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第十一部 鏡が返してきた問い 第一章 v18の後で

 v18を公開してから、二ヶ月が経った。


 反響は、これまでと少し違った。制度設計局からではなく、研究機関のほうから、問い合わせが来た。他の都市国家との比較が、アエクスの研究者に何かを刺激したらしかった。


 向こうの研究者も、動き始めていた。


 そういう時期に、ナナセから連絡が来た。


「少し話したいことがあります。今週、会えますか」


「会えます」


「今回は、込み入った話ではないかもしれない。でも——気になっていることがある」


---


 食堂で会った。ナナセはコーヒーを前に、少し考える目をしていた。


「v18を読んで、気づいたことがあります」とナナセは言った。


「どんなことか」


「比較する前と、比較した後で——アエクスの問題の見え方が変わった」


「変わった、というのは」


「以前は——左下と右上は、それぞれ別の問題として見えていた。低投資層の問題と、高評価層の組織の問題。でも——向こうの制度と並べたとき、二つが同じ構造を持っていることが、改めて見えた。どちらも、閉ざされた領域の問題だ」


「閉ざされた領域」とレンは言った。


「左下では——七歳の査定まで、親だけが子を育てる。外からの目が入らない。親の判断だけで、七年が閉じている。右上では——丁稚奉公企業の中だけで、十五歳まで育てられる。他の企業の目が入らない。企業の方針だけで、八年が閉じている」


「閉じた領域が、乖離を作る」


「向こうの制度のクラスの居住区域の分離も、同じ構造だった。上位クラスの領域と下位クラスの領域が分かれることで、互いの可能性が見えなくなる。閉じた領域が、見えないものを作る」


「鏡が、それを見せた」


「そうです。向こうの制度を見ることで、アエクスの問題が、より明確な形で見えた。あなたが言ったことだ——比較が、自分たちを見るための鏡になる」


---


「制度設計局では、今その話をしているのか」とレンは聞いた。


「始まっています。ただし——まだ問いの段階です。閉ざされた領域が問題だとすれば、どうすれば開くことができるか。その問いが、制度設計局の中で動き始めた」


「何か、方向は見えてきましたか」


「一つあります」とナナセは言った。「ただし——まだ骨格だけです。あなたに聞いてみたかった」


「どんな骨格か」


「中間点を作ること、です」


 レンは少し止まった。


「中間点」


「閉ざされた領域を開くために——領域の中間の時点で、外の目を入れる。ソラが言っていたことに近い気がした。鏡として他者の判断が加わる、という」


「そうか」とレンは言った。「具体的には、どこに」

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