物語3・7
夕暮れにさしかかっていた。
城門裏へ続く外の通路に出る。
ーーガタガタ。
「通るよー!」
「こちらにお願いしまーす!」
ここでは大量の食材を乗せた荷車や、見世物小屋の動物や猛獣使い、黒服を着た使用人の男性やメイドたちが裏の広場を慌ただしく右往左往していた。
折りたたまれた白い布をカゴいっぱいに持ち運んでいる女性が目の前を通り過ぎていく。ヨロヨロ足がふらついていて危なっかしい。
私はぶつかったり邪魔にならないように避ける。
舞踏会の準備に皆忙しそうだった。
「きゃあっ」
通り過ぎたはずの女性がつまづいて地面に倒れ込む。
食事の席か何かで使うだろう布は、煉瓦の道にばらばらと散らばっていた。
皆忙しく女性が転んだことにも構っていられないのか、助けに入る人はいなかった。
見てしまった以上手助けしない選択肢はないので、散らばった布を魔法でかき集めてカゴに乗せる。
洗浄の魔法をかけても大丈夫か聞いてから呪文を唱えて土を落とした。
「ああ本当に、ありがとうございます!」
「ほらボサっとしてないでこれも運んで!」
私がカゴを持ってしまったせいで女性に課された仕事はさらに増えて、メイドの彼女の手にはまたもや違うカゴが乗せられていた。
「……」
「……」
しょうがないよね。私も運びます。
手助けしたはずなのに罪悪感が湧いてしまったので、目的の所まで一緒に運ぶことにする。
このメイドの女性は城の募集のチラシを見てやって来た平民の人だった。
勝手がわからないから凄く大変で、場所もどこがどこなのかてんてこ舞いだったのだと疲れ顔で話される。
会場担当がいるリネン庫まで持っていきたいのだと言われて一緒に歩いているが、はっきり言おう。
こっちはその道じゃない。
自慢ではないが何回も城に来ていた私は白騎士にここはどこ、あそこはここ、などだいたいの配置を教えられていたので、リネン庫は舞踏会の会場になっている城のど真ん中の大きな広間の横にあることを知っていた。
それとなく軌道修正して遠回りしながら、メイドをリネン庫まで無事に送り届ける。
「あらぁ! ヘルさん? メイドに応募したの??」
「ちょっとお手伝いをしただけと言いますか」
「はぁ。ヘルさんのおかげで無事にここにたどり着けました。お城の中のことお詳しいんですか?」
「詳しいってもんじゃないわよ。貴女よりずぅ~っっと配置を理解してるかもね」
新聞で私の顔を見た人が多いからなのかなんなのか、近頃見ず知らずの人に親しみのある言葉をかけられることが多い。
リネン庫にいた女性も全く知らない人なのに(見かけたことはある)知らないうちに友達だった? という感じで親しげに話しかけられた。
「最近お仕事で出入りしてるものね~」
「ねぇヘルさん、よかったら時間ある?」
メイドのお姉さんたちが両手を握って目を輝かせている。
時間なら、もう仕事も終わって帰るだけ……と言いかけたところで右手をぎゅっと掴まれた。
「人手が本っ当に足りないの! メイド長に許可をもらえたら、この服を着て手伝ってもらってもいいかしら!?」
フリルがついたメイドの服をひらひらさせて、女性たちに囲まれた。
今から? そんなまさか。メイドの仕事なんて付け焼刃でできるはずがない。
そう返したが、彼女たちはそんな言葉なんて聞いていないとばかりに、会場の準備を指示していたメイド長の所までわざわざ私を連れて行った。
普通に却下されると思うので拒否をするよりはメイド長にハッキリ言ってもらおうとお断りの言葉を待っていたら、ふくよかなメイド長は私を見て頷いた。
「採用」
採用!?




