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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第2章 Solve the Mysterious Murder Case. 屍蘇傀儡篇

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87.怒る姉と怯える弟

 局長は突然タトゥムの事を自分の弟だといういことを暴露した。

 そのことにはこの場にいる全員が驚いており、近衛兵でさえ動揺を隠せていなかったことからこれまで弟がいた事は隠してきていたのだろう。

 そして当然の如く怜達がタトゥムに向かって局長と姉弟の関係だというのはどういうことなのか問い詰める。


「おいタトゥム! お前局長の弟って本当なのか!?」


「ほ、本当だよ。隠してて悪かったよ~」


「何で隠してたんだ?」


「それは、姉さんはこの事を誰にも言ってなかったんだし、俺も俺で言わないようにしていたんだ」


 タトゥムは自分が局長の弟だということを隠していた理由を話すが、その内容は姉の秘密を守るためだった。

 局長は今まで姉弟はいないと明言して生活してきていた為、そのことを弟自身から言うのはあまりいいことではないと思ったタトゥムは、今日この場で再開するまで存在を有耶無耶にしていた。

 すると局長が「はぁ……」とため息をついて再び説明を始める。


「姉弟の件については後ほどタトゥムから伺ってください。それと、自己紹介がまだでしたね。私の名前はアイリーン・フリゲットと申します。そして今は今回の謎の殺害事件の話の方を優先しましょう」


「おっとそうだった。で、局長さん、僕たちは一体この地で何をすれば?」


「皆さんには我々の能力者と共にいくつかのチームを結成し、住民の皆さんへの聞き込み調査、そして、事件の犯人の討伐をお願いしたいのです」


「犯人……」


「地球防衛協定《Earth Defense Agreement》9の方でも先日協議を行い、この事件には邪神が関わっているのではないかという結論に至りました」


「僕たちもその可能性を強く考えているつもりだよ。この前もラティオマラが顕現する前には何かしらの現象が起きていた。怜はそのことを知ってるんじゃない?」


 局長の名前はアイリーン・フリゲットといい、アイリーンは今後の日本能力者の動きについての説明と、今回の事件には日本と同様に邪神が関わっているのではないかと考えていたそうだ。

 天津たち日本の対策本部も邪神の仕業と考えていた上に、邪神が現れる前には何かしらの現象が確認されると説明し、その事について怜に説明してもらうことにした。


「はい、エピドロメアスが消滅してから1年後、突如としてテラポーンが現れ始めて、その数日後にラティオマラ、邪神が現れました」


「なるほど、確かにそのことを考えれば今回の謎の殺害事件は邪神が現れる前触れと考えてよさそうですね。では、これから部隊の編成を行います。事前に来る方の人数は把握していますので、人数に偏りが無いように編成をしました」 


 怜は自分が今まであったことをそのまま説明した。

 エピドロメアスが消滅してから1年後にテラポーンという謎の生命体が現れ始めていたということ、そしてそのテラポーンが現れた数日後にラティオマラが日本に顕現したということ。

 その話を聞いたアイリーンは今回の事件には高い確率で邪神が書か合っているだろうと考え、早速今回の任務の部隊編成の話に移る。

 近藤から怜達がロンドンに来る前に誰が来るのかということは伝達済みの為、アイリーンは事前に部隊編成を済ませておいたという。

 すると近衛兵がとあるリモコンを作動させるとアイリーンの後ろにある大きな窓ガラスが遮光ガラスに切り替わり、そのガラスにプロジェクターの画像が映し出される。


「部隊は合計で4部隊。レイさんとエルさんは第1部隊、アマツさんは第2部隊、コザキさんとタトゥムは第3部隊、ヒナギさんは第4部隊に配属となります。本日の任務は住民の方々に対する聞き込み調査となりますので、よろしくお願いいたします」


