第70話:結論
「終わりです」
その言葉から、数日。
◇
王都は――静かだった。
◇
あれだけの混乱が、嘘のように。
だが。
完全に元に戻ったわけではない。
◇
壊れたものは、壊れたまま。
消えたものは、戻らない。
◇
それでも。
(回っている)
◇
市場は、小さいながらも動き出している。
人が動き、物が流れ、金が循環する。
◇
「……変わったね」
エリシアが、街を見ながら言う。
◇
「ええ」
頷く。
◇
以前のような“過剰な豊かさ”はない。
だが。
◇
(無理がない)
◇
価格は安定し。
取引は透明で。
税の流れも見える。
◇
「文句も減った」
エリシアが苦笑する。
「ゼロじゃないけどね」
「ええ」
◇
それでいい。
不満があるのが普通だ。
◇
重要なのは――
(壊れないこと)
◇
◇
王城・会議室。
◇
貴族たちが、静かに座っている。
以前とは違う。
あの頃のような威圧感はない。
◇
「……報告を」
議長が言う。
◇
「はい」
リディアが立ち上がる。
◇
「新税制度、第一段階は完了しました」
「徴収率は安定」
「市場回復も確認」
「流通も正常化しつつあります」
◇
「……持つのか?」
誰かが問う。
◇
「持たせます」
リディアは、はっきりと言う。
◇
その言葉に。
もう、反論はない。
◇
理解している。
これは――
“続く形”だと。
◇
◇
会議の後。
◇
「……やったね」
エリシアが笑う。
◇
「ええ」
短く答える。
◇
「でもさ」
「うん?」
◇
「結局、“正しい税”って何だったの?」
◇
その問いに。
少しだけ、考える。
◇
難しい問いだ。
だが――
答えは、もう出ている。
◇
「税は」
ゆっくりと言う。
◇
「罰ではありません」
◇
「奪うものでもない」
◇
「維持のためのものでもない」
◇
一つずつ、否定する。
◇
「税は」
一拍。
◇
「流れを作るものです」
◇
「人を動かし」
「市場を回し」
「社会を繋ぐ」
◇
「そして」
◇
少しだけ、視線を上げる。
◇
「未来に投資するものです」
◇
エリシアが、静かに聞いている。
◇
「今を支えるだけじゃない」
「次を作るためのもの」
◇
「だから」
◇
ここまでのすべてを込めて。
◇
俺は、答えを言い切る。
◇
「税は、未来のためにある」




