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自衛戦争によって蒋介石の進攻を粉砕せよ (一九四六年七月二十日)

 これは、毛沢東同志が中国共産党中央のために起草した党内指示である。蒋介石は一九四五年の冬に「双十協定」を破棄したが、しかし、かれは当時まだ全面的内戦の準備かできていなかった。なによりも、大量の国民党軍をまだ内戦の前線にはこんでいなかった。このため、国民党政府は、平和と民主を要求する全国人民の圧力におされて、一九四六年一月、中国共産党とその他の民主政党の参加する政治協商会議を招集しなければならなくなった。この会議では平和と民主にとって有利な一連の決議が採択され、そして一月十日には休戦令が公布された。しかし、蒋介石は政治協商会議の決議と休戦令をまもろうとはしなかった。一九四六年の前半には、国民党の軍隊かびきつづき、多くの地方で解放区に進攻してきたが、なかでも東北地方における進攻は規模が大きく、山海関以南では小規模の戦い、東北地方では大規模の戦いがおこなわれるという局面がつくりだされた。同時に、アメリカは、ひじょうに大きな力をさいて国民党軍の輸送と装備にあたった。一九四六年六月末、蒋介石とその主人アメリカは、すでに十分な準備ができたと考え、三ヵ月ないし六ヵ月のあいだに人民解放軍ぜんぶを殲滅できると考えて、六月二十六日、大挙、中原解放区を包囲攻撃したのを手はじめに、解放区にたいする全面的な進攻にのりだした。七月から九月までのあいだに、国民党軍はあい前後して江蘇・安徽解放区、山東解放区、山西・河北・山東・河南解放区、山西・察哈爾・河北解放区、山西・綏遠解放区に大挙進攻した。十月には、東北解放区にたいしてふたたび大規模な進攻をはじめ、同時に、ひきつづき大軍をもって陝西・甘粛・寧夏解放区を包囲した。全国的な規模の内戦が勃発したとき、国民党が解放区の進攻にまわした兵力は、正規車百九十三コ旅団(師団)ほぼ百六十万人にたっした。これは、総兵力つまり正規軍二百四十八コ旅団(師団)二百万人の八〇パーセントをしめている。各解放区の軍隊と人民は党中央と各中央局、中央分局の指導のもとに、蒋介石軍の進攻にたいし勇敢に反撃をくわえた。当時、解放区には六つの大きな作戦地域があった。この六つの作戦地域と、そこで戦った人民解放軍は、つぎのとおりである。山西・河北・山東・河南解放区、ここで戦ったのは劉伯承、鄧小平らの同志が指導する人民解放軍。華東解放区(山東解放区と江蘇・安徽解放区からなっている)、ここで戦ったのは陳毅、粟裕、譚震林らの同志が指導する人民解放軍。東北解放医、ここで戦ったのは林彪、羅栄桓らの同志が指導する人民解放軍。山西・察哈爾・河北解放区、ここで戦ったのは聶栄臻同志らが指導する人民解放軍。山西・綏遠解放区、ここで戦ったのは賀竜同志らが指導する人民解放軍。中原解放区、ここで戦ったのは李先念、鄭位三らの同志が指導する人民解放軍。当時、人民解放軍の総兵力はほぼ百二十万人で、敵の兵力にくらべると、数のうえでは劣っていた。人民解放軍は、毛沢東同志のさだめた作戦方針を正しく実行し、侵入してくる敵にたえず強力な打撃をあたえた。そして、およそ八ヵ月のあいだに、敵の正規軍六十六コ旅団と非正規軍とをあわせて七十一万余人殲滅して、ついに敵の全面的な進攻をくいとめた。つづいて、人民解放軍はしたいに、戦略的な反攻をくりひろげていった。




 (一)蒋介石チァンチェシーは休戦協定〔1〕をふみにじり、政治協商会議の決議〔2〕をふみにじって、東北地方でわが四平スーピン長春チャンチュンなどを占領したのち、いままた華東、華北地方で大挙してわが方に進攻しているが、将来ふたたび東北地方で進攻をおこなう可能性がある。自衛戦争によって蒋介石の進攻を徹底的に粉砕したときはじめて、中国人民は平和をとりもどすことができる。

