第10話 世の中どうにもならない事ばかり
「~♪ ~~♪ ~♪」
「うぅむ、惚れ惚れするような音色。
ドラブ殿、口笛だけは無駄に上手でござるなぁ。」
「これが横笛なり縦笛なりだったらおひねりも貰えそうなものなんだけど、口笛以外はからっきしだってんだからままならないねぇ。」
「何ですぐそうやって全部金につなげようとする!?」
「そりゃ金がないからさ。」
俺たち3人は街を少し離れた農村に向かっていた。
モンスターのものと思われる痕跡が見つかったとかで、ギルドに依頼が来ていたのだ。
村の住人もどんなモンスターなのか見当がつかなかったため、とりあえず安上がり、かつ生き汚いFランク――つまり俺たちに白羽の矢が立ったわけだ。
「しかしまた、本当にいるかどうかもわからないモンスターの調査とは、面倒くさい仕事でござるな。」
「冒険者ともあんま縁のなさそうな田舎だし、ランク詐称でもして金引き出せないもんかねぇ……」
「やめろよ、前それやってロクでもねぇことになったじゃねえか!」
「Cランクはちょっとサバの読みすぎだったねぇ……」
「引っ込みがつかなくなって、危うく拙僧らだけでオーガと殴り合う羽目になるところでござったからな。」
「土下座して許してもらったけど、あの件でランク昇格が遠のいた感あるよな……」
「ま、流石に今回はそんなこともないだろうさ。
ここらは元々が平和な地域だし。モンスターの痕跡っていっても、ゾンビかヘドロスライムがせいぜいだろうね。」
「何で例えが臭そうなのばっかでござるか?」
「調査だけの報酬じゃ物足りないし、大したことなさそうなら俺たちだけで始末してやろうぜ。」
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「よし、帰るか!」
「判断が早いでござるな!?」
「いやだって、これはなぁ……」
俺たちの目の前で、巨大な三本爪型に地面がえぐれている。
「普通これ見たら、『モンスターの痕跡』じゃなくて素直に『ドラゴンの足跡』って言わないか?」
「いや、もしかしたら作り物のイタズラって線も……」
ヴァージニアはそう言ったが、本人もあまりその可能性は期待していないようだ。
「へこんだ土が全体に固くなってるし、爪の跡の部分は特にガチガチだ。
つまり、相当な重さで踏みつぶしてできた跡。」
「……うん、帰ろうかね。」
「それが良うござろうな。」
「村人の避難誘導だけして、ギルドにもっと上のランクの奴派遣してもらわんとな。
一番弱いグリーンドラゴンでも、最低Bランクでもなきゃあ話にならん。」
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「これで村人の避難は完了かな?」
「流石にドラゴンが出るともなれば、早いものでござるな。」
小さいとはいえ一つの村の住人が、2日で避難完了ともなれば十分な早さだろう。
「今頃最初に出た組は街に着いてギルドに連絡してくれてるはず。
後は上のランクの連中に任せて、アタシたちもとっとと退散だね。」
「しっかし手軽な調査で済むはずが、避難誘導なんて手間ばっかり無駄にかかる仕事になっちまって……
こりゃあ多少報酬に上乗せでもしてもらわんことにゃ、割があわな……」
「ちょっと待ちな、何か聞こえないかい?」
「……よせよオイ。脅かすような真似は――」
村人を見送っていた俺たちは、ちょうど足跡を発見した方角の反対を向いていた。
そこへ、背の方角――つまり足跡があった方角から、ズンッと、重たい音が響く。
「……これって。」
「振り向きたくないでござるなぁ……」
「そういやヴァージニア、ハモン。昼飯遅くなっちまったけど何食おうか?」
「全力で現実逃避してやがるね!?」
「いや、だってなぁ……
もう逃げても間に合わない感じだろ?」
言っている間に、音は徐々に近づいてくる。
「だからと言って大人しくしてるわけにもいかぬ。せーので振り向くでござるよ?
せーのっ……」
振り向いたその先に――
「GRUU……GRUAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
ブルードラゴン。
ドラゴンとしては比較的弱い部類だが、冒険者1パーティで討伐するにはBランクでも上位の方の実力が必要だ。
当然、Fランクなぞ鎧袖一触。
「ドラブ殿、昼食は豚系の料理を食いとうござる。」
「テメエまで現実逃避してんじゃねぇよ!!
あとちょっとくらい肉食を隠す努力をしな!」
「いやだって、思ってたよりデカいでござるよ?」
そうやって言い合っていると、
「キサマら、無視するな!!
ドラゴンを前にふざけているのか!?」
頭上――ドラゴンの上から男の声がした。
「ドラゴン使いか?」
「いかにも!
我こそは先の勇者ヘラクレオンに封印されし魔王デモナール様配下四天王が一人激流の王アクアヴィット様に仕えし十二魔将の一員邪龍将軍ライハ様が家臣にして序列69位アビラカデ!!
邪龍将軍様が遺せしこのブルードラゴンで貴様らを討つ!
魔王様復活のための礎となるがいい!!」
「説明長ぇ……!」
「句読点を挟んだ方が良いでござるよ。」
「上司のドラゴン貰って調子に乗ってる?」
「本当にいい度胸だなキサマら……!」




