成り③
ヤヒス達は毎日トレーニングをしていたが思ったような効果は得られないでいた。
とは言っても体力は増加し、剣のキレは増加しているので、『成り』が得られなくとも十分な成果と言えなくも無かった。
「ふぅ、あと三日で期限の一か月だけれど、調子はどうだい?」
「残念だけど体力の増加を感じているだけよ、それでもまだいいとは思うけれど」
「とにかくあと三日、今までよりもキツいトレーニングを続けましょう」
二人はしょぼくれた様子でパーティーホーム向かった。
ここしばらくの間はトレーニングの成果を、マサカツとリャヒにみてもらうために、前庭で木剣を交わしている。
「やあ、二人ともおかえり、どうだった?」
「もうすぐ期限の一か月になるが・・・」
マサカツとリャヒは真剣な表情を二人を見ていた。
「駄目ね、まぁ体力と剣技は向上しているけれど」
「俺はなんだかモヤモヤするよ、集中できてないってことかな・・・」
ヤヒスは自身のことにがっかりしているようで目に見えて憔悴している。
そのような会話をしてヤヒスとヴィーシャは木剣を手に取りマサカツとリャヒは壁際で様子を見る体制に入った。
前庭には木剣が鳴らす高い音とダッシュする時の鋭い音が響いていた。
「む・・・ヤヒスの方が後れを取っているな」
「そうだね、どうにも体捌きがぎこちない気がする」
その後もヤヒスが後れを取る形でトレーニングが進んで行った。
「ん・・・ヤヒスの身体がおかしい、なにか陽炎の様な物が揺らいでいるように見える」
「まさか・・・いや本当だ、どうしたと言うのだ」
「これはもしかしたら・・・」
マサカツとリャヒは一歩前に出てトレーニングの様子をよりよく観察しようとした。
(何か・・・頭の中ではじけたような気がする、万能感、何にでも勝てるきがする・・・これは)
ヤヒスは思考をやめ、それまでの構えと別の体勢に入り、つぶやいた。
「成り」
その瞬間、それまでよりも切れが良く、鋭い踏み込みでヤヒスはヴィーシャに迫り、彼女は防御中心の型に瞬時に切り替えた。
ヤヒスはショートソードを刺突の形で突っ込んで行ったが、寸前で切り替え、盾に全体重を乗せてヴィーシャに当たって行った、彼女は宙に浮くほどの衝撃で後方に吹き飛んで行った。
ヤヒスはそれを見て元の位置に戻り、ヴィーシャはよろよろと起き上がると、ヤヒスは今度はショートソードを前方に突き出して迫って来た、ヴィーシャが大剣で受け止めようとすると、その大剣は手から弾かれ宙を舞い、地面に落ちて重い音を立てた。
ヤヒスが元の場所に戻って身構えると、マサカツとリャヒは言葉を交わした。
「次ぐらいかな・・・」
「うむ」
その声と共に今までよりさらに踏み込みを強くしたヤヒスはショートソードを構え、盾は水平に置く体制で突っ込んだ。
ヴィーシャはショートソードを弾き飛ばすために斬撃を鋭く叩きつけたが、ショートソードがあるべき場所には盾が迫っており、大剣に強烈にぶつかった。
ヤヒスの盾は砕けたがヴィーシャの大剣も寸断され、彼女は大きく後方に吹き飛び地面を転がった。
「おい!!いくぞ!!」
「うむ!!」
マサカツとリャヒは新たに構えようとしているヤヒスを止めようと近づいて行ったが、ショートソードを構えたヤヒスに阻まれた。
「おいおい嘘だろ、気が飛んじまっている」
「これをおさえることなど・・・」
マサカツとリャヒがやりあぐねていると後方から声がした。
「スタン!!」
パムの声がそうひびくとヤヒスの身体が崩れ落ちそうになったが、ヤヒスはショートソードを軸にして膝立ちで耐えている。
「スタン!!」
パムの二度目のスタンでヤヒスは地に伏し。
ヴィーシャの元に向かったパムは彼女にヒールを施している。
「あ・・・ありがとう、とても自力では立てないところだったわ・・・ヤヒスはどうなったの?」
「ん?ああ、観戦していた俺たちにはヤヒスの身体に陽炎が立ち上ったかと思うと『成り』とつぶやいてヴィーシャに突っ込んで行った『成り』何だろうね、だがその後近付いた俺たちにも攻撃を加えようとしていたし、これはまだ完成形とは言えないだろうねぇ」
マサカツはそう言ってため息をついた。