 (二)わが党とわが軍は、平和をかちとるため、いま、蒋介石の進攻を粉砕するいっさいの準備をすすめている。蒋介石にはアメリカの援助はあるが、人心が離反し、士気はあがらず、経済は困難におちいっている。われわれには外国の援助はないが、人心が集まり、士気はあがり、経済も自信がある。したがって、われわれは蒋介石にうち勝つことができる。全党はこのことについて、十分な確信をもつべきである。

 (三)蒋介石にうち勝つ作戦方法は、一般的には運動戦である。したがって、いくつかの地方、いくつかの都市の一時的な放棄はさけられないばかりでなく、必要でもある。いくつかの地方、いくつかの都市を一時的に放棄するのは最後の勝利を得るためであって、そうしなければ最後の勝利はおさめられない。この点を全党と全解放区の人民がはっきり理解し、その心がまえをするようにさせなければならない。

 (四)蒋介石の進攻を粉砕するためには、人民大衆と緊密に協力し、獲得できるすべての人びとを獲得しなければならない。農村では、一方ではだんこ土地問題を解決し、あくまで雇農、貧農に依拠し、中農と団結すべきであり、他方では土地問題の解決にさいして、普通の富農、中小地主と、民族裏切り者、豪紳、悪覇あくは①とを区別すべきである。民族裏切り者、豪紳、悪覇のあつかいはきびしくし、富農、中小地主のあつかいはゆるやかにしなければならない。土地問題がすでに解決されている地方ではすべて、少数の反動分子はべつだが、地主階級全体にたいして態度をゆるめるべきである。生活の困難な地主にはすべて援助をあたえ、逃亡した地主はよびかえして生計の途をあたえ、こうして敵対分子を少なくし、解放区の強化をはかるのである。都市では、労働者階級、小ブルジョア階級およびすべての進歩的な人びとと団結するのはもちろん、すべての中間的な人びとと団結することにも心がけて、反動派を孤立させるべきである。国民党軍のなかでは、内戦に反対する可能性のあるものはすべて獲得して、好戦分子を孤立させるべきである。

 (五)蒋介石の進攻を粉砕するためには、持久的な計画を立てなければならない。われわれの人的資源と物的資源を十分に節約し、浪費を極力いましめなければならない。各地ですでに発生している汚職現象を調査し、是正しなければならない。生産にはげんで、すべての必需品、まず第一に食糧と衣料の完全な自給をはかるようにしなければならない。いたるところに綿花を栽培し、どの家も糸をつむぎ、どの村も布を織るよう奨励しなければならない。東北地方であっても、こうした奨励をはじめるべきである。財政上の供給の面では自衛戦争の物的需要をみたすようにしなければならないし、同時にまた、人民の負担を以前よりも軽くし、わが解放区の人民の生活が戦争のなかでも改善されるようにしなければならない。要するに、蒋介石がすべてを外国にたよっているのとまったく反対に、われわれはすべてを自力更生にたよって、不敗の地に立つようにするのである。蒋介石支配区の、上には汚職と腐敗があり、下では人民が塗炭の苦しみをなめているというのとまったく反対に、われわれは刻苦奮闘し、軍隊と人民の双方に配慮をくわえるのである。こうした状況のもとでは、われわれはかならず勝利する。

 (六)われわれのまえには困難があるが、それらの困難は克服できるし、また克服しなければならない。全党の同志と全解放区の軍民は、一致団結し、蒋介石の進攻を徹底的に粉砕して、独立、平和、民主の新中国をうちたてなければならない。




〔注〕

〔1〕 「休戦協定」とは、一九四六年一月十日、中国共産党の代表と蒋介石国民党政府の代表が協議のうえとりきめた軍事衝突停止についての協定のこと。この協定には、双方の軍隊は一月十三日の二十四時、それぞれの現在地で軍事行動を停止すべきであることが規定されている。しかし、蒋介石は、実際には、この休戦協定を大規模な戦争を手配するための煙幕として利用し、休戦令を下すと同時に、国民党の軍隊に「戦略的重要地点の先制奪取」を命じ、つづいて、ひんぱんに軍隊を動かし解放区にたいする進攻をおこなった。七月になると、蒋介石は休戦協定を公然と破棄し、解放区にたいする全面的な進攻をはじめた。

