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番外編 マサカツのこと③

マサカツはノートに書き溜めていたわからないことをどんどん副園長に聞いていった。

それに対して副園長は何の本も手に取らず、あたかもこちらの質問があらかじめ分かっていたかのように滑らかに答えてくれた。


ずいぶんと時間が過ぎた頃マサカツは帰りのバスの時間を思い出し帰る旨を副園長に伝えた。

「おぉ、もうこんな時間か、いやたのしかったよありがとう」

副園長はふくふくと笑いながらマサカツを園の出口まで見送った。


「あっ、お忙しい中大変ありがとうございました」

マサカツが深いお辞儀をして顔を上げると園長は言った。

「君のお父さんが言ったようにね、植物園も動物園もいろんな人の疑問や不思議に答える場所でもあるんだ、でも、まずは君自信で考えて調べてそれでもわからなければまた来なさいね」


マサカツは副園長を背にして走ってバス乗り場まで向かった。


動植物園へ行ってから一年と少し経った頃にマサカツは中学校に入学した。

中学では植物のことではなくやはりロケットのことを学びたいと思いなおし、クラブ活動に理科クラブを選んだ。


理科室に詰める先輩たちの中には難しそうな本を読んでいる人達や、良くわからない電気製品を分解している者もいたが、この間まで小学生だった一年生は、書架にある理科の漫画などを読んで所在なげにしていた。


しばらくすると担当教諭が現れて自己紹介をはじめた30を過ぎた所と言う雰囲気の明るくて快活な教師であった。


「よーし!!新入生恒例のペットボトルロケットの打ち上げ実験に行くぞ!!」

教師はそう叫ぶと何やら機材の入ったオリコンを抱えて、生徒を校庭に行くように促した。

はたしてペットボトルロケットの打ち上げ実験と称される遊びが始まり、皆声をあげて天に登るペットボトルを見上げている。


理科室に戻ると教師は少し真剣な顔をして新入生に問いかけた。

「さてみんな、さっきの実験で分かったことはあるかな?」

そう問いかけると一人の生徒が手を上げて答える。


「水をいっぱい入れても高く飛ばなかった」


その答えを受けた教師はにやりと笑って言った。


「ではその理屈が分かる人はいるかな?」

その問いかけに対してマサカツは手を上げる。


「黒板、借りて良いですか?」

「おっ?いいぞー」


教師は黒板の前を退き、マサカツにその場を譲る。


マサカツはチョークで何か黒板に書きつけていく。

カツカツと滑らか音が教室に響き渡っている。


「この場合、ロケットの方程式 F = dp/dt = - u*(dm/dt) -mg を使用できます。

ここで、u はボトルから出る水の速度、dm/dt はロケットの質量の変化率・・・ええと、水が失われることです。


ノズルを通る水の流を仮定すると、dm/dt = pAu となります。

ここで、pは水の密度、A はノズルの面積、u は噴出速度です。

したがって、m = m0 - pAut となります。


簡単に言うと水の量は重さになります、重いものを打ち上げるにはそれだけエネルギーが必要になります、重さに対してのエネルギーを出せる適切な水量でないといけません、僕が実験をした時は350㎖程度が最も効率が良いと言う結果が出ました」


マサカツがチョークを置くと理科室は静まり返った。


「君、その式と、実験と言ってたね、自分で調べて結論を出したのかい?なぜそこまで突き詰めて考えたのかな?」

「将来ロケットを作る技術者になりたいからです」


今度は理科室内にざわざわとした空気が漂いだした。


「静かに静かに、ペットボトルロケットは組み立てキットもあるからね、事前に知っている生徒も珍しくないんだ、さぁ次はプリントを配るから新入生は目を通すように」


教師がそう言うと、皆元通りの作業やプリントの配布に戻り、マサカツも席に戻った。

彼は教師が自分を特別扱いしないと言うことだと受け止め、その後の学校生活では特別目立った行動は控えることにした。


中学校生活では理科は学年一番を維持し続け、同時に英語も2-3番と高い成績を維持し続けたが、他の科目は凡庸な物だった。


中学二年の終わりごろに進路希望の用紙が配られ、それに記入提出した数日後、担任教師に職員室に呼び出された。


「マサカツ君、第一志望が豊中工業高校になっているが、君なら今からもっと勉強すれば清秋館高校に行く事も出来るはずだよ、その、言いにくいことだが工業高校はあまり成績の良くない子が行くんだよ」

「僕は金属加工や電子工作がしたいんです、中学でも金工の授業がありましたが満足できませんでした、僕は自分で機械を造り出してプログラムを組み、結果を分析する作業がしたいんです」


担任は少し目を細めてマサカツを見つめると言った。


「すまなかった、工業高校のことを悪く言うような言葉は取り消そう、君ならひとかどの技術者に慣れるかもしれない」


担任は笑顔を見せてマサカツは少し笑った。









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