第29話
「酷いじゃないですかぁっ!」
電話口から叫んでいるのは、タ……もとい、校長先生だった。
「落ち着いて下さい。一体何があったのです。」
冷静な黒田弁護士だった。
「ネットに、学校名と、生徒の顔名前を晒したでしょう。」
「申し訳ありませんが、私が『やった』と言う『証拠』でもあるのでしょうか。」
「ふざけないで下さい! あの動画は、先生が提出した物でしょう!」
「しかし、『あれ』を撮影したのは、私ではありません。私にとっても、『貰い物』なんです。尚、裁判になるなら、受けて立ちますよ。」
「……そんなぁ……。」
理性を、ゲシュタルト崩壊でもさせたらしいタ……もとい、校長先生だった。
「早急に、記者会見の準備をした方が、良いと思いますよ。教育委員会は、事実関係を把握済みだと言う事も含めた『熟慮』すべきです。」
通話を切る黒田弁護士だった。
* * *
「……以上でございます。」
「お見事。」
黒田弁護士に、答えるサマノだった。
「時は動き出す。」
サマノの「これで、学校側も『重い腰を上げる』だろう。ようやく、事態が動き出す。」は、「時は動き出す。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某奇妙な冒険とも無関係に相違ない。
「かなり無茶しますね。……記者会見は、今晩になりそうです。」
「それは、きっと教頭先生が、頑張ったせいかだろう。それに、無茶でもないさ。」
「と、言うと?」
「件の『動画』を撮影したのは、『外交官』だ。つまり……」
「『外交特権』で、無罪になる。ですか。」
「その通り、やはり、黒田先生は、回転が早いな。」
この後、細々した報告を受けるサマノだった。
* * *




