アメリカの記者アンナ・ルイズ・ストロングとの談話 (一九四六年八月)
これは、毛沢東同志が第二次世界大戦終了後まもなく、国際情勢と国内情勢について語ったひじょうに重要な談話である。毛沢東同志はこの談話のなかで、「すべての反動派はハリコの虎である」という有名な論断を下した。この論断は、わが国の人民を思想的に武装させ、わが国の人民に勝利の確信をつよめさせ、人民解放戦争のなかできわめて大きな役割をはたした。レーニンが帝国主義を「泥の足の巨人」とみなし、「かかし」とみなしたのと同様に、毛沢東同志は帝国主義とすべての反動派をハリコの虎とみなしたが、これらはすべてかれらの本質をのべたものである。これは、革命的人民の根本的な戦略思想である。第二次国内革命戦争の時期いらい、毛沢東同志は、革命家は、戦略的には、全体においては、敵を蔑視して、かれらと果敢にたたかい、果敢に勝利をかちとらなければならず、同時にまた、戦術的には、個々の局部、個々の具体的な闘争においては、敵を重視して、慎重な態度をとり、闘争の芸術を重んじ、異なった時間、場所、条件におうじて、適切な闘争方式をとり、それによって、敵を一歩一歩孤立させ、消滅しなければならないことを、かつていくどとなく指摘した。毛沢東同志は、一九五八年十二月一日の中国共産党中央政治局の武昌会議で、つぎのように指摘した。「世の中のあらゆる事物が二重性をそなえている(すなわち対立面の統一の法則)ように、帝国主義とすべての反動派も二重性をそなえており、かれらは本物の虎でもあれば、ハリコの虎でもある。歴史上、奴隷主階級、封建地主階級、ブルジョア階級は、支配権力をにぎるまえと支配権力をにぎったのちのある時期には、生気にあふれ、革命家であり、すすんだ人間であり、本物の虎であった。だが、その後は、かれらの対立面である奴隷階級、農民階級、プロレタリア階級がしだいに強大になって、かれらと闘争し、しかもその闘争がますます激しくなったので、かれらはしだいに反対の側に転化して、反動派になり、おくれた人間になり、ハリコの虎になり、ついには人民によってくつがえされたか、あるいは、くつがえされようとしている。反動的な、おくれた、朽ちはてた階級は、人民の決死の闘争に直面したときも、やはりこうした二重性をあらわす。一方では、かれらは本物の虎であって、人を食う。何百万、何千万の人を食う。人民のたたかいの事業は苦難の時代におかれ、多くのまがりくねった道があらわれる。中国人民は、帝国主義、封建主義、官僚資本主義の中国における支配をくつがえすために、百余年の歳月をついやし、何千万人もの生命を犠牲にして、はじめて一九四九年の勝利をかちとった。みたまえ、これは生きた虎、鉄の虎、本物の虎ではないか。だが、かれらはついに、ハリコの虎、死んだ虎、豆腐の虎に転化してしまった。これは歴史の事実である。まさか、こうした事実を見たり聞いたりしたことがないとはいえまい。それはほんとうに、何千何万、何千何万とあるのである。したがって、本質的に見、なかい目で見、戦略的に見るときには、帝国主義とすべての反動派をありのままにハリコの虎と見なければならない。われわれの戦略思想は、この観点のうえにうちたてられる。他方では、かれらはまた、生きた、鉄の、本物の虎であって、人を食う。われわれの戦術思想は、この観点のうえにうちたてられる。」戦略的には敵を蔑視し、戦術的には敵を重視しなければならないという問題については、本選集第一巻の『中国革命戦争の戦略問題』の第五章第六節と、本巻の『当面の党の政策におけるいくつかの重要問題について』の第一部分を参照されたい。
ストロングの問い 中国の問題は、近い将来、政治的解決、平和的解決の望みがあるとお考えになりますか。
毛沢東の答え それはアメリカ政府の態度にかかっています。もしアメリカの人民が、蒋介石の内戦をたすけているアメリカ反動派の手をおさえることができるなら、平和の望みはあります。
問 もしアメリカが、いままでにあたえた援助はべつとして、これ以上援助しないとしたら〔1〕、蒋介石はあとどのくらい戦えるでしょうか。
答 一年以上でしょう。
問 蒋介石は、経済的にそんなに長くもちこたえることができるでしょうか。
答 できます。
問 もしアメリカが、今後これ以上蒋介石になんの援助もあたえないということを表明したら?
