第65話
「『原子力潜水艦』の有用性は、平壌でも発揮された。大同江は、大河で水深が深い為、潜水艦でも侵入可能と言うのも幸運だった。で、議事堂は、こっちだな。」
地図を確認するサマノ。横からのぞき込む幼馴染、ゾフィー。
「然り、まず劇場を通り過ぎるのぢゃ。『救世主』様。」
「シッ、静カニ。誰カ接近シマス。」
しかして、やって来たのは、朝鮮系の老人だった。
「知り合いぢゃ。『救世主』様。」
「そうか、で、僕はどうすればいい。」
「お静かに。暫し、待たれよ」
と言う瞳でサマノを見るゾフィー。無言で待つサマノ。独逸語に切り替えるゾフィー。
《ようきたのぉ。朴守卿。》
《お久しぶりです。お嬢様。この老骨めを、コキ使いに来られたのですか。》
《然り、早速案内を頼むぞ。現職の『書記長』までな。》
《お任せあれ。では、ご説明申し上げます。》
* * *
日本語訳された説明を、ゾフィーから聞き終えたサマノだった。
「つまり、劇場に『書記長』が、いるのか。」
無論、日本語を使う。ゾフィーも同様だ。
「わらわと、『案内人』を信頼せい。『救世主』様。」
「違う。そうではない。『奴(書記長)』には、『影武者』がいる。それも複数。そこは、対策を立てているんだな。」
「勿論ぢゃ。『案内人』は、『奴(書記長)』の『料理番』……の『影武者』ぢゃ。故に、接近も、スケジュール確認も、容易にできるのぢゃ。『救世主』様。」
「成程。で、『奴(書記長)』は、今日劇場で、何をしている。」
「お気に入りの歌手による貸し切りコンサートぢゃ。その後は、食事会になる。その後は、大人のお愉しみぢゃ。」
「それで、『料理番』が、用意にスケジュールを把握できる訳か。なら、狭い方が、いい。」
即興で、考えた『手筈』を説明するサマノ。
こうして、場所を移動する一行だった。
* * *
コンサートは、既に終わり、場所は、食事会用の大部屋に、移っていた。
20人掛けのテーブルを、設えた部屋も、先程のコンサート会場に、比べれば狭い。
主役は、『奴(書記長)』と、『女性歌手』の2人のみ。
跡は、給仕や御用聞きにと、忙しく働いている。
なごやかなムードの食事会が、催されていた。
言うまでも無く、護衛達が、気を抜く事も無い。
「これが、『本物』の『奴(書記長)』か。」
視線を『案内人』に向けるゾフィー。首肯する『案内人』。
「問題ない。『救世主』様。」
「よし、手筈は、さっき説明した通りだ。全員、気を引き締める事。」
「勿論。『救世主』様。」
「承知。『救世主』様。」
「ハイ。『救世主』様。」
三者三様の意思を、伝えた通信機だった。
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