致命的な打撃をあたえるであろう。民族戦争であっても人民大衆に依拠しなければ、勝利をかちとれないことは、なんら疑う余地がない。エチオピアの失敗〔5〕が、よいいましめである。心底から断固抗戦するのであるなら、この点をゆるがせにしてはならない。

 (三)政治機構の改革。各党各派と人民の指導者を政府にいれて、いっしょに国事をつかさどり、政府のなかにひそんでいる親日派や民族裏切り分子を一掃して、政府と人民とを結合させる。抗日は大仕事で、少数のものではけっしてやりおおせるものではない。しいてやればことをしそんじるだけである。政府がほんとうの国防政府であれば、かならず民衆に依拠し、民主集中制を実行するものでなければならない。それは民主的でもあれば、また集中的でもあり、このような政府こそもっとも強力な政府である。国民大会は、ほんとうに人民を代表すべきものであり、最高の権力機関であるべきで、国家の根本的な政策と方針をつかさどり、抗日救国の政策と計画を決定しなければならない。

 (四)抗日の外交。日本帝国主義者にはいかなる利益も便宜もあたえてはならず、反対に、その財産を没収し、その債権を無効にし、その手先を一掃し、そのスパイを駆逐しなければならない。ただちに、ソ連と軍事的、政治的同盟をむすんで、中国の抗日をもっともよくたすけてくれる、もっとも信頼のおける、もっとも有力なこの国と緊密に連合する。われわれの抗日にたいするイギリス、アメリカ、フランスの支持をかちとり、領土・主権をうしなわないことを前提として、その援助をかちとる。日本侵略者にうち勝つには、主として自己の力によるべきであるが、外国からの援助も欠くことができない。孤立政策は敵を有利にするものである.

 (五)人民生活改善の綱領を公布し、ただちにその実行にとりかかること。苛酷かこくで雑多な税金の廃止、小作料の引き下げ、高利貸しの制限、労働者の待遇改善、兵士と下級将校の生活改善、下級職員の生活改善、災害や飢きんの救済など、こうした最低限度のことからやりはじめる。これらの新政策は、人民の購買力をたかめ、市場を繁栄させ、金融を活発にするものであって、けっして、一部の人のいうように、国家の財政を逼迫ひっぱくさせるものではない。これらの新政策は、抗日の力を無限にたかめ、政府の基礎をかためるであろう。

 (六)国防教育。これまでの教育方針と教育制度を根本的に改革する。不急の事業や不合理な施策は、すべて廃止する。新聞、出版、映画、演劇、文学・芸術などは、すべて国防上の利益に合致させる。民族裏切り者のおこなう宣伝を禁止する。

 (七)抗日の財政経済政策。金のあるものは金を出し、日本帝国主義者と民族裏切り者の財産は没収するという原則のうえに財政政策をうちたて、日本商品を排斥し国産品を奨励するという原則のうえに経済政策をうちたて、すべてのことは抗日のためにおこなう。貧困は、あやまった施策からうまれたもので、人民の利益に合致した新しい政策がとられれば、貧困などはけっしてありえない。このように土地が広く、人口の多い国で、財政経済上どうにもならないというのは、まったく理屈にあわない話である。

 (八)全中国の人民、政府、軍隊が団結して、民族統一戦線という強固な長城をきずくこと。抗戦の方針と上述の各項の政策を実行するにあたっては、この連合戦線に依拠する。中心のかぎは国共両党の親密な協力にある。政府、軍隊、全国の各政党、全国人民は、この両党の協力を基礎として団結する。「まごころをもって団結し、ともに国難にあたれ」というスローガンを、耳ざわりよくしゃべりたてるだけでなく、りっぱにやってのけなければならない。団結は、ほんとうの団結でなければならず、うそをいったり、だましたりするのはいけない。仕事をするにはすこしおおらかな方がよく、風格はすこし高い方がよい。細かいそろばんはじきや小細工、官僚主義や阿Q主義①は、実際にはなんの役にもたたない。こうしたものは、敵にあたる場合にもつかえないのに、同胞にたいしてつかうのは、まったくおかしいことである。物事には大きな道理と小さな道理があるが、小さな道理はすべて大きな道理に支配される。国民は大きな道理にもとづいて物事をよく考えなければ、自分の考え方ややり方を、しかるべきところに位置づけることはできない。こんにち、団結という二字にたいしてすこしでも誠意をしめすことのできないものは、たとえほかからののしられなくても深夜しずかに胸に手をあてて考えれば、いささか恥じるところがあるはずである。

