67 チヌック
「すごいすごい!!」ヴィーシャは大喜びしている。
「速いよ、速い、チヌック!!」
ヤヒス達一行はチヌックの背に乗って大空を舞っていた。
グリフォンなので空を飛べるのは当然のことだが、まさかここまで速いとは、と全員が驚いている。
「これなら馬車代もいらない」
パムは目を細めて言う。
「魔物との戦いにも参加してくれると言うので、本当に心強いですね」
ミードリも嬉しそうである。
しばらくチヌックの背に乗り大空を、飛んだ後に、王都のはずれに着地した。
全員がチヌックの背から降りると、ヤヒスがチヌックの首に抱き着いている。
「ありがとう、君のおかげで冒険が捗るよ」
「主の役に立てて光栄です、最も私を救ってくれたことからしたら些末なことです」
そう言ったあと
チヌックはグリフォン体形から、鷹の体形に変化し、ヤヒスの肩にとまった。
そのまま歩いて街の中まで入り、パーティーホームに着いた。
チヌックは屋根にあがり、全員家の中に入って行った。
昼食を取り、全員がリビングに集まっている。
その中でヴィーシャは声を出した。
「修練場を使いましょう、私とヤヒスは木剣での立ちあい、ミードリとパムはイメージトレーニングを行いましょう」
「賛成します、私はまだ大きくなった魔力の制御ができていません、敵に合わせて魔力量をコントロールできるようにしたいです」
「私はもっと補助魔法の手数を増やしたい、図書館にも通いたいね」
パムもやる気まんまんだ
「俺はヴィーシャとの立ちあいか、ちょっと怖いな」
ヤヒスは頭をかいている。
「何言ってんのよ、お互い十分な立ち合いが出来るようになっているはずよ」
「そうだと良いけど・・・」
「とりあえず、明日の朝いちばんから修練場でトレーニングね」
その日はそれで解散となったので、皆それぞれ街へ散っていった。
ヤヒスは街路を歩き、修練場を下見に行った。
想像していたような人数はおらず、トレーニングしている人は剣技もヴィーシャに及ばないように見えた。
(初心者が使う場所なのかな、空いているのは良いけど)
思い返してみると自分たちは色々と遠征に行っていたので、知らぬ間に強くなっているのかもしれないとヤヒスは考えていた。
(魔王って言う良くわからない魔物の王がいるってわかって、勇者パーティーは敗走してきた、なんだか不安が募るな)
ヤヒスはそのようなことを考えながら家路についた。




