番外編 イエールと言う男④
ガラクタや食料が転がる街角でイエールはひとりでエールを何杯も飲んでいた。
町には人影が無く、商店も酒場も誰もいないので、ちょいとちょろまかしてエールを楽しんでいるのだ。
イエールは上空浮かぶ映像を見つめて、真剣な目をしていた。
「神とか言うイカレが現れてソヴィルバーレを破壊して以来、みーんな辺境に逃げちまった仲間も薄情なもんだぜ辺境行きだ」
イエールは干し肉を咀嚼しながら、ひとりごちていた。
「死ぬんならどこでもいっしょだろうよ、俺は住み慣れたこの町でちょろまかしたエールを飲んで様子を見守る方が向いてら、がはははは」
陽気に笑ったように見えた声は、瓦礫とガラクタが散らばる市街にむなしく響いた。
「あーあ・・・こりゃ第三の勇者パーティーも全滅か、どうすんのかね、神ってやつは本気でこの町を破壊するのかねっと!!」
イエールは目の前のテーブルを蹴り上げた。
その時、街路を走り抜ける一団が彼の目に飛び込んで来た。
「あー・・・りゃ、黄昏の連中じゃねぇか、アイツらも残ってやがったのか、急いでいたがどこ行きやがるんだ・・・まさか!?いや、アイツらはギルドの方向から走って来た、そのまさかかもしれねぇ!!」
イエールは急いで冒険者ギルドに向かった。
「おい!ねえちゃん!!ここの黄昏の連中が来なかったか!?」
「あ、イエールさんも避難されていないんですね」
「そんなことより黄昏の奴らだ!!もしかするとなんじゃねぇか!?」
それを聞いたギルド長はイエールの方に振り向き、澄んだ声を出した。
「ああ、彼らは勇者パーティーとして認められ神との戦いにおもむきましたよ」
「やっぱりかぁ・・・」
イエールは複雑な心境だった、さすがのヤヒス達もかなわないだろうと言う思いと、あいつならやるかもしれねぇと言う期待だ。
イエールは冒険者ギルド内の椅子を掴んで外に出て、それに腰を据えて神と闘技場を映し出す映像を見上げていた。
「おっ!本当にアイツらが神んところに行っちまったよ・・・」
映像には神に向かって歩く黄昏パーティーの姿が映されている。
イエールの横からガタゴトと音がしたので、彼はその方を見やると、ギルド長と受付嬢も黙って映像を見上げていた。
「ああ!クソ!!ヴィーシャのヤツまでやられちまった!!残りはヤヒス一人だ・・・いや、アイツなら何か奥の手を持っているんじゃないのか?」
「私もそう思います、ですから勇者パーティーとして認めました」
隣に座ったギルド長は上空を眺めたままつぶやいた。
上空の映像にはヤヒスがヴィーシャのポーチを探っている様子が映し出されている。
その次の瞬間ヤヒスが視界から消えたかと思うと、神の腹に何か掌底のような拳法じみた動きを見せた。
映像には神が余裕の表情でヤヒスを見つめている様子が映し出されている。
「見えなかったが、すげぇ速さで動いて拳法かなんかを叩き込んだのか?でもあの野郎余裕の表情だぜ」
イエールは神の様子を睨みつけている。
「いえ、変です、神の顔がわずかづつですが老いています」
ギルド長は身を乗り出して上空を見上げている。
「ほ、本当だ!髪も白くなっているぞ!!どういう事だ!!」
「・・・おそらく老化を促進させるアイテムか何かでしょう」
「でもよ、あいつは不死身なんだろ??」
ギルド長とイエールの会話に受付嬢が割り込んで来る。
「不死身ですが・・・不死ではない、寿命があるのでは」
「あっ!!そうか!!」
「ふむ・・・そう言う様子ですね、あ、神が倒れましたね」
しばらくすると映像は上空から消えてただの空に戻った。
「どうなったんだ?」
イエールがつぶやく。
「神が影像を投影していたと思われますから、死亡した時点で映像も消えたのでしょう」
ギルド長は椅子から立ち上がりネクタイを正した。
「つまり・・・神は死んで、世界の危機は去ったと」
「そう言うことになるでしょうね、暇な日々からまたクエスト斡旋の忙しい日々になりますよ」
ギルド長はそう言って階段を登って行った。
「うぉおおおお!!!やりやがった!!ヤヒスの奴やりやがった!!イエールは両手を天高くつきあげて咆哮をあげた」
終




