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第34話

「やはり、持っていたな。プライベートジェット。」

「言うておくが、わらわの私物では無い。ロートシルト家の所蔵品ぢゃ。」

「だろうな。そうでも無ければ、あの『強化外骨格』を、この国に持ち込むのは、難しい。」

「そりゃ、そうよ。『救世主』様の安全第一。それくらい用意しなさい。『高貴なる者の義務』って奴よ。」

「当然デス。『救世主』様ノ御為デス。」

「そろそろ時間だな。」

 等と言っていると、やって来たのは、2人の人物だった。

「あら、ヘレン先生だけかと思ってたら……誰? 『救世主』様。」

「あれは、僕の『元担任』だ。」

「ツマリ、特別学級ニ、編入スル前ノ、話デスネ。『救世主』様。」

「サマノ君、急に、休学何て、先生を驚かして楽しいのかしら。」

 瓶底眼鏡の女教師-『元担任』-だった。

「休学届が、正式に受理されたら、すぐ出発ですか。hasty。」

 今度は、ヘレン先生だ。

「本日は、わざわざお見送りありがとうございます。が、やるべき事が、終われば戻ります。僕の国は、ここです。そして、僕の通う学校は、変わりません。」

「何処で、何をするのか、知りませんが、頑張って。」

「陰ながら、応援しますよ。cheering。」

「では、行ってきます。」

「行ってきます。」

「では、のぉ。先生方。」

「行ッテマイリマス。」

 こうして、飛行機に乗り込む4人だった。が……

「何で、わらわちゃんだけ、『救世主』様の隣に座ってるのよ!」

「女伯、余リニモ職権乱用ガ、過ギマス。」

「噴! 左様に悔しくば、米国までの交通手段くらい用意せい。これは、『高貴なる者の義務』に対するささやかな報酬ぞ!」

「アーデルハイド、僕は君達全員を、視界に収めておかないと落ち着かない。君達は、ここに固まって座れ。僕はこっちに離れて座る。いいな。」

 にべもないサマノだった。


 * * * 


 言うまでも無い事だが、メイドの内2人は、操縦士と、副操縦士だ。

 更に、他のメイド達は、機内乗務員フライトアテンダントの役をこなす。

 そして、太平洋上、日本の領海、排他的経済水域を、飛び越す。旅は順調だ。

「そろそろ、教えては、くれぬのかや。『救世主』様。」

「そうよね。そろそろ、今回の旅、計画が、あるんでしょう。『救世主』様。」

「是非トモ、オ聞カセ下サイ。『救世主』様ノ知略ヲ。」

「以前も言ったが、今回の旅の目的は、2つある。1つ、米国政府に僕の事を、諦めさせる。2つ、英会話の技術向上だ。それぞれ、計画を説明しよう。」

「ドキドキ。」

「わくわく。」

「馳走の匂いぢゃ。」

「1つ、対象ターゲットは、大統領、副大統領、CIA長官、米国内の『救世主』全てだ。全て僕が、『対処する』。君達は、連中の身柄を拘束しろ。」

 無駄な質問をする事なく、首肯する3人娘。先を続けるサマノ。

「情報によれば、副大統領は、サン=フランシスコで、遊説中だ。まず、ここから狙う。次に数日待つ。その間に、大統領が、不審に思って調査を命じるだろう。誰にだと思う。」

「米国で、情報収集と言えば、CIAぢゃ。『救世主』様。」

「僕も同感だ。そこを狙えば、大統領とCIA長官を、一網打尽にできる。電話やメールと言う可能性もあるが、情報漏洩は避けたいだろう。対面で指示する公算が高い。」

 ここで、ゾフィーの方を見るサマノ。

「残念ぢゃが、わらわの『外交官資格』は、日本国内のみに限られておる。故に、米国内にあるロートシルト家所蔵の不動産を使うしかあるまい。ショコラーデも然りぢゃ。」

「よし、それでいい。後は『救世主』だな。情報によれば、『予言者の歌』と言う研究所にいるそうだ。」

「ソコヲ急襲シマスカ。『救世主』様。」

「いいや、そこから連中を、おびき出して、1人ずつ対処する。つまり、ゲリラ戦だ。いずれ、『救世主』共が、痺れを切らして、総攻撃を仕掛けて来る。それで、幕を引く。」

「勿論よ。『救世主』様。」

「異議無しぢゃ。『救世主』様。」

「全身全霊ノ力デ、成シ遂ゲマス。『救世主』様。」

《よし、次に英会話だ。》

 そして、次に、英語に切り替えるサマノ。

 英語で、発音したサマノの言葉を、日本語に直すのは、彼が手にした小型翻訳装置だ。

「うん、機能しているな。」

「流石ぢゃのぉ、もう英語を習得したのかや。『救世主』様。」

「いいや、未だだ。これは、フリーの翻訳ソフトに、原稿をテキスト入力して、英文化した物を読み上げただけだ。圧倒的に単語や、慣用句の知識が、足りない。あれの準備をしてくれ。」

「でも、翻訳機が、あるじゃない。」

「私、母国語ト、フランス語、日本語マデハ、イケマス。ガ、英語ハ、翻訳機ニ頼リマス。」

「それでも、構わまない。でも、僕は、今回の旅の目的に、英会話の熟練度向上を目指す。そこで、各人映画を見て貰う。僕は、勉強するが、君達は、暇つぶししても構わない。」

 1人1つずつタブレット端末を渡された。

「これで、日本語字幕付き英語放送のアニメ映画を、視聴する。アニメが、よいのは、ドラマと違って、現地の役者で、再集録しないからだ。」

「成程、コレデ英語ノ、聞キ取リヲ、練習スル訳デスネ。発音ハ?」

「残念だが、それは一朝一夕には、無理だ。特に、『L』『R』『S』『TH』など上げると、枚挙に暇がない。そこで、英語で密談されても、聞き取れる事を目標にする。いいな。」

 3人娘は、首肯した。


 * * * 



日本編は、これにて終了。

次回から「米国編」開始です。


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