「分かりました」


「犯人発見後は部隊ごとに分かれてではなく、全員で犯人を捕縛、邪神の場合は討伐となります」


「本日のお話は以上となります。その他で質問などがあれば各部の隊長に尋ねてください」


 プロジェクターとアイリーンの説明で皆がどの部隊に所属するのかが決まり、今日の動きやその他の事まで丁寧に説明してくれた。

 すると後ろの怜達が入って来た大きなドアから4人の軍服を着た人たちが入ってくるが、恐らくその4人は各部の隊長と言われる人で、皆を案内してくれるのだろう。

 話が終わり、皆がそれぞれ隊長の元に行こうとした時、アイリーンがタトゥムと怜を呼び止める。


「タトゥム、そしてレイさん、少しお時間よろしいでしょうか」


「はい? 何かありましたか?」


「レイさんには少し確認したいことがありまして。そしてタトゥムはちょっとしたお説教を」


「ちょ!? 姉さん待って!」


「待ちません! この数年どれだけあなたの行方を捜していたことやら……」


 2人以外の皆や隊長は門の外に行き、2人の所属していない第2部隊と第4部隊は先に大聖堂を後にし、第1部隊と第2部隊はロビーで待機する。

 怜は何のことで呼び止められたのか分からなかったが、アイリーンがタトゥムの名前を口にするとタトゥムは少しだけ逃げようと足を後ろに移動させていたが、そんなことは当然アイリーンにはお見通しで説教をすると言う。

 するとタトゥムは慌てた表情で待ってほしいと頼むがアイリーンは少し、いや、かなり起こった表情でタトゥムの事を見ていた。


「それで、あなたはこの5年間一体どこで何をしていたのですか?」


「……」


「黙っても無駄ですよ。あなたにとって地獄の空気が流れ続けるだけですから」


「あ、アメリカの、対策本部で、か、活動を……」


「あの人工悪魔がいるところですか。そこで5年間活動していて、たまたま帰省のタイミングと被ってしまったと」


「なんで来た理由を知ってるの!?」


「あなたが来る理由なんてそんなものくらいでしょう。私を誰だと思ってるんですか。あなたの姉ですよ」


「うぅ……」


 タトゥムがアメリカで能力者の活動をしていることを聞くと、アイリーンはタトゥムが故郷であるロンドンに帰省してきた理由を当てて見せる。

 何故言ってもいないのに理由が分かるのか困惑していたが、これが家族として、姉弟の繋がりなのか、タトゥムの事を全て知っているかのように次から次へと会話を進めていく。


「あの、タトゥムがいなくなったって、どういうことなんですか?」


「……あれは5年前、タトゥムが17歳、私が20歳の頃、私たちはロンドンの対策本部で活動していたんですが、そのころは今と違ってかなりハードな訓練などが多かったので、マイペースなタトゥムは嫌気がさしてしまったのでしょう。ある朝、部屋を訪れると「探さないでください」と1通の手紙を残してどこかに消えてしまったんです」


「その行き先が、アメリカだったと」


「そのようですね」


 タトゥムの失踪事件が発生したのは5年前のようで、ロンドンの対策本部の訓練に嫌気がさして家出を決意し、アメリカの対策本部まで逃げていったという。

 アイリーンはタトゥムの部屋にあった手紙を見てからというもの、これまでの数年間エピドロメアスや邪神の対策の職務に加えてタトゥムの捜索なども行っていた。


「とりあえずあなたが元気なようでよかったです。どうせこの任務が終わったらまたアメリカなどに行くのでしょうから、その時は少しは手紙を出す様にしなさい」


「……いいの? 今まで通りでやっても」


「止めたとしてもあなたはまた家出してしまうでしょう? それに、あなたに合った場所の方が、強くなれるとも聞きますし」


「……分かった、ありがとう。姉さん」


 再び説教が始まるのかと思ったが、アイリーンは怒りの表情から柔らかな表情に変わり、今後の行動は今まで通り好きにしていいと言うと、アイリーンにまたロンドンでこっぴどく訓練されるのかと思っていたタトゥムは予想外の彼女の言葉に驚く。

 これからもロンドンでもアメリカでも好きなところで活動してかまわないが、これからは少しでもいいから手紙を書いて送ることを約束される。

 やはりこれまでに起こったことからタトゥムが心配になることがあったのだろう。

 その言葉を聞いてタトゥムはアイリーンの約束を守ると言うと、アイリーンは微笑んでみせる。


「説教はここまでです。早く隊長の元に行きなさい」


「ありがとう、姉さん」


「あの、俺は……」


「すいません、少し説教に力が入ってしまいましたが、レイさん、あなたに聞きたいことが一つだけあるのです」


「聞きたいこと?」


「《《あなたの内に秘めている邪神の力についてです》》」





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