第44話
『うむ、ご苦労。』そう、LINEにメッセージを返信したゾフィーだった。
「『救世主』殿は、お休みぢゃ。」
「長い1日だったわ。」
「マッタクデス。」
泡立つ飲み物が、なみなみと注がれたジョッキを、メイドから受け取るゾフィー。
そして、ジョッキの中身を、一息に飲み干した。
「ぷはぁーっ……一仕事終えた後の、ドッペルボックは、格別ぢゃぁ。」
「まったく、わらわちゃんは、大酒飲みねぇ。」
「日本デハ、法的規制ガ、アリマシタガ、米国デハ、ヤリタイ放題デス。」
「失礼な、奴らぢゃ。仕事の後には、娯楽が必要ぢゃ。一杯が、必要なのぢゃ。」
そう言い終えると、刻みキャベツを食すゾフィー。
「ソレガ、『ザワークラウト(酸っぱいキャベツ)』、デスカ。」
「うむ。日本には、『お袋の味』と言う言葉が、あろう。これは、我が家秘伝の味ぢゃ。ちなみに、やらぬぞ。」
「いえ、やめておくわ。」
ピーマン以外にも、苦手な物があるらしい。
「ソンナ事ヨリ、敵ノ監視ハ、ドウナッテイマスカ。」
「んっ……ぐっ……んっ……ぐっ……ぷふぅぁーっ……案ずるでない。例の『桃色髪』こと、フレディ・テイラーには、『追跡チップ』を埋め込んである。無論、監視は、怠らぬ。」
「ちょっと、さっき『一杯』って、言ってたじゃない。」
「つまらぬ事を申すでない。『救世主』様に軽蔑されるぞ。各員には、交代で休みをとらせ、常時2名体制で、監視しておる。現在、本国から増員を手配しておる。」
「流石、ロートシルト家。日本語ニ堪能ナ、メイドヲ多数召シ抱エテイル訳デスネ。」
「うんにゃ、監視要員は、単純任務故、ドイツ語と、英語のみぢゃ。それで、十分であろう。」
「『つまらない事』じゃないでしょ! 酒臭い息を、『救世主』様に、かけたら口と喉に、水を詰め込むわよ!」
「……おお、怖……。左様な事、するはずも無かろう。」
「デハ、『予言者の歌』ニ、動キハ無イト?」
「今、フレディ・テイラーは、精密検査の真っ最中ぢゃ。連中、病気、負傷、日本の『救世主』殿に何かされた、それらを混同しておる。無理からぬ事ぢゃろうて。」
全員が、納得していた。
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