第49話
《ふぃーっ……。》
セイフハウスに、逃げ込み、一息ついた副所長だった。
《おっと、いけない。念の為の仕事しなくっちゃ。》
ノートPCに火を入れ、アプリを起動する副所長。無論、バドワイザーを用意する事も忘れない。仕事の後の一杯は重要だ。
《お、写ってる。写ってる。》
PCの画面上には、アプリが、受信した動画が、再生されていた。
チャイムの音がした。
《ドムド・ピザでぇーす。》
《おっと、宅配キター、ぜ。》
玄関で、ピザの宅配員の応対をし、現金で支払った副所長。
《さぁーって、仕事の後は、ピザとバドに……》
「ふーん、『予言者の歌』内部の監視カメラ映像ね。『救世主』様の言う通り、中から情報を取り出せそうにないわ。」
驚きのあまり、ピザを取り落さなかったのは、諜報工作員としての矜持だったのやら。
《誰だ! 君は。》
等と言う誰何の声をかける必要は無い。その言葉を頭に思い浮かべた時、銃を突き付けて、何もかも素直に話す状況を作ってしまっているからだ。
《! な、無い。》
だが、ヒップホルスターの銃が、無くなっている事に、気付いた副所長だった。
「お探し物なら、ここでしょ。」
彼女が、指さす先、ノートPCの側に、銃はあった。
更に、未知の手段で、玄関扉が、開いた。
《黒豹だと?》
玄関から入って来たのは、『黒豹』にしか見えない。合衆国の大都市で、『黒豹』が闊歩したであろう。そのシーンに、可笑しさを禁じ得なかった。
「Gawww。」
「ありがとう。」
あまつさえ、『黒豹』は、レジ袋を咥えて彼女の基へと運ぶ。彼女の言葉は、分からないが、『黒豹』とコミュニケーションを取り、レジ袋の中の飲み物を分配さえしている。
更に、驚くべきは、『黒豹』が、顎でペットボトルキャップを押さえ、両前足でボトルを挟んで回転させボトルを開き、ラッパ飲みするシーンだった。
この時点で、抵抗する意欲を失っていた副所長だった。
《一体何の用だ? つか、何処からどうやって入った。》
翻訳機を手にした女性と『黒豹』が、連れ立ってこちらに近づく。あって欲しくない悪夢だ。そして、翻訳機のスピーカーから声がした。以降、翻訳機越しの会話になる。
《もう一度、言って下さい。》
《君達は、何者だ。一体何の用だ。何処からどうやって入った。》
《まず、私達は、代理人です。そして、ご本人様に引き渡す前に、1つ質問します。》
《質問……?》
《用件は、ご本人様への引き渡し、並びに、質問です。》
《だが、どうやって入った?》
「水ヲ『手腕』ノ形ニシテ、隙間カラ侵入サセ、中カラ鍵ヲ開ケマシタ。」
《……今、『黒豹』が何か言った……》
《気のせいです。『黒豹』が、喋る訳ないでしょう。では、私からの筆問です。あなたの最高ランクセキュリティ・パスワードを教えて下さい。》
《! ……さ、さぁ……何の事やら。》
突如、出現した『水』で形成された『手腕』で、裸締めにされ、締め落された副所長だった。
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