血は繋がっていない
血は繋がっていない
さて、その当初は私はその四人の異母兄弟とは当然血が繋がっていると思っていた。しかし、母が亡くなる前に私宛に残した手紙が出てきて、その手紙によると、どうもそうではないらしいということがわかった。
つまり、自分が父、尾崎睦美とは血が繋がっていない――自分の本当の父親は尾崎睦美ではないとのことだった。
ショックなような気もしたが、父と母は離婚していたので、大したことないような気もした。物心ついた時には父は家にはいなかったので、まあ特に何ともなかったかもしれない。しかし、戸籍上の父と生物学的に血が繋がっていない、というのは少し気持ちが悪い気もした。
それで自分の本当の生物学上の父親が誰であるのか? については母は手紙に何も書いてはいなかった。
ただ――
愛する男――好きな男の子供が欲しかった――
そう母は書いていた。
成長した私の容姿はその男によく似ていて、それが嬉しいとも書いていた。
母がその男となぜ結婚しなかったか? は何も書いてなかったが、男の方に何か問題があったのだろう……
その問題の一つかもしれないが……
父の初恋の相手、祐天寺良美が産んだ娘の父親もおそらくその男なのだろうと思われる。
母が親友の娘だとはいえ、孤児となったその女の子のことを非常に心配していたのは、愛する男の子供でもあるためかもしれない、そう思ったのだ。
これには理由があって……
施設でその女の子に会った時……
自分に似ている!
そう直観的に感じたのだ。
考えてみれば、その時はその子も父は尾崎睦美だと思っていたから、自分と血が繋がっている、そう思っていたのだが、自分の生物学上の父が尾崎睦美でないのなら……
その女の子――のちに祐天寺良美と改名するその子と自分は血が繋がっていないはずなのだが……
それでもやはり似ているということは……
正体のわからないその男を同じ父に持つということ……
何か妙に複雑で自分でも訳がわからなくなってくるところもあり、確実にDNAを調べたわけではないのだが、自分はそう思っている。
それでややこしくなった男女関係を私の生物学上の父である「その男」も入れて時系列に纏めて書き直してみると――
父の初恋は破局
父と母は結婚
母とその男との間に私、尾崎凌駕が生まれる
つまり私は不義の子
別の女性Aが女の子を出産、良美と名付けられる
ああ、そうだ! この良美の父親もひょっとしたら……
いや、それは後で書こう――
父が私の母と離婚、その女性Aと結婚
もう一人の女性Bも男の子を出産、その子がのちの尾崎諒馬=鹿野信吾=佐藤稔
流石に尾崎諒馬の父親についてはよくわからない。女性Bは正式に結婚しているのでその間の子供だとは思うが……
ただ、父、尾崎睦美とその女性Bとは関係があったらしいと彼から聞いているが……
妻Aは男の子を出産、勝男と名付けられる
妻A死去(病死)
父の初恋の良美がその男との間にできた女の子を出産するも、良美は精神を病んでおり育てられず、その男も行方をくらませて女の子は孤児になる(名前は伏せておくが成人後自分で改名して祐天寺良美となる)
こうなる……
実に複雑な関係……