答 いまのところ、アメリカ政府と蒋介石が近く戦争をやめようという願望をもっていることをしめす兆候は、まだなにも見られません。
問 共産党はどのくらいもちこたえられますか。
答 わたしたち自身の願いからいえば、ただの一日も戦いたくはありません。しかし、情勢にせまられて、どうしても戦わなければならないなら、わたしたちは最後まで戦うことができます。
問 アメリカの人民から、共産党はなんのために戦争するのかと聞かれたら、わたしはどう答えたらよいでしょうか。
答 蒋介石が中国人民を殺そうとしているので、人民は生きていくために、どうしても自分で自分をまもらなければなりません。これは、アメリカの人民にもわかってもらえることです。
問 アメリカが反ソ戦争をやるかどうかについて、あなたはどう見ておられますか。
答 反ソ戦争の宣伝には二つの面があります。一面では、アメリカ帝国主義はたしかに反ソ戦争の準備をしており、いまの反ソ戦争の宣伝やその他の反ソ宣伝は、反ソ戦争のための政治的な準備です。他の一面では、こうした宣伝は、アメリカ帝国主義がいま直面している現実の多くの矛盾をおおいかくそうとして、アメリカの反動派がはっている煙幕です。それらの矛盾というのは、アメリカの反動派とアメリカの人民とのあいだの矛盾であり、アメリカ帝国主義とその他の資本主義国、植民地・半植民地国とのあいだの矛盾です。アメリカの反ソ戦争のスローガンがもつ当面の現実的な意義は、アメリカの人民を抑圧し、また、資本主義世界にむかってその侵略勢力をひろげる点にあります。ご承知のように、ヒトラーやその仲間の日本軍閥は、かつて長いあいだ、自国の人民を奴隷化し他の国ぐにを侵略するための口実に、反ソのスローガンをつかっていましたが、いまのアメリカの反動派のやり方もまったくおなじです。
アメリカの反動派が戦争をひきおこすには、まず第一に、アメリカの人民を攻撃しなければなりません。現に、かれらはアメリカの人民に攻撃をくわえ、政治的に経済的にアメリカの労働者と民主的な人びとを抑圧しており、アメリカでファシズムを実行しようとしています。アメリカの人民は立ちあがってアメリカの反動派の攻撃に抵抗すべきです。わたしは、アメリカの人民がそうするにちがいないと信じています。
アメリカとソ連のあいだはきわめてひろい地帯でへだてられており、そこにはヨーロッパ、アジア、アフリカの三つの州の多くの資本主義国と植民地・半植民地国があります。アメリカの反動派は、これらの国ぐにを屈服させてからでなければ、ソ連への攻撃などできるものではありません。現在アメリカは、太平洋で、イギリスが以前もっていた全勢力範囲よりもっと大きな地域を支配し、日本、国民党支配下の中国、朝鮮の半分、南太平洋を支配しています。また、はやくから中南米を支配しています。さらに、全大英帝国と全西ヨーロッパを支配しようと考えています。アメリカはいろいろな口実のもとに、多くの国ぐにで大がかりな軍事配置をおこない、軍事基地を設けています。アメリカの反動派は、かれらが世界の各地にすでに設け、あるいはこれから設けようとしているすべての軍事基地は、みなソ連に反対するためのものだ、といっています。たしかにそのとおりで、これらの軍事基地はソ連を目標にしています。しかし、いままっさきにアメリカの侵略をうけているのは、ソ連ではなく、軍事基地の設けられているこれらの国ぐになのです。これらの国ぐにが、ほんとうに自分たちを抑圧しているのはだれか、ソ連なのか、それともアメリカなのか、ということを知るようになるのは、それほど遠いことではないと、わたしは信じています。アメリカの反動派は、いつかはきっと、かれら自身が全世界人民の反対のただなかにあるのを発見するでしょう。
もちろん、わたしは、アメリカの反動派がソ連にたいする攻撃を考えていないといっているのではありません。ソ連は、世界平和のまもり手であり、アメリカの反動派の世界制覇をはばむ強大な要素であって、ソ連があるかぎり、アメリカと世界の反動派の野心はぜったいに実現できません。そのために、アメリカの反動派はソ連をひじょうに憎んでおり、たしかに、この社会主義国を消滅しようと夢みています。しかし、いま第二次世界大戦が終わって間もないときに、アメリカの反動派がこのように鳴り物入りで米ソ戦争を強調し、険悪な空気をかきたてているのでは、だれでも、かれらの実際のねらいがなんであるかを見きわめずにはいられません。かれらは、実は、反ソのスローガンのもとで、アメリカの労働者と民主的な人びとに気違いじみた攻撃をくわえ、また、アメリカの対外拡張の対象となっているすべての国ぐにをアメリカの従属物に変えようとしているのです。アメリカの人民と、アメリカの侵略の脅威をうけているすべての国ぐにの人民は、団結して、アメリカの反動派と各国におけるその手先の攻撃に反対すべきだと、わたしは考えます。このたたかいが勝利したときにだけ、第三次世界大戦は避けることができるのであって、そうでなければ、さけることはできません。
問 ひじょうに適切なご説明です。けれども、もしアメリカが原子爆弾をつかうとしたら? もしアメリカがアイスランドや沖縄から、また中国にある基地から、ソ連を爆撃するとしたら?