〔2〕 「政治協商会議」とは、国民党、共産党、その他の政党および無党派人士の代表が、一九四六年一月十日から三十一日まで、重慶でひらいた政治協商会議のこと。この会議では、つぎの五つの決議が採択された。(一)政府の組織問題についての取り決め。この取り決めには、「国民政府組織法を改正し、国民政府委員会を充実させる」こと、国民政府委員の定員をふやすこと、「国民政府委員は国民政府主席が中国国民党内外の人びとからこれを選任」し、「国民政府主席が各政党の人びとを国民政府委員に選任するよう申請するさいには、各政党がみずから指名する、ただし主席が同意しないばあいには、各政党がべつに人選する」こと、「国民政府主席が無党派の人びとを国民政府委員に選任するよう申請するさい、もし指名されたもののなかに、被選任者の三分の一から反対されるものがあれば、主席は考慮しなおし、べつにこれを選任しなければならない」こと、「国民政府委員の定員の半数は国民党員をもってこれにあて、のこりの半数はその他の政党と賢明達識の士をもってこれにあてる」ことがきめられている。国民政府委員会は抽象的に「政府の最高国務機関」と規定され、その権限は立法の原則、施政方針、軍政上の大方針、財政計画と予算、および国民政府主席の提出した事項などを討議、決定するにあると規定されている。他方、国民政府主席はきわめて大きな権限をもち、指定権、議案の相対的否決権および緊急処置権をもつものと規定されている。また、国民政府「行政院の、現有の部、会の政務委員および将来おかれる無任所政務委員の総数のうち、七名ないし八名は国民党外の人びとをむかえてこれにあてる」とも規定されている。(二)平和建国の綱領。この綱領は「総則」「人民の権利」「政治」「軍事」「外交」「経済および財政」「教育および文化」「善後救済」「華僑事務」など九章からなっている。「総則」の章では、全国各政党が「一致団結して、統一、自由、民主の新中国を建設する」こと、「政治の民主化、軍隊の国家化および政党の平等と合法化」を実行すること、「政治上の紛糾は政治的方法で解決し、それによって国家の平和的発展をたもつ」ことが規定されている。「人民の権利」の章では、「人民に、身体、思想、宗教信仰、言論、出版、集会、結社、居住、移転、通信の自由を享有することを確実に保障する」こと、「司法および警察以外のいかなる機関あるいは個人にたいしても、人民を逮捕し、審問し、処罰する行為にでることを厳禁し、これを犯したものは処罰すべきである」ことが規定されている。「政治」の章では、「各級の行政機構を整頓し、その権限と責任を統一し、かつ明確に区分し、いっさいの重複機関を廃止し、行政手続を簡素化し、各級の責任制を実施する」こと、「適任者の在職を保障し、人をもちいるには党派の別なく、能力と経歴を基準とし、兼職と情実採用を禁止する」こと、「監察制度を励行し、汚職に厳罰をくわえ、人民の自由な摘発を容易にする」こと、「地方自治を積極的に推進し、下から上への普通選挙を実施する」こと、「中央と地方の権限については均権主義をとり、各地でその地方の実情におうじた措置を講じうるものとするが、省、県の公布する法規は中央の法令に抵触してはならない」ことが規定されている。「軍事」の章では、「軍隊の編成は国防上の必要にこたえ、民主的政治制度と国情におうじて、軍制を改革し、軍隊と政党の分立、軍事と民政の分離を実行し、軍事教育を改善し、装備を充実させ、人事、経理制度を健全にして、近代的な国軍を建設すべきである」こと、「全国の軍隊は、改編計画にしたがって、確実に編制を縮小すべきである」ことが規定されている。「経済および財政」の章では、「官僚資本の発展を防止するとともに、官吏がその権勢と地位を利用して、投機、独占、脱税、密輸、公金費消、輸送手段の不法使用をおこなうことを厳禁する」こと、「小作料・利子引き下げを実施し、小作権を保護し、小作料の納入を保証させ、農業貸付を拡大し、高利の搾取を厳禁して、農民の生活を改善するとともに、土地法を施行して、『耕すものに土地を』という目的を達成する」こと、「労働法を施行し、労働条件を改善する」こと、「財政を公開すること。