第48話
《よし! 取れた。》
慎重に『それ』を。ピンセットで取り出すのは、手術着を着用した白人男性だった。
《お疲れ様です。》
そう言って、手術着の白人男性の汗を拭くのは、助手の黒人女性だ。
《何でしょう。これ。》
助手の1人が、首をかしげる。
《さぁな。少なくとも、俺達は見覚えが無い。と言う事は、分析待ちさ。縫合宜しく。俺は、こいつを分析に回してから、上がらせてもらうよ。》
白人男性医師は、手を洗い、手術着を脱いでから、処置室を後にした。その手には、レントゲン写真に写っていた不自然な影を、フレディの体内から取り出した『ある物』があった。
《お疲れぇー。》
* * *
「……と、こんな所ぢゃ。『救世主』様。」
「CIAと言うから、もっと優秀かと思ったが、買い被りだったか。連中が、『追跡チップ』に気付くのは、時間の問題だった。が、10時間かかってこれでは、期待外れもいい所だ。」
「デハ、如何致シマショウ。『救世主』様。」
「問題ない。既に、君達とメイド達の人海戦術で、関係各位の車両と、着衣に発信機を取り付けた。本当に、お疲れさまだ。」
「お褒めに預かり恐悦至極……と言う事は、この後も当初の予定通りですね。『救世主』様。」
「その通り。当初の予定通り、泳がせる。但し……」
「所長と、副所長ね。『救世主』様。」
「その通り。所長と、副所長だけは、尾行し逃亡先で捕らえる。ここは、逃す訳にはいかない。包囲網をしっかり敷いて、確実にとらえる事。いいな。」
「勿論よ。『救世主』様。」
「心得た。『救世主』様。」
「ハイ。『救世主』様。」
* * *
《この場所は、放棄する! 全員荷物をまとめろ! 各自の判断で、撤退! その後は、暗号方式B01で、連絡する。速やかに、施設から撤退せよ!》
構内放送が、鳴り響く。職員全員が、せわしなく動く。
《全く、何でこんな簡単な事に気付かなかった!》
《ホーント、日本の『救世主』ってば、えげつないよねぇ。》
《笑ってる場合じゃないっ! フレディの身体に、『追跡チップ』が、埋め込まれていたんだ。しかも、本人にはそんな記憶は全く無い。そんな鮮やかな手並みを持ってるだと!》
《確かに、僕らは、既に2つも失った。1つ、フレディの『デッド・オン・タイム』。2つ、この建物。》
《そうだ! この建物の位置が、バレた以上、何時攻撃されても不思議じゃないんだ! そんな事より……》
《そんな事より、機密情報の削除だろ。全員が、撤退完了するまで待ってくれよ。つか、上から指示は無いのかい。》
《長官が、病気で倒れたそうだ。お陰で、現場の判断に、丸投げだ。俺も、所長として、恐らく最後の仕事に、なるだろうな。》
《え! 何でそうなる。》
《『追跡チップ』の発見が、遅すぎだ。後で、責任を追及されるだろうな。》
《マジかよ……まさか、ひょっとして、大統領、副大統領の病気も、(CIA)長官の病気も、全部、日本の『救世主』の仕業じゃないよね。》
《さぁな、それが真実でも、否でも、関係ない。俺達は、俺達で、やるべき事、やらなきゃいけない事を、やりぬくだけだ。》
《……まったく、僕らは、何時の間にこんなに『追い詰められた』んだろうね。一体、何処で間違ったのやら。》
《ぼやくな。未だ、仕事が残ってるんだ。》
《えー、つか、疑問に思わないの。》
《何を、だ。》
《日本の『救世主』の『能力』さ。一体何をすれば、『あんな事』が、できるんだろう。》
《その分析は、進んでない。研究員達も、首をひねるばかりだ。》
「つか、むしろ、読者の方が、首をひねるわぁっ!」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
《役に立たないなぁ……所長の責任を、とやかく言う前に、あの無能共を片付けたいよ。》
《ぼやく前に、最後の仕事の時間が、きたぞ。》
《おっ、撤退も完了したね。》
こうして、最後の仕事に取り掛かる所長と副所長だった。
* * *
明日00:00公開
49話~51話