答 原子爆弾は、アメリカの反動派が人をおどかすためにつかっているハリコの虎で、見かけはおそろしそうですが、実際にはなにもおそろしいものではありません。もちろん、原子爆弾は一種の大量殺人兵器ですが、しかし、戦争の勝敗を決定するのは人民であって、一つや二つの新兵器ではありません。
すべての反動派はハリコの虎です。反動派は、見たところおそろしそうですが、実際にはたいした力はもっていません。ながい目で見れば、ほんとうに強大な力をもっているのは、反動派ではなくて、人民です。一九一七年のロシアの二月革命以前に、ロシアでは、いったいどちらの側がほんとうの力をもっていたでしょうか。うわべから見れば、当時のツァーは力をもっていました。ところが、二月革命の一陣の風はたちまちツァーを吹きとばしてしまいました。結局、ロシアでは、労農兵ソビエトの側に力があったのです。ツァーはハリコの虎にすぎませんでした。ヒトラーも、かつては、たいへん力があると見られていたのではないでしょうか。しかし、歴史は、かれがハリコの虎であることを証明しました。ムッソリーニもそうでしたし、日本帝国主義もそうでした。これとは逆に、ソ連および民主と自由を愛する各国人民の力は、人びとの予想よりはるかに強大でした。
蒋介石や、その支持者であるアメリカの反動派もすべてハリコの虎です。アメリカ帝国主義といえば、人びとは途方もなく強大なものだとおもっているようですし、中国の反動派も、アメリカの「強大さ」をもちだして中国人民をおどかしています。しかし、アメリカの反動派も、歴史上のすべての反動派とおなじように、なんの力ももっていないことが証明されるでしょう。アメリカでほんとうに力をもっているのは他の部類の人たちで、それはアメリカの人民です。
中国の状況についていえば、わたしたちがたよりにしているのは粟プラス小銃にすぎませんが、この粟プラス小銃のほうが蒋介石の飛行機プラス戦車よりもっと強いことを、歴史は最後に証明するでしょう。中国人民のまえにはまだ多くの困難があり、アメリカ帝国主義と中国反動派の共同攻撃のもとで、中国人民は長いあいだ苦しみをなめるでしょうが、しかし、これらの反動派はいつかはかならず敗北し、わたしたちはいつかはかならず勝利します。その理由はほかでもなく、反動派は反動を代表し、わたしたちは進歩を代表しているからです。
〔注〕
〔1〕 アメリカ帝国主義は、蒋介石が反人民の内戦をひきおこすのを支持するために、蒋介石政府に膨大な援助をあたえた。一九四六年六月までに、アメリカは、計四十五コ師団の国民党軍を装備した。また国民党のために、陸軍、海軍、空軍、侍務、交通警察、参謀、軍医、主計などの軍事要員十五万人を訓練した。アメリカは軍艦、飛行機をつかって、国民党軍十四コ軍団、計四十一コ師団および交通警察八コ総隊、計五十四万人あまりを解放区攻撃の前線に輸送した。アメリカ政府は、九万人の海兵隊を中国に上陸させ、上海、青島、天津、北平、秦皇島などの重要都市に進駐させるとともに、華北ではさらに、国民党のために交通線をまもった。アメリカが蒋介石政府にあたえた各種の援助は、一九四九年八月五日にアメリカ国務省が発表した「アメリカと中国の関係」と題する白書のなかで明らかにされた資料によれば、抗日戦争から一九四八年までに、総計四十五億ドルあまりにたっしている(アメリカが抗日戦争中に国民党政府にあたえた援助のほとんどすべても、国民党は、のちに反人民の内戦をおこなうためにとっておいた)。だが実際には、アメリカの蒋介石にたいする援助は、この数字をはるかにこえている。アメリカの白書は、アメリカが蒋介石政府にあたえた援助は、蒋介石政府の「貨幣支出の五〇パーセント以上」に相当し、「その政府予算との関係では、比重のうえで、戦後アメリカがあたえた西欧諸国のいずれの国にたいする援助をも上回るもの」であることを認めている。




