第43話
「一体、『あれ』は、何なのかしら。『救世主』様。」
「『あれ』、とは何だ。」
「大統領共ぢゃ。『救世主』様。」
「私モ知リタイデス。『救世主』様。」
「彼等の知能は、零歳児まで下がった。これで、彼等は、何もできない。」
「……流石……と言うか……そんな事まで出来る何て……恐ろしい子……『救世主』様。」
「私達ニ出来ナイ事ヲ平然トヤッテノケル。ソコニ惹カレマス。『救世主』様。」
「わらわは、憧れるのぉ。『救世主』様。」
「君達は、僕を『殺人鬼』だとでも言うつもりか。」
「……とんでもないわ。人命を損なわず、事態を収拾した手腕こそ、真に、『救世主』様。」
「だが、これは一時的なもの、単なる時間稼ぎに、過ぎない。」
「ぢゃろうな。」
「ドウ言ウ事デス。」
「アーデルハイド、説明しなさい。」
「心得た。単純な話ぢゃ。合衆国憲法規定によれば、大統領、副大統領が、全員任期中に病気怪我落命等、如何なる理由でも職務を遂行出来なくなった場合、大統領選挙を行うとある。」
「ツマリ、次ノ大統領、副大統領ガ、決マルマデノ時間稼ギ。ソウ言ウ意味デスネ。」
「『あれ』を、病気と言うのかしら。」
「言うに決まっておろう。もし、日本の総理や、副総理が、かような状態に、なったとする。更に、国民に広くバレてしまった。如何になるかのぉ。」
「……想像するなんて、恐ろしくて出来ないわ。」
「つまり、残存する政府高官や秘書補佐官などは、『原因治療法不明の未知の病気』と言う事で、事態を隠蔽する事に躍起になる。『救世主』様は、安泰と言う訳ぢゃ。」
「ソコマデ、計算シテイタ。流石、『救世主』様。」
「して、稼いだ時間で、何をするおつもりかや。『救世主』様。」
「まず、脳組織に対処した。次は、手足に対処する。」
「『手足』って…………まさか。」
「そう、『予言者の歌』も『無力化』させる。だから、CIA長官も、『無力化』する必要があった。」
「ぢゃが、『無力化』と言うても、具体的な『作戦』も無かろう。件の『桃色髪』とて、本拠地が、ヴァージニア州ラングレー(CIA本部)にある他は、大した情報も取れなんだ。」
「問題ない。例の『追跡チップ』は、本人の発話と聞いた音声を記録する事もできる。これで、かなりの情報が、手に入る。」
「シカシ、『桃色髪』ハ、本当ニ本拠地ヘト、戻ルデショウカ。」
「問題ない。現状、『桃色髪』は、自身の個人情報と、自身に『能力』がある事、『能力』の使い方、更に、僕達に関する情報を思い出せない。つまり……。」
「ツマリ?」
「情報を獲得するには、唯一覚えている本拠地へ行くしかない。」
「確かに、そうよね。でも、その後、『救世主』様の考える通り、米国の『救世主』を1人ずつ『出撃』させるかしら。」
「問題ない。何故なら、CIAは、君達と同じ疑問に、突き当たるからだ。」
「疑問……当然デスネ。」
「確かにのぉ……わらわ達は、既に『救世主』様より、教えて頂いたが、連中は頭を抱えるであろう。そして、『人体実験』をするしかないと、考えるに相違ない。」
喉を鳴らすゾフィーだった。
「だからと言って、『やられ役』が、出て来るとは限らないぞ。下手をすれば、僕達を皆殺しに出来る『兵』が、出て来るかもしれない。各人、気を引き締めなさい。」
3人娘の、諾の応えが、唱和……しなかった。
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