 断固抗戦を実現するためのこの一連の方法は、八大綱領といってもよい。

 断固抗戦という方針には、この一連の方法がともなわなければならない。そうでなければ、抗戦は勝利することはできず、日本はいつまでも中国を侵略するし、中国はいつまでも日本をどうすることもできなくなり、エチオピアの二の舞いもさけるれないであろう。

 断固抗戦という方針に誠意をもつものは、かならずこの一連の方法を実行しなければならない。断固抗戦に誠意をもっているかどうかをたしかめるには、その人がこの一連の方法をとり、実行する気があるかどうかを見ることである。

 このほかにもなお一連の方法があるが、それは、いまのべた一連の方法とはことごとに反対のものである。

 軍隊を総動員するのではなく、軍隊を動員しないか、または後方へ撤退させるのである。

 人民に自由をあたえるのではなく、人民に圧迫をくわえるのである。

 民主集中制の国防的性質をもった政府ではなく、官僚、買弁、豪紳、地主の専制政府である。

 抗日の外交ではなく、日本にこびる外交である。

 人民の生活を改善するのではなく、いままでどおりに人民を抑圧搾取し、人民を苦痛にあえがせ、抗日する力を失わせるのである。

 国防の教育ではなく、亡国の民の教育である。

 抗日のための財政経済政策ではなく、いままでどおりか、いままでよりいっそうひどくさえある、自国にとっては無益で敵にとっては有益な財政経済政策である。

 抗日民族統一戦線という長城をきずくのではなく、この長城をうちこわすか、または面従腹背し、やる気がないのに「団結」についてひとしきりしゃべりたてるだけである。

 方法は方針からでてくるものである。方針が無抵抗主義であれば、方法もすべて無抵抗主義を反映する。このことについては、すでに六年間の教訓がある。方針が断固抗戦であるなら、その方針に合致した一連の方法を実行しなければならず、この八大綱領を実行しなければならない。




三 二つの前途


 前途はどうなるか。これは、みんなが心配していることである。

 第一の方針を実行し、第一の方法をとるなら、かならず、日本帝国主義を駆逐し、中国の自由と解放を実現する前途がえられる。この点について、まだ疑問があるだろうか。わたしは疑問はないとおもう。

 第二の方針を実行し、第二の方法をとるなら、かならず、日本帝国主義が中国を占領し、中国人民がみな牛馬や奴隷になるという前途がえられる。この点について、まだ疑問があるだろうか。わたしはこれも疑問はないとおもう。



     四 結論


 かならず第一の方針を実行し、第一の方法をとり、第一の前途をたたかいとらなければならない。

 かならず第二の方針に反対し、第二の方法に反対し、第二の前途をさけなければならない。

 すべての愛国的な国民党員と共産党員は団結して、断固第一の方針を実行し、第一の方法をとり、第一の前途をたたかいとり、断固第二の方針に反対し、第二の方法に反対し、第二の前途をさけなければならない。

 全国の愛国的な同胞、愛国的な軍隊、愛国的な政党は、一致団結して、断固第一の方針を実行し、第一の方法をとり、第一の前途をたたかいとり、断固第二の方針に反対し、第二の方法に反対し、第二の前途をさけなければならない。

 民族革命戦争万歳!

 中華民族解放万歳!




〔注〕

〔1〕 蘆溝橋は北京市街区から西南十余キロのところにある。一九三七年七月七日、日本侵略軍がここで中国の駐屯軍を攻撃した。中国の駐屯軍は全国人民の激しい抗日の波におされて、抵抗に立ちあがった。中国人民の八年間にわたる英雄的な抗戦はここからはじまった。

〔2〕 第二十九軍は、もと馮玉洋統率下の国民党西北軍の一部で、当時河北省と察哈爾省一帯に駐屯していた。宋哲元はこの軍の軍長、馮治安はこの車の師団長のひとりであった。

〔3〕 一九三一年一月三十一日、自民党政府は、「民国にたいする破壊活動」という罪名を愛国的人民や革命家にたいする迫害と殺戮さつりくの口実とするため、いわゆる「民国破壊活動緊急処罰法」を公布した。この法律による迫害はきわめて残酷なものであった。

〔4〕 「新聞検閲条例」とは、国民党政府が人民の言論を抑圧するため一九三四年八月に制定した「新聞検閲辧法六綱」をさす。それには「新聞原稿はかならず検閲をうけなければならない」と規定されている。国民党支配区の新聞に発表される記事は、すべて発行前に原稿を国民党の検閲官におくって、検閲をうけなければならない。検閲官は勝手に削除、差し止めをすることができるというものである。

〔5〕 本題集第一巻の『抗日の時期における中国共産党の任務』(八)にみられる。

〔訳注〕

① 本選集第一巻の『抗日の時期における中国共産党の任務』注〔14〕を参照。

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