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勇気を出してあの映像を見る

 

   勇気を出してあの映像を見る

 

 映像1 夜中のライラックの小路

 映像3 母屋の二階の殺戮シーン

 映像4 階段のいちりとせ

 映像5 離れの外

 

 この四つは、首猛夫と名乗った藤沢さんが全部文章化している。

 このうち、映像1と5は特に残虐なシーンはなく、見ても大丈夫だろう。

 ざっと見てみたが、私が特に書き加える部分はない。

 

 で、映像4 階段のいちりとせ

 これは見るのを少し躊躇する……

 要はポリ袋の中身がどの程度リアルに映っているか?

 勇気を出して見てみたが、幸い、ポリ袋が半透明なため、そこまでリアルな生首が判明するわけでもなく、おもちゃの生首のような物体が窺える程度で、これも特に私が書き加えることはない。

 

 ただ――

 

 映像3 母屋の二階の殺戮シーン

 

 は、実際の殺害シーンが映っていることもあり、やはり見るのは勇気がいる。

 しかし、幸いというか何というか、ベッドの上の良美には途中で鬼の面が付けられるので、胸に牛刀が突き刺され殺害されるシーンはそこまで残虐には見えない。また、先に瀉血処理で血が抜かれているので、出血も大したことないのも幸いしている。

 また、殺害後の斬首シーンも死体はうつ伏せだし、カメラの角度的に斬首の切断面も見えないので、残酷は残酷だが、何とか見ることはできた。やはり顔が見えるか? 見えないかの違いは大きい。

 それで、こちらも、特に私が書き加えることはない。

 犯人の勝男の顔は私は知らないが、確かに映像1、4でのブリキの花嫁の顔と――途中でサングラスとマスクやバケツで顔を隠しているが――同じに見える。

 それに、ベッド脇で呆然と立っている男は尾崎諒馬――私はインタビュー記事の写真で彼の顔を知っている――で間違いなさそうだ。

 

 それでだ。あとは――

 

 映像2 離れの殺戮シーン

 

 であるが……

 

 牛刀が素早く勝男の首に――

 血が迸り……

 生首が……

 転がって視界から消えた……

「もう結構! 止めて!」尾崎凌駕が叫ぶ!

 動画はすぐに止められた。

 

 そう書かれている通り、斬首シーンのところで止められ、その後のことは文章化されていない。

 

 なので、自分で映像を確認して……

 文章化しないと……

 

 (おぞ)ましい……

 

 黒服だか青服だかが恐ろしくて直視できない、そう言っていた――まあ、彼らは生成AIによるアバターなんだが――それがよくわかる。

 ただ、幸いなことにカメラの角度的に斬首されたその切断面は映ってはいない。

 何とかその悍ましい動画をそこまで見て……

 ちなみにここまで特に私が書き加えることはない。

 

 そして、その後はまだ文章化されていないシーン。

 

 犯人が勝男を斬首したあと……

 その血に濡れた牛刀はゆっくりと再び上に……

 逆手に持ち替えられて……

 勝男の胸に……

 首のない死体の胸に……

 突き立てられて……

 

 (えぐ)られた……

 

 思わずそこで動画を止める。

 いや、最後までやはり確認しよう……

 

 犯人は若干の肉片を抉って……

 

 そこで動画は唐突に終わった……

 

 ――やはり残虐な映像だった……

 

 見たことを後悔したかもしれない……

 

 物語を構成し進展し説明するためのロボットである私はあと何を書けばいいのだろう?

 

 勝男は斬首されて殺された……

 しかし、確かに笑っていたようにも見えた。

 

 犯人は無表情だったかもしれない。

 

 しかし――

 

 犯人は斬首後何故、心臓を抉ったのだろう?

 

 母屋の二階の殺人は殺してから斬首している。

 

 しかし、離れの殺人は――

 

 斬首して殺した後に心臓を抉っている。

 

 これに意味があるのか?

 

 犯人の顔はハッキリ映像に映っている。

 その顔を頭の中で二十数年老けさせれば……

 私は、この医療センターに尾崎凌駕を訪ねて来ていた藤沢さん――殺し屋首猛夫と名乗った藤沢さんの顔をトイレの鏡越しに見てはいる。

 犯人の顔を二十数年老けさせればその藤沢さんの顔に一致するような気もするが、顔が似ているか? は個人の主観でもあるので、何とも言えないかもしれない。

 

 ただ、それは尾崎凌駕には――

 

 

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