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税は未来のために ― 崩壊国家を再構築する経済戦記 ―  作者: 南蛇井


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第21話:ルールの整備

 「このままだと崩れます」


 その宣言の翌日。


 広場には、人が集められていた。


 元からの住人。

 新しく来た者。

 商人たちも、興味深そうに様子を見ている。


 ざわつく空気。


「なんだ、また揉め事か?」


「違うらしいぞ」


「じゃあ何だよ」


 不安と不満が混じった声。


 当然だ。


 ここ数日で、街は急激に変わりすぎた。


 誰もが、落ち着きどころを探している。


 その中心に、エリシアが立っていた。


 少しだけ、息を吸う。


 そして――


「聞いて」


 声を張る。


 一瞬で、ざわめきが収まった。


 前とは違う。


 もう、彼女の声は“届く”。


「今のままだと、この街は崩れる」


 はっきりと言い切る。


 誰も否定しない。


 実感しているからだ。


「だから、決める」


 一歩、前に出る。


「ルールを作る」


 空気が揺れる。


「ルール……?」


「また縛るのかよ」


「自由にやらせろよ」


 不満が漏れる。


 だが。


「自由のままだと、奪い合いになる」


 エリシアは即座に言い返した。


「もうなってるでしょ」


 沈黙。


 図星だった。


「順番もない」


「基準もない」


「だから揉める」


 一つずつ、現実を突きつける。


「だったら、決めるしかない」


 逃げ道はない。


 それを理解させる言葉だった。


 そのとき。


「……具体的には?」


 人混みの中から声が上がる。


 いい流れだ。


 反発から、議論へ。


「まず、配分」


 エリシアは即答した。


「食料と資材は、優先順位をつける」


「優先順位?」


「生産に関わるものを優先」


「次に生活」


「最後に余剰」


 シンプルな構造。


「じゃあ、働いてないやつは後回しか?」


「そうなるね」


 ざわ、と空気が動く。


 だが、否定は出ない。


「次」


 エリシアは続ける。


「仕事の割り振り」


「希望だけじゃ決めない」


「適性と必要性で決める」


「勝手に決めるのかよ」


「そう」


 迷いなく言い切る。


「その代わり、結果は出す」


 強い言葉だった。


 責任を引き受ける覚悟があるから言える。


「住む場所も同じ」


「人数と状況で割り当てる」


「揉めないようにする」


 反発はある。


 当然だ。


 だが――


「全部、“公平に見える形”にする」


 その一言で、空気が変わる。


「見える形……?」


「誰がどれだけもらってるか」


「なぜそうなってるか」


「全部、公開する」


 ざわめきが広がる。


「隠さない」


「だから、納得できる」


 理屈だ。


 感情じゃない。


「……でもよ」


 一人の男が言う。


「納得できなかったら?」


 いい質問だ。


 エリシアは、ほんの一瞬だけ間を置いた。


 そして――


「そのときは、理由を説明する」


「それでも無理なら?」


「ルールに従ってもらう」


 はっきりと言い切る。


 逃げない。


「従えないなら、この街にはいられない」


 空気が凍る。


 厳しい言葉だ。


 だが。


 必要な線引きだ。


 沈黙が広がる。


 重い。


 だが、誰も崩さない。


 やがて。


「……分かった」


 ぽつりと声が落ちる。


「このままよりはマシだ」


「俺もだ」


「ちゃんと決めてくれた方がいい」


 一人、また一人と頷く。


 流れが、変わる。


 “感情”から、“合意”へ。


 それを見ていた俺は、小さく息を吐いた。


(……成立したな)


 もう、戻らない。


 ここからは“街”じゃない。


 “組織”だ。


 エリシアがこちらをちらりと見る。


 俺は小さく頷いた。


 十分だ。


 なら――


 最後の一手だ。


 彼女はもう一度、全員を見渡し。


 はっきりと宣言する。


「ルールを作ります」

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