予算決算制度を励行し、支出を緊縮し、収支を平衡させ、中央と地方の財政を区分し、通貨を収縮させ、幣制を安定させ、内外債の募集と用途を公表し、これちを民意機関に監督させる」こと、「税制を改革し、苛酷雑多な税と不法な割当てを根絶する」ことが規定されている。「教育および文化」の章では、「学術の自由を保障し、宗教信仰、政治思想を理由にして学校行政に干渉をくわえない」こと、「国家予算のなかで、教育・文化事業費の比率をふやす」こと、「戦時に実施した新聞、出版、映画、演劇、郵便・電信・電話の検閲の規定を廃止する」ことが規定されている。(三)国民大会の問題についての取り決め。この取り決めには、国民大会の代表として「各政党および賢明達識の土の代表七百名をふやす」こと、「第一期国民大会の権限は憲法の制定にある」ことが規定されている。(四)憲法草案の問題についての取り決め。この取り決めには、憲法草案審議委員会を組織し、国民党の憲法草案を改正することが規定されているとともに、憲法草案改正の原則が規定されている。国民大会、政府機関の権限について、原則的な規定をおこなったほか、とくに「地方制度」と「人民の権利義務」について規定した。「地方制度」については、「省を地方自治の最高単位ときめる」こと、「省と中央の権限の区分は均権主義によって規定する」こと、「省長は民選とする」こと、「省は省の憲法を制定してよいが、国の憲法に抵触してはならない」ことか規定されている。「人民の権利義務」については、「民主国家の人民が享有すべき自由および権利はすべて、不法に侵犯されないように憲法によって保障さるべきである」こと、「人民の自由について、もし法律によって規定するときは、自由保障の精神によるべきであって、制限を目的とすべきでない」こと、「労役については、自治法で規定すべきであり、憲法では規定しない」こと、「一定の地方に集まり住む少数民族は、その自治権を保障される」ことが規定されている。(五)軍事問題についての取り決め。この取り決めには、「軍隊の制度は、わが国の民主的政治制度と国情におうじて改革すべきである」こと、「徴兵制度を改善する」こと、「軍隊の教育は建軍の原則によってこれをおこない、永久に政党や私人関係を超越すべきである」こと、「軍隊と政党の分立を実行する」こと、「いかなる政党および個人も軍隊を政争の具に供してはならない」こと、「軍事と民政の分離を実行する」こと、「軍隊に勤務する現役の軍人は、すべて、行政官をかねえない」ことが規定されている。国民党の軍隊と解放区の軍隊の編成がえについては、「軍事三人小委員会が、もとの計画にしたがって、できるかぎりすみやかに、中国共産党の軍隊の編成規定をとりきめ、編成がえを終わるべきである」こと、国民党の軍隊は、「軍政部のもとの計画によって、六ヵ月内に、できるだけすみやかに、その九十コ師団の編成がえをおこなう」こと、「以上の二つの編成がえを終えたのち、さらに、全国のすべての軍隊を五十コ師団ないし六十コ師団に統一的に編成すべきである」ことが規定されている。政治協商会議のこれらの取り決めは、それぞれ程度の差はあれ、人民に有利で、蒋介石の反動支配に不利であった。蒋介石は、一方では、これらの取り決めを利用して和平の見せかけとするため、これらの取り決めの承認を表明し、他方では、全国的な内戦をおこすため、積極的に戦争の準備をすすめた。政治協商会議のこれらの取り決めは、その後まもなく、蒋介石によってつぎつぎと破棄された。

〔訳注〕

① 悪覇とは、ある種の反動勢力にたより、あるいは反動勢力をかたちづくり、縄張りをもうけ、悪事のかぎりをつくしていたもののことである。かれらは、いつも暴力と権勢をもちいて人民をしいたげ、人民の財産をうばいとり、人民の生命と財産に重大な損害をもたらした。

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