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第二十七話

 ここはTokyorkの警察署。いつもは『大した』事件もないので、日々穏やかな時間が流れるばかりであるその場所は、今日に限って慌しかった。その理由は単純で、

「児童連続殺人犯の赤上が出頭したって本当ですか先輩!」

 取り調べ室へ向かう途中の廊下で、若手刑事は先輩刑事へと尋ねる。そう、何年も行方しれずだった凶悪犯が今日になっていきなり、姿を現したのだから混乱の一つや二つ生まれるだろう。

「ああ。どうも三級市民らしき男と一級市民らしき女達に連れられてきたらしくてな。本人らしき男も『自分が赤上空で間違いない』つったってたらしい」

「へえ、一級市民が三級市民とつるむなんて変わってますね。その人達は今どこに?」

「簡単に話だけ聞いて帰したらしい。赤上が流してた違法薬物の保管場所と、児童の殺害現場について色々言っていたようだ」

「帰しちゃったんですか? 実はその人達も赤上とグルだったりしません?」

「お前な、証拠もなしに容疑者でもなんでもない奴を引き止められんよ。電話番号や住所は控えてあるから、何かあったら聞きに行けば良い。んで、こっからそいつらの話の裏付けだな──おっと、電話だ」

 と言って先輩刑事が電話に耳をあてた直後、

「なに。赤上が取り調べ室で死んでる? あそこには旧式のカメラがあったはずだろ、映像はどうなってるんだ? 残ってない? 現場に例の文字が、ということは……」

 ため息を一つついて、肩を落とす。

「赤上が死んだってどういう事ですか? 警察署内で殺人が起こったんですか!?」

 後輩の言葉に先輩刑事は首を振る。

「いいや、殺人なんて起きてない。今日は運が良かったな、お前にも見せてやろう」

 困惑する後輩刑事をよそに、引き続き取り調べ室へと歩みを進める。

「時たまあるんだ。俺達の仕事に妨害が入るって事がな。よっぽどこの国にとって不都合な真実が隠されているんだろう」

「警察の仕事を妨害? どうしてそんな事を……というか、なぜそれが分かっていて対策をしないんですか?」

「する必要がないからだよ。なぜなら、この国における英雄の御業だからだ」

「英雄?」

 そうだ、と先輩刑事が告げたちょうどのタイミングで、二人は取り調べ室前に到着をした。そして彼はその部屋の鍵を開けて入室する。

「赤上に関する調査は今日限りでおしまいだ。なぜならそれが、偉大なる我らが超大統領、リトルシスターのご意志だからだ」

 中へ入ると、脳天を撃ち抜かれ絶命している赤石の遺体と、壁一面に『可愛らしい妹があなたを見ています!(Little sister is watching you!)』と書かれた光景が目に入った。

「お前も知っての通り、この部屋には入室記録を残さず出入りする事は不可能だ。ましてや人を殺めた上にこんな文字まで書き残すなんてよ。なあ、こんな事件を俺達普通の人間が追えると思うか?」

「こ、これを本当にあのリトルシスターがやったと何故言い切れるんですか?」

「そういうもんだと何十年も前から言われてるからな。今日の出来事が署長の耳に入れば、いつもの通りこの件には緘口令が引かれる事となる。お前、うっかり誰かに言ったりするなよ?」

「もし口を滑らしたら?」

「大丈夫、ここの奴らは過去一人だって口を滑らせたやつはいない。何故ならこの警察署には『そんな奴、最初から居るはずがない』からな